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しばらく進むと急ではあるがロープで登れそうな場所を見つけた。ケンヤが魔導士長に話しかける。
「さっきまでの場所に比べたら、ここの土手はなだらかです。ロープを張って上がりましょう。」
ケンヤはアウトドアが好きで、登山ガイドの仕事をしている。ロープの張り方や崖の登り方には知識アリ。ケンヤの意見に従い、まずユキヤがロープを持ったケンヤを土手の上に運んだ。ケンヤがロープを固定し、ロープの張り具合を確認しながら下りていく。ケンヤの補佐を受けながら元気な者から登り始めた。
自由に飛べるユキヤはまず上で魔獣に備え待機、一人目が無事に登りきった。ケンヤは途中の足場が一番悪い所で補佐をしている。3人ほど登った所で、ユキヤは下に降りた。頭を打っている3人を1人ずつ風に乗って上に運ぶ。1時間ほどで18人全員が無事に登れた。
隊列を組み、森の出口を目指す。昼に差し掛かる頃、魔の森から脱出。魔導士達は待機していた騎士団に保護された。
騎士学生のテントには、すでに北部の病院から医者が派遣されていた。頭を打った3人を中心に、他の魔導師の健康状態をチェックし、特に問題なしとされた者は食事をして安静を言い渡された。ユキヤもさすがに疲れ果てていたため、軽く食事をとるとすぐに布団に入り眠りについた。
「よう、大変だったみたいだな。無事で何よりだ。なんだ、落ち込んでるのか?」
天龍だ。ユキヤは心を読まれたようでさらに落ち込む。
「僕、自分を過信してたのかな?うまく力を制御できなくて、危うく仲間を怪我させるところだった。」
「気にするな。お前はうまく対処したじゃないか。お前は若い。経験も力の使い方もまだ未熟だ。誰もが通る道だからな。克服する方法は一つだけだ。知りたいか?」
天龍の言葉にユキヤは知りたい!こぶしを握り締めた。
「魔法をガンガン使うことと経験値をあげることだ。結局、慣れるしかないってこと。あとは身体づくりかな。焦りや緊張もあっただろうが、お前、あの時疲れていただろ?疲れると注意散漫になりやすい。体力をつけて疲れにくい身体を作れ。お前は若い。まだまだ成長する。努力あるのみさ。」
そうだ、あの時の僕は本当に疲れていたんだ。がんばろう、もう絶対に失敗はしない!天龍が笑ったような気がした。そのまま目が覚めた。
馬車に乗りエルフの村でサオリが降りた。北神殿でシュリと頭を打った3人が降りた。3人は北部国立病院に入院し、精密検査を受けるそうだ。そして中央神殿についた。馬車を降りる。
「ユキヤさん!!」
スバルが駆け寄りユキヤの胸にしがみつく。会いたかった人。ユキヤは思い切り抱きしめる。
「ユキヤ!心配したんだ。無事で、もうそれだけで…」
ミサキとサクラの二人も討伐隊の緊急事態を聞き、中央に駆けつけていたのだ。ユキヤは涙が出た。
沢山ありがとう、沢山ごめんなさい。伝えたい。でも今は、今だけは。
「みんな…ただいま、遅くなりました!」




