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「東の神官殿、君にも確認したい。君の神殿で修行中の風使いも風の警告を受けたと、これに間違いはないか?」
国王に問われミサキははっきりと答える。
「間違いありません。風使いのユキヤは現在7歳で、魔獣の知識についてはほとんどありません。ですが自分なりの言葉で僕に教えてくれました。彼はこれまでにも何度か風の知らせを受け取っており、外したことはありません。僕はユキヤの警告を信じます。どうか討伐の人員と装備を強化して下さい。このままの準備では危険すぎます。」
国王が答える。
「そうか、確かにその言葉、聞き届けた。大型が現れた前提で話しを進める。まず私からの提案だ。国家防衛騎士団を総動員で向かわせ、魔の森付近一帯を完全に封鎖。住民たちを速やかに避難させる。そして、実際に討伐にかかわる魔導士方が必要と望むすべての事を完全支援。万が一、結界が破壊されるなどで魔獣があふれ出た場合には全騎士団員が可能な限り討伐及び住民の保護、避難、警護につとめることを命じる。騎士団長、頼んだぞ」
国王の決断をうけ、騎士団長は「御意!」と答えた。
「続いて財政部。今回の討伐予算を最低でも倍にあげる。できるな?」
国王の隣に座っていた財政大臣が素早く資料を配り説明する。
「資料をご覧ください。毎年の国家予算には万一に備え必ず臨時予算を設けております。幸いにもここ数年、災害や飢饉に見舞われることなく臨時予算は残ったままです。今こそこの予算を使うときかと!」
資料を確認し、国王が立ち上がる。
「魔導士長フウマ殿。国民は国の宝。国民のなかにはもちろん、君たち魔導士も入っている。犠牲者をださないよう、こちらは協力を惜しまない。予算や人員、近隣に暮らす民族については何も心配せず、魔導士の選抜と配置だけに集中してもらいたい。」
「国王殿下…感謝いたします。こちらもできうる限りの人員と作戦で戦います!!」
フウマが深く頭を下げた。すると国王は再び椅子に座り話しを切り出す。
「魔導士の人員について、一つ頼みたいことがある。風の魔導士は風からの便りを受け取れるのだったな?」
フウマが答える。
「昔から、そのように聞いております。わたくしは結界師なので、詳しくは…しかしながら、風使いは世界の動きに大変敏感です。サクラやユキヤがその例ですなぁ」
「うむ、今回の討伐に、ぜひとも風使いを二人、参加させてほしい。」
国王の発現にフウマをおさえてミサキが叫んだ。
「待ってください!それは、ユキヤを討伐隊に入れろということですか!?無理です!あの子はまだ7歳なんですよ!自分の身を守ることもできない子供です、いったい何をお考えですか!」