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「ユキヤ、今度天龍に遺伝の仕組みを聞いてみてもらえないか?大切なことだ。はっきりと記載したい。」
「わかりました、聞いてみます。あの、ヤマトさん以前の記録は全くないんですか?ヤマトさんの時代以前も、今みたいにきちんと討伐して対策をしていたのでしょうか?結界の中が魔獣だらけで食べ放題なら大型も中型もすぐ育ちそう…」
あぁ、とフウマがユキヤに話し出す。
「魔獣退治は当初、防衛騎士団が請け負っていたらしい。すぐに全滅して、その後から魔導士を雇い始めたと言われている。ま、これも手元に記録がないから真偽不明かな。」
「え、えぇ~~!もしそれが本当なら、もはや自殺行為のスプラッター…」
言い伝えでは、死亡した騎士達はもちろんベテラン揃いで、国は防衛の要に大打撃を受け、莫大なお金をかけて遺族に賠償、新たな騎士を育てるまでに相当な時間を人用としたらしい。
「だから私達魔導士が討伐に行く時は、国が協力を惜しまず、報酬もケタが一桁おおい給金がでるわけだ。ちなみにこの話は国王から聞いたことだ。新たな魔導士長が誕生した時に、国王と話し合いがなされる。もしかしたら…城には古くからの歴史書が保管された部屋があるらしい。そこに入ることができれば…」
フウマが何か考えている。ユキヤが学んだことは、魔獣討伐に国がバックアップしているのは、国が失敗から学んだ知恵だということ。もちろん魔導士だって命をかけのだ、安請け合いはできない。高いお給金は国が魔導士にみせるせめてもの誠意なのだろう。
「私もそこそこ長く魔導士長をしているが、この資料を作り上げたら引退をと考えている。長の座をイオリに渡したいのだ。」
魔導士長の仕事を引き継ぎ、新しい長が一人で仕事をこなせるようになるまで、ある程度の時間がかかる。そう考えたら、確かにフウマはそろそろ限界の年齢かもしれない。
「それまでに私は一度、国王に掛け合って城の歴史書室を見せてもらえないか頼んでみようと思う。もしかすると、ヤマト魔導士の時代以前のことが書かれた書籍があるかもしれない。」
もしそうなら、消えてしまった過去のことが分かる。
「今までの魔導士長は入ったことが無いのかなぁ?」
ユキヤがつぶやくと、フウマが答えてくれた。
「国王の許可がなければ入れない特別室なんだ。そもそも、私だって今回、この状況になって初めて入ってみようと考えついたことだぞ。今までは魔獣の定説を信じてとにかく討伐に心血を注いていたんだ。」
確かにそうだ。魔導士長は暇ではない。わざわざ国王の許可を取ってまで、過去を調べる、なんて時間はないだろう。
「確かに、そうですよね。過去をわざわざ調べるより、次の作戦を考える方が優先ですよね。しかし…イオリさんが次の魔導士長か…。最強伝説とかできそうだなぁ…」
ユキヤの呟きに、思わず二人で大笑いしてしまった。




