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眠りについている地龍。もし目覚めれば、この世界が変わるのだろうか?そう簡単に事が進むとは思えない。そもそも、どうやって地龍を起こすのか。人間が誕生する遥か昔に眠りについた精霊。魔の森で眠っていると言われても、正確な場所がわからない。魔の森は広く、討伐に行く道以外は誰も進んだことがない。とてもではないが、森をすべて捜索するなんて無理な話しだ。意外にも、討伐に入る場所の近くに眠っていたとしよう。現実世界で人間が精霊を見ることができるのか?
「本当に俺は、一人では何もできないな。魔獣に恐れをなして逃げ出したミキトも、こんな気持ちだったのだろうか?…わからんなぁ。」
資料館への入室は、そう簡単に許可がもらえるわけではない。膨大な資料。今日だけでは時間が足りない。もう一度、日を改めて国王に頼んでみよう。そうすればヤマト氏の汚名を確実に返上できるはずだし、大型の出現理由についても研究ができる。この日、フウマは資料館を後にした。
翌日、朝からユキヤが出勤。フウマに天龍に会ってきたことを知らせた。
「なるほど、魔力の遺伝についてはよくわかった。ありがとう。記録にするから、君は今日も1日仕事だ。」
「わかりました。あの、また資料を見せてもらってもいいですか?」
フウマの許可をうけ、資料を読み始めたユキヤ。フウマは城の資料館で読んだ話しを、ユキヤに確認してみようと思っていた。魔獣の遺伝や性別についての記録を終えるとフウマはユキヤに話しかけた。
「ユキヤ、昨日私は城の資料館に行ってきたんだ。そこで…少し信じがたい記述を見つけてね。天龍と交流がある君に意見を聞きたい。」
「それって、ヤマト魔導士長のことですか?何かわかったんですか?」
「いや違う。天龍と地龍が番になり、産まれた子供たちのことが書かれていたんだ。まずユキヤ、天龍から地龍のことをどこまで聞いているのか教えてもらえるかな?」
「僕が聞いていることかぁ、天龍と地龍が番なのは間違いないです。天龍が言うには、水龍と天龍が協力して最初の大地を作って、その大地の息吹で地龍が生れて、天龍の妻になったそうです。」
書かれていたことと一緒だと、フウマは思った。その大地の名前は…
「地龍は今、始まりの大地って、まぁ魔の森なんですけど、そこで深い眠りについている。」
「なぜ、地龍は深い眠りについたか、ユキヤは知っているのか?」
フウマの質問にユキヤが答える。
「詳細は聞いてないんですが、地龍にすごく悲しいことがあって、天龍が支えてあげられなかったとききました。だから僕に、番が悲しむときは必ず支えになれ。自分と同じあやまちをするなと言われました。」
あの書物は正しい。ユキヤは何があったのかは聞いてないみたいだが、内容は一致している。いたずらに書かれた物ではない。
「ユキヤ、質問だ。もし、もしだが。地龍が眠りから覚めたら世界がどうなるか聞いてないか?」




