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1人で歩けない程疲れ切ったユキヤ。ミサキに付き添われ布団にもぐりこんだ。
「ゆっくり休みなさい。ユキヤ、おやすみ。」
ミサキがテントから出ていく。交代するかのように、天龍が姿を見せる。
「バテてるな。けど、誰も食われずに帰って来た。良かったじゃねぇか。お疲れさん。」
「天龍、朝の続き、魔獣が魔導士を食ったらって。どうなるの?レベルアップ!するとかそんな感じ?」
ユキヤの質問に対し、天龍が話し出す。
「魔導士を食った魔獣は、いずれ魔法を使うようになる。その魔法は、子供や孫にも遺伝する。息子、お前たちがドラゴンと呼んでいたクロワシな。あいつ自身かもしくは先祖、魔導士を食ってる。」
「ちょっとまって!魔獣はみんな魔力を持っているんでしょ?そう習ったよ。それに、大型はみんな魔法を使うって。食った魔獣の魔力が蓄積して…」
ユキヤ達魔導士は全員そう習った。魔導士を食ったら魔法を使う?意味がわからない。
「それは、お前達の予想だろ?そもそも、魔獣の生態じたいがすでに間違っていた。大型なんて種は生まれない。今いる小型が成長するだけだ。そして、もともとの魔獣には魔力はない。いいか、よく聴けよ。魔獣は魔導士を食って初めて、魔力を持つようになる。どんな魔法を使うかは個体によって違うから、あのドラゴンって呼ばれたクロワシは、氷魔法が使えるようになったみたいだな。」
魔導師に代々言われてきた定説が覆された。
「じゃあ、例えば小型の魔獣が魔導士を食べたとしたら、ワーウルフやクロワシでも魔法を使うの?」
「使う。ただ、お前たちも知ってのとおり、魔法を使うには体力がいる。今のお前は魔力を使いすぎて体力無しのヘロヘロだろ?小型なら使える回数が少ないか、使っても弱い魔法しか使えない。」
待てよ?エリさん!
「前回の討伐でエリさんの指を食いちぎったモンクは?魔法を使わずに倒されたけど?」
「すぐには使えない。食ったものを消化し、その過程で魔力が体に取り込まれる。だから魔導士ってのは絶対に食われちゃいけない。もし仲間が食われたら、その魔獣を絶対にその場で始末しろ。お前たちは勘違いしてきた。大型になったから魔法が使える、これは間違いだ。だがそうだな…魔法が使えるから他の魔獣を倒して森を制服した、となったら。大型はみんな魔法を使うってことになるか…まぁとにかく、正しい知識をもて。場合によっては小型のままでも魔法を使ってくるぞ。」
ユキヤの頭はパンク寸前。しかし、これが真実だというのなら、みんなに知らせなくては。
「天龍。ありがとう。いっつもビックリさせられるけど、本当に助かるよ。」
目が覚める。ユキヤは朝一で魔導士長の元に行った。
「何という事…我々の知識はその多くが間違いだったというわけか。」
魔導士長が驚きの声をもらした。周りの魔導士も驚く。天龍がもしフウマ魔導士長と波長が合っていたなら直接説明していただろう。波長が合う相手はそう多くはないようだ。神殿に帰ったら新たな資料を作るという。敵を知ることが勝利への基本となる。
「魔獣は長い年月をかけ、人間を研究し、戦い方を変えてきている。こちらも対処していかなければ。」




