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騎士を目指す卵たちを育てる騎士養成所。その実践場で、ひよっこ騎士に向けて火炎をぶっ放した最恐のマネージャーとして、騎士団ではちょっとした有名人のイオリ。
当時の聞き取り調査で、訓練中の騎士に非があり、マネージャーとして精一杯の勤めを果たしただけである、と認められたイオリは無罪放免だった。しかし、未だに騎士学生の間では有名な話しだし、騎士団員の中には魔導士イオリと名を聞くだけで震えあがる者もいるらしい。
「イオリさんはしっかりしておられるし、責任感もあります。長には適任者だと僕も思います!」
性格、経験値、強さにおいてもバッチリの逸材だ。
「エリやケンヤも実力がある。本当は、10年ほど前にスカウトしたんだ。あっさり断られた。ケンヤに至っては紙を書くくらいなら魔導士辞めると言いおった。そんなこんなで次世代が育つまで待っていたんだ。まぁな、ケンヤは本職があるし、エリも当時は子育て中で家庭がある身の上だ。仕方がなかった。」
フウマにとって、後継者探しは相当な悩みだったようだ。シュリやイズミは考えなかったのだろうか?
「シュリは私と5つしか年が変わらないし、性格的になぁ、何というか。力はあるんだがね。イズミは論外だ。あいつを長にしたら、周囲に多大なご迷惑がかかる。」
イズミよ、一体全体何をしたんだ!?ユキヤは今度、ミサキに聞いてみようと思った。
「イオリの次の世代がユキヤ、君たちの世代になる。考えておいてくれ。」
俺には無理だろう。まだまだこれから、考える時間はたくさんあるし。カズとか?まだ若いけど、将来はしっかり落ち着いて、みんなをまとめてくれそうだ。
「おっと、もうこんな時間か。今日はここまでにしよう。ユキヤが指摘してくれた、ヤマトさん以前の討伐記録も探したい。残っていると、いやとりあえず、保管室に入室許可が取れたらありがたいがね。ユキヤ、ありがとう。次はあさってで頼めるかな?」
「はい、わかりました。では今日はこれで失礼します。」
ユキヤはそのままスバルの部屋に足を運ぶ。編入先の学校生活はどうだろうか?慣れてきたかな?ドアをノックし部屋に入る。
「ユキヤ君、今の学校すごく楽しいよ!友達もできたの。なんか、みんなでお話ししたりご飯を一緒に食べたり、すごく幸せ!!」
編入前に学校の先生方と入念な話し合いがあったらしい。先生は生徒達やその保護者に包み隠さずスバルの事を説明。理解を得たという。共存共栄を理念とする学校だけあり、なかなか個性的な生徒もいるらしいがうまくやっているようだ。
「よかった。スバルちゃんも編入試験や準備頑張ったもんな。すごいと思うよ。」
夏休みも何日か登校日を設けてもらい、どうしても足りない単位は補修という形で授業をしてもらえるらしい。至れり尽くせりだとスバルは穏やかに笑いながら話す。
「今があるのはユキヤ君のおかげ。ありがとう。私、一生懸命勉強して、絶対に看護大学に合格するね!」
明るい表情で夢を語るスバルは、キラキラしていた。




