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「なんだよ、雰囲気が暗いから明るく話したのに。まぁとにかく、強い魔獣との遭遇率が増えたのはそういうことだ。あの肥ったクロワシが外に出たのは偶然だろう。ライバルもいない、小型の魔獣は食い放題。しまいにゃ人間発見だ。育ちきってない魔獣も外に通じる道を覚えたんだろうな。エサがある。だからこうして表に出てくる。そしてそれを風が知らせる。お前たちが探す。めでたく遭遇だ。」
そうだ、風からの情報で…遭遇率が上がったのはこっちからも探すからか。
「昔、200年くらい前かな?忘れた。しばらくは強い魔獣が暴れまわって大騒ぎになった。あの時はお前みたいに波長の合う相手がいなくて、誰にも知らせてやれなかった。そう考えたらあの時の魔導士の長は優秀だったぜ。フウマのマヌケとは全くちがった。」
マヌケ!?今魔導士長をマヌケと言ったか?なんて失礼な龍なんだ!!
「フウマ魔導士長はマヌケじゃない!一生懸命頑張ってくれてるよ!」
「で、結果がこれか?詰めが甘すぎる。思い出した、あの時の長はヤマトだった。あいつ、とにかく辛抱強いヤツだったなぁ。周りから何を言われてもとにかく耐えて耐えて。地道に森の奥から出てくる連中を倒し続けた。育った魔獣はな、頭もいいんだ。辛抱強く餌を待つこともあるし、相手が弱る姿をみて、どうすれば相手が困るのかも覚える。反対に、出ていった仲間がことごとく殺されたらいずれ諦める。」
そういう事か。250年前、大型を倒した後も大結界の修復ができなくて、街や人間が襲われたって。単純に結界だけのせいではなかったのか。魔導士長ヤマトは誰からも助言をもらえないまま、それでも頑張った。そして今がある。
「ねぇ、この話ってフウマさんにしてもいい?マヌケは外すけど。」
「おぅ、みんなで話し合え。これだけこっぴどく人間にやられたから、もしかしたら悪さを辞めるかもしれないけど…こればっかりはオレにもわからん。」
魔獣の考えまでさすがの精霊でもわからない。それはまぁ、当然だ。精霊と魔獣は全く違う生き物だ。
「それと…これはお前にだけ話す。内緒にしてね。俺の妻のことだ。つがいを悪く言われたら悲しいだろ?だけど、つがいがいるお前にだから話しとくわ。」
つがい、地龍のことか。天龍は地龍を愛しているんだな。
「わかった。教えて。絶対に墓場まで持っていくから。」
「信用する。この森の起源は、地龍が眠りについたからだ。地龍は命の精霊。その精霊がこの森で眠りについたために、命を狩る魔獣が生まれた。地龍が目覚めれば魔獣は消える。オレが妻を支えきれなかったばっかりに、お前たちには迷惑をかける。すまない…」
そして天龍は消えていく。いいヤツだったんだ。可愛いヤツだった。俺と水龍が愛した地龍…
ユキヤが目を覚ます。魔導士長がみえた。
「よく寝ていた、2日も寝ていたんだぞ。他の魔導士はみんな国に帰らせたよ。天龍とは話せたか?」
精霊と話すと時間間隔がくるってしまうようだ。ほん2,3時間しか話してないと思ったのに。帰りの馬車でユキヤは天龍との話しを魔導士長に伝えることにした。




