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7月。スバルの夏休みまであと2週間ほどだ。ユキヤは中央神殿の執務室にいた。魔導士長フウマのお手伝いをするためだ。書類や本、魔獣の標本などが沢山ある。フウマが天龍からの情報を記載するため、直接聞いたユキヤが補佐として参加しているのだ。古い歴史書。ユキヤが手を伸ばすとフウマが声をかける。
「古くなってて、破れやすいから気を付けて見てね。」
ユキヤが質問してみる。
「ここにある歴史書はどのくらい前からの記録何ですか?かなり分厚いけど…?」
フウマが答えた。
「主に200年前くらいからの書籍だよ。新しいだろ?本来、魔獣との戦いはもう何百年という歴史があるのに。250年前の騒動で大半が紛失。残っていても保存状態が悪くて読めないんだ。」
へぇ、と言いながら手に取った歴史書を開いた。歴代の魔導士長の名前と魔法の種類、討伐結果などが細かく記載されている。最初のページをみる。魔導士長の名前がヒビキ・結界師3となっていた。
「ヒビキ、結界師の後のこの3は…??」
「鱗の数だ。ヒビキ魔導士長はヤマトさんの2代後の長と言われている。魔獣のドタバタで記載できる環境ではなかったようでな。ヤマト魔導士とその後継者は記録が無いんだよ。ヒビキ魔導士の時代になり、ようやく記載が再開された感じだな。」
へぇ、ヤマトさんは何使いで何枚の鱗だったんだろう?聞いてみた。
「ヤマト魔導士長は火炎使いで鱗は3枚。普段から体力づくりをかなり行っておられたようだ。まぁ歴代魔導士長から聞いた伝え聞きだから、どこまでが本当かは…何の書類もないからね。」
火炎使いは体力を消耗しやすいもんな。その話が本当なら努力の人だったんだ。記録が全くない上に愚者って不名誉まで被せられて。何とか本当のことを知りたいなぁ。そう思いながら続きを読んでいくと、討伐した魔獣の種類と数、怪我人の有無、中には参加魔導士の死亡という悲しいことも記録されている。目を通しているとフウマが確認してきた。
「魔獣に大型という特別な種類や個体はいない、間違いなかったかな?」
間違いないです、と答える。フウマがよしよしと清書しているようだ。ユキヤはまた歴史書を読み始める。気になる記述を見つけた。ヒビキから4代先の魔導士長ヒロミ・回復師3と書かれた人物が鳥の魔獣に食い殺されたとある。古い書き方のため、ユキヤには詳しく読み取れない。
「魔導士長、このヒロミさんって方は魔獣に食い殺されたってありますけど、この魔獣は倒せたのかな?」
フウマが手を止めユキヤに駆け寄る。二人で確認したが、遺体発見ならずとなっていた。
「長が死亡したため代理の者が記録したのか。討伐した魔獣の数も確実な数ではないだろう。この鳥型を倒せていない場合、天龍の情報通りなら魔力を持ったと言う事になるのか。魔力は子供や孫にも遺伝するんだったな。」
「はい、天龍はそう言ってました。でも魔獣は子供をたくさん産みますよね?どう遺伝するんだろう?」
得た魔力を子供達に平等に分配?そうなら孫の代にはすごく少ない魔力になる。それとも選ばれた個体にのみ遺伝する?そうなると突然魔法を使う個体が生まれることになるわけだ。




