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スバルの制服注文が終わる頃、ユキヤにも連絡が来た。臨時討伐参加者の募集だ。決行は6月。スバルの誕生日とかぶってしまうが、新生活に慣れるため、今年の誕生祝いは夏休みに入ってからを予定していた。ユキヤは迷わず参加の返事を書く。
「編入手続きがうまくいって良かったね。制服の注文が遅かったんでしょ?間に合いそう?」
「うん、大丈夫。もし間に合わなかったら、出来上がりまでは体操服でもいいって。学校指定のくつやかばんも揃えたし。定期券も買えたよ。…あの、ユキヤ君、あの…ありがとう。」
入学費用に学用品、交通費。すべてユキヤのお財布だ。スバルは申し訳なさを感じる。
「全然、俺がやりたくてやったことだから。とりあえず入学金と授業料は一括で払ってあるし、集金とかは神殿の事務さんに言ってね。話は通してあるから。」
内緒にはできない。ユキヤは臨時討伐に参加することをスバルに知らせた。
「また、行くの…?ねぇ、本当に大丈夫なの?もし私が…行かないでって言っても、行っちゃうの?」
痛い質問だ。この前の討伐では目標の半分以下しか魔獣を狩ることができなかった。小型魔獣が増えればより凶暴な中型のエサになり、最終的には大型を育ててしまう。前回でベテラン魔導士が2人も引退した。ユキヤはもう、断れないのだ。
「これは、俺が自分で決めたことだから。参加する。そして必ず元気に帰ってくる。7月にスバルちゃんとの旅行が待ってるからね!」
楽しい話題を無理矢理引っ張り出す。この討伐はもう、どうなるかわからない。ユキヤ自身に最悪の事が起きても、スバルが自分の好きな仕事を選べるようにと、大学までの費用は神殿の事務に預けてある。子供が産めないと泣いたあの日のスバルへ。ユキヤからの遺書だった。
今回の魔獣討伐に参加する魔導士には、事前会議に参加することが条件とされていた。今日はその会議の日。ユキヤは中央神殿の会議室にむかった。そこで意外な相手に出会う。
「え、ミサキさん?アユミさんにマサト君も!え、なんで!?」
1つ紋のメンバーが多くいる。どういうことだ?ミサキが話し出す。
「申し込んだんだ。まぁ僕達が出来ることは大結界の修復くらいだけどね。」
そう言ってアユミをみる。
「私たちが結界修復すれば2つ紋の結界師が中に入れるでしょ?君たち中の人が有利になるわ。」
マサトは結界より回復が得意、けが人が出た時の保険くらいにはなるかなー、と参加を決めたらしい。
「会議の出席要請が討伐前にあるってことは、またなんかヤバイことなんだろ?ユキヤは僕の…僕の息子だからね。お前だけを危険にさらすわけにはいかない。」
ミサキの言葉が嬉しくて、ユキヤは思わず笑顔になった。頼れる人がいる。相談できる人がいる。なんて恵まれているのだろう。温かい心を感じながら、会議が始まった。




