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実際に、ユキヤだって親に捨てられたのだ。猫の子供を捨てるなど簡単なことだろう。結局ユキヤは今日に至るまで両親に会うことはなかった。ユキヤから会いに行くことも無いし、両親から連絡が来たことも無い。完全に親子の縁は切れてしまった。実際のところ、もし会いに来られても、ユキヤは恐らく親だと気が付かないだろう。顔を覚えていないのだ。
今回はスバルに初めてのお願いをすることになりそうだ。
「スバルちゃん、オレ、今度の魔獣討伐も引き受けたんだけど。帰るまであられのこと預かってもらえないかな?エサの事もあるし、まだ赤ん坊だから置いていけなくてさ。」
スバルは目をキラキラ。
「私のお部屋で過ごせばいいよ!絶対大事にかわいかわいってしちゃうから」
「よかった。ありがとう、助かるよ。ついでに俺も、かわいかわいしてくれると嬉しいのですが」
スバルが笑い転げてから、ユキヤの頭をよしよし、となでてくれた。ユキヤが質問する。
「ところで、スバルちゃんは今年の誕生日、どこですごしたい?ご希望は?」
討伐が終わって少しすれば、つがいの誕生日というビッグイベント。ある意味では討伐参加よりも重要なことだ。少し前までスバルはショッピングデートをよく希望していたが、ここ2年くらいだろうか?人目の多いデート場所を避けるようになったような気がする。そして、今年のスバルの希望は
「ここでお祝いして欲しいな。ユキヤ君とあられちゃんにお祝いしてもらえたら嬉しい!」
お互いに婚約者という認識だ。彼女が自分の部屋でお家デートを希望したら、彼氏はウキウキしてしまうだろう。だがユキヤは違和感を感じていた。
「スバルちゃん?最近何かあったのかな。もし、俺の部屋で婚約者という意味で過ごしたいって言うのなら、俺はすごく単純に嬉しいけどさ。なんで人目を避けるの?」
スバルの目が泳いでいる。やっぱりそうか、5年間見つめ続けた女性だ。間違うわけがない。
「何かあったなら教えてほしい。俺は、スバルちゃんに幸せに過ごしてほしいんだ。たぶん、君が思ってる以上にスバルちゃんは俺にとって大事な人だからね。」
お手上げです、という様子でスバルが白状した。
「私、私の体に鱗が6つあって。足と腕にもあるから半袖とかスカートとか着れないし。クラスメイトにも気持ち悪いって言う人がいて、みんなじゃないけど。だからちょっと…」
ほほぅ、俺の婚約者を気持ち悪いと?い~い度胸だな。死にたいのか?ふとそんな考えが浮かんだが、悩みの本質はそこじゃない。
スバルは6つの竜紋を持っている。これは現在の竜の子の中で最多。ユキヤは両肩にあるため服を着たらわからないし、ミサキは手の甲にあったが一つだけなので薄手の手袋をつけているのを数回だけ見た。スバルはお腹1枚と背中2枚、右手首少し上に1枚、右ふくらはぎに1枚、左のひざの横に1枚。夏場薄着になると丸見えの場所だ。ユキヤは納得して話しかける。
「だから夏場、あまり人の多い所に行きたくないんですね。そういうことかぁ」
「それに学校の人に婚約者がいるってわかったら、からかわれそうで。だから、その…ごめんね」
いえいえ、スバルちゃんのせいではありません。学校のヒトねぇ。




