66
「人目が気になるのはよくわかりました。でもそれでお出かけできないのは…もったいない!だから、今年の誕生日はここから離れた場所でデートしましょう。竜紋を隠せる丁度いい服があるので、それもプレゼントしますから。」
スバルが嬉しそうににっこり笑った。あぁ、やっぱりスバルには笑顔が似合う。ユキヤはスバルを中央神殿に送り届け、その足で西に向かって飛んだ。
西には昔からの伝統的な服がある。浴衣だ。花や金魚などが描かれた薄手の布が一般的。風通しがよく汗をかいてもベタベタしない。あの服ならスバルの竜紋を隠せる。日が傾いた頃に呉服屋に入る。結構大きなお店だ。店員を呼んで浴衣売り場へ。色はもちろん柄もユキヤの知っているものなどごく一部だったと思い知らされた。選べないので店員に聞く。
「高校生の女の子。涼しくて一番肌触りがいいのはどれですか?金額は決めてません!」
店員が夏らしい水色の布地に花がプリントされた浴衣を出してくれた。触ってみると確かに肌触りが良い。
「お値段は少し張りますが、ベタつかずすごく風通しがいい素材なんです。薄い色合いですから濃い色の夏帯を合わせると引き締まりますよ。」
帯も軽くて動きやすい、扱いやすい物を選んでもらう。現金一括払いで購入。よし!今年の誕生日はガッツリ出歩くぞ!
スバルの学校が休みの日、ユキヤは中央神殿のスバルの部屋を訪ねた。
「はい、これがスバルちゃん専用のゆかた。これを着て、誕生日はデートしましょう!」
物珍しそうに浴衣に触れるスバル。ここは王都。いろんな地域の人たちが集まるので着ている人を見たことはあるが、さわることはあまりない。着物の文化が根強く残っているのは西のごく一部の地域だけだろう。
「綺麗な色。これが浴衣…あれ!?これってどこで買ったんですか?」
西地域の呉服屋と答えるとスバルがえぇ~~!と騒ぎだす。
「見たかった!私も浴衣のお店入ってみたかったのにぃ!」
この言葉を聞き、誕生日は西地域の旅行に決定した。西の神殿にはいつも討伐に参加するイズミがいる。スバルのことを紹介したい。うまくいけば、畜産を営む農家の見学もさせてもらえるし。楽しみになってきたぁ!
楽しみの前に一仕事。魔導士の祭典こと、春の討伐だ。ユキヤはラクダ服にローブを羽織って準備万端。あの遭難騒ぎの時からずっと、サクラがしてくれたように自前のポーションをタオルにくるんでバッグに入れている。あの時助かったのは、サクラやミサキ、そしてスバルの優しさがあったからだと、自分でもよく分かっている。
サクラがしのばせてくれたポーションで体力を回復した後、不安や緊張で押しつぶされそうな心をスバルのお守りが支えてくれた。ミサキが待っている、長い付き合いの中で沢山感じた愛情。帰りたい、帰るんだ。その強い気持ちで乗り切ったあの夜を、ユキヤは忘れることはないだろう。
優しい家族。大好きな人。大切なみんなを守るためにユキヤはまた、討伐に参加する。




