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ユキヤの話しを聞き、魔導士長もおおよそユキヤと同じ反応だ。。天龍に聞いたとおりに答える。
「結論から申し上げますが、しばらくは強い魔獣と遭遇する前提で行動するべきかと。誰の助言もなく一人で頑張ったヤマト魔導士長の意思を継ぎ、戦うしかなさそうです。」
ユキヤの言葉にフウマが頷く。
「魔導士長ヤマト、長年彼は…魔導士最大の愚者と言われてきた。結界を破られ街を破壊され、すぐに対応をしないから被害が広がったとな。彼はたった一人、孤独に戦い続けた魔導士だったのか。」
フウマが苦い表情を浮かべる。この真面目な人にマヌケなど口が裂けても言えません。
「ユキヤ、すまないがこの話、しばらく内緒にしてくれないか。今が危険なわけではない。下手に噂が広がると国民がまどわされる。我々魔導士だけでは手に負えないだろうし、国王にも話さなくてはならない。」
ユキヤが頷く。もとよりこんな話し、大っぴらにはできない。
「しばらくは大結界の見回りも強化したいし、討伐の回数を増やすかもしれない。帰り次第私は国王にかけあってみる。」
馬車の窓から街が見えてきた。国に付いたようだ。魔導士長がユキヤに言った。
「君には助けられてばかりだな。本当に。どうかこれからもよろしく頼む。」
中央神殿が見えてきた。出迎えの人の中に愛おしい人の姿もあった。
「ユキヤ君、お帰りなさい」
静かにユキヤに抱きつくスバルをしっかりと抱きしめる。また、心配をかけてしまった、目に涙をいっぱいためて自分を見上げるスバルをみると、理性のネジが吹っ飛んだ。
少しだけ腰を曲げ、視線の高さを合わせる。ユキヤのファーストキス、相手は運命の人、スバルだ。二人だけの時間、二人だけの空間…
「ユキヤ!公衆の面前で何してるんだお前は!心配して来てみれば~」
「こんなデリカシーない男に育てた覚えはないよ!ユキちゃん!!一回東に戻りなさい!」
デカい声で説教をカマスのは、真っ赤な顔をしたミサキとサクラ夫妻。二人とも…なぜここに!?
お互いがファーストキスだ。スバルは両方のほっぺたが真っ赤になり固まっていたが、やがてマリが連れて神殿へと入っていった。残ったのは…
「二人ともさ、何でここにいるの?てかさ、今夜どこに泊まるの?でさ、俺のカワイイ妹たちは?」
「サクラのお母さんに預かってもらってる。エリナは神殿で職員とお留守番。」
あ、そうか。おばあちゃんちにお泊りは久しぶりではないか?じゃあこの二人も
「私たちはユキヤの家に泊まるわ!その顔、傷だらけよ。東の特効薬持ってきたから。」
そのままユキヤの家に直行した。ユキヤは今王都周辺のアパートで暮らしている。王都は何かと物価が高く、将来スバルと暮らす家を購入予定のユキヤは比較的お家賃の安い郊外に部屋を借りていた。
「もう!顔だけこんなに傷だらけなんて信じられない!!どんな着地したのよ」
風呂に入り改めて鏡を見ると、本当に顔全面すり傷だ。自分でも笑ってしまう。
「サルに肩でタックルかけて、そのまま顔から着地したみたい。エヘヘ。」
実際には受け身など考えていられない状況だった。でも、二人にはどうしても言えなかった。




