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「ユキヤ君…次の討伐も、参加するの?私ね…その、私の前からいつか、ユキヤ君が消えてしまいそうで!すごく…怖い!」
スバルがユキヤに本心をぶつけてきた。ユキヤも、スバルが心配していることは分かっている。これから討伐がさらに危険になるかもしれない。自分が無事で帰って来られるかもわからない。でもユキヤにも怖いことがある。
「俺は、君が討伐に参加する事が怖い。スバルちゃんは、6つの紋を持つ火炎使い。イオリさんより強い力を持っている。もしかすると参加を強制されるかもしれない。そんなことはさせたくない。だから俺は討伐に参加する。俺は君の心を守りたい。」
ユキヤはスバルを抱き寄せる。二人の幸せな未来のために、今は頑張る時なんだ。
いつもの生活。ジョギングしたりジムに通ったり。もちろんスバルとも会っている。一つ違うこと。それは
「はい、すみません。少し体を休めようと思って。はい、ありがとう。」
ふぅ、とユキヤはため息をついた。通信機を通じて頼まれた仕事依頼を断ったのだ。今までは討伐参加後なら3日程休んで依頼をすぐに受けていた。しかし今回は断り続けてすでに10日だ。魔導士長からの連絡はなく、ユキヤが知らせた話がどうなっているか不明。もしかしたら、秋を待たずにもう一度、臨時の討伐があるかもしれない。
もう1つはユキヤの精神的なもの。エリとリンが討伐引退を宣言した。年齢的にも体力のピークをすぎて、今回の怪我で決心がついたという。無論、緊急事態には参加してくれるとのこと。二人の女性には今後、パートナーと二人で穏やかに過ごしてほしいと願う。
今日もスバルと会う約束をしている。アパートの玄関ドアにカギをかけ、ユキヤは風をまとう。スバルの学校まで飛べばすぐだ。深い意味はなかった。ただこの日、ユキヤはスバルの帰宅風景を見てみようかな、と思い喫茶店ではなくスバルの通う高校に向かった。
高校校舎の屋上に降り立つ。玄関から学生が出てきた。その中にスバルがいる。ユキヤ、視力2.0。
1人で歩いて帰宅するスバルを後ろから追いかける数人の生徒がいる。友人か?と思った瞬間、なんと1人が後ろからスバルの制服を突然強く引っ張ったのだ!
無防備に歩いていたスバルは真後ろにお尻から転倒。制服のスカートがひらりと揺れる。ひざ横の鱗がキラリと光った。生徒たちの目がスバルに向く。いじめだ!その瞬間。追いかけてきた生徒が空へ巻き上げられた。
「きゃーーーー!!」
「えぇ!竜巻!?」
「うわー!!誰か!」
生徒玄関は砂埃がまい、周辺の生徒も目を閉じる。阿鼻叫喚ともいえる騒ぎの中、ユキヤはスバルを抱えてサッサと姿を消す。竜巻が嘘のようにスパッときえた。嫌がらせをした生徒が空から地面に落下。ホコリだらけでスカートはめくれ、靴やかばんは吹っ飛んでボロボロ。本人もすり傷だらけで鼻血を噴出した生徒もいた。
これがのちに、生徒玄関突風事件と学校で語り継がれる事件の真相だ。
「あー、ビックリした。あんなガキっぽい嫌がらせを今のガキはするわけか。」
愛しのスバルを大事に抱えて、ユキヤは中央神殿に帰った。




