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帰りは当たり前のようにスバルの部屋を訪れる。二人きりの時間だ。
「明後日は休校日でしょ?スバルちゃん、補習とかありますか?」
「いえ、期末のテストで赤点はなかったので、お休みです。あの、二人でそのぅ…」
ユキヤの頭はもうウハウハ。
「素晴らしいです!テストで赤点がなかったお祝いに、僕とデートしましょう!」
スバルが嬉しそうに笑う。近場での逢瀬を嫌うスバルに気遣い、ユキヤはスバルに行先を相談した。西には夏季休暇中に遊びに行くことにしているからそれ以外だ。すると意外な場所を希望した。
「ユキヤ君がいつも天龍さんと会っている森に行きたい。私も天龍さんにまた会いたいなと…」
そうか、スバルは天龍に会ったことがあるんだった。ユキヤが確認する。
「天龍は結局、もう会いに来てはくれないの?」
「はい、最後にあったのはたぶん11歳?あれからは全然会えてません。だから久しぶりに挨拶したいです。」
翌日、ユキヤはアウトドア専門店にいた。天龍に会うには眠っている事が絶対条件。つまり、
「スバルちゃんを野宿なんてさせられませんよ!テント購入しておきますから、明後日、レジャーできる服装でお願いしますね」
となったわけだ。店で布地がしっかりしているテントを選ぶ。固定具も重要だ。そして何より
「テントの中で使える蚊帳みたいなのってないですか?人が一人入れたらいいんですけど!」
害虫対策!ユキヤはいつも虫よけスプレーだけしか使っていない。
しかし!!今回はスバルだ、おまけに女子高生。絶対に虫刺されなどさせてはいけない!
店員さんとあれこれ話しながら道具をそろえた。携帯用の食事、飲み物、タオルにお手拭き。
翌朝、ユキヤはキャンプで山に泊まるのか?という装備をもってスバルを迎えに来た。スバルはジーパンに半袖のシャツ。上に長袖で薄手のパーカーを羽織っている。足元もスニーカー。
「え!ユキヤ君、天龍の森ってもしかして山みたいな感じだった?長靴のほうがいいのかな?馬車で行けるって聞いてたから軽装できたけど…」
ピクニックのノリで行けちゃいます。そんなこんなで出発。風に乗り、テント場まで直線で進む。昼前に到着。スバルが昼食を食べている間にユキヤはテントを立てた。
「なんかすごく大きなテント…あ、中が広いです!」
快適なテントの中、二人で横になる。すると天龍が現れた。
「おや、久しぶりだね。すっかり女になっている。人間はやはり成長が早いな。」
「あ、あの…お久しぶりです。ここがあなたのお住まいなんですね。天龍さんのおかげで、魔力暴走を起こさないようにコントロールできるようになりました。」
「天龍、スバルちゃんの魔法の先生してたの?それでわざわざあいに行ってたんだね。」
なんだか天龍が嬉しそうだ。フウマ魔導士長の言っていた鱗の話しが本当なら…
「天龍がオレの事を息子って呼ぶ理由がわかったよ。鱗、みる?」
ユキヤがTシャツを脱いで鱗を見せた。天龍が近づいて2枚の鱗をまじまじと見つめる。
「これは最初に産まれた子供の鱗だ。確かにあの子は俺の力を引いていた。ここに小さな黒い点があるだろう?最初の子はこの点が2つあったんだ。あぁ、懐かしいなぁ。」




