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ちがう、ちがうんだ。今のこの状況は!
「僕です!僕のせいでみんなを危険に巻き込んだ。風のコントロールを失うなんて!ごめんなさい!」
ユキヤは深く頭を下げた。魔導士長が声をかける。
「ユキヤ、魔力のコントロールを間違えることは、若い魔導士によくあるんだ。ここにいる全員が通ってきた道だ。原因もわかっている。焦りや疲労、緊張など。だから若い魔導士に負担をかけないように我々ベテラン勢が補佐をする。今回君が、コントロールを失う程の強い負担をかけたのは他でもない、私の責任だ。君は、何も気にしなくていいんだよ。」
魔導士長はユキヤの肩をやさしくポンと叩いた。
「現在の時間から動いても、結界の外に出られるのは夜間になる見通しだ。夜間の移動は避けたい。今夜はここで一晩待機しよう。明日、日の出とともに出発する。おそらく魔獣が襲ってくるだろう。交代制結界を張り、見張りをしながら過ごそう。」
ベテラン勢が話し合い場所を決める。魔導士長が結界を張った。みんなラクダ服こと魔法服を着ているので体温維持も心配ない。魔導士長が結界修復のシュリとイズミに送受信機で連絡。二人は騎士学生のテントに助けを求めに行ってくれた。頭を打った3人は念のため、安静にして様子をみる。炎使いの女性はサユリ、結界師はリナという名前だった。ユキヤは滑落者に謝罪した。
「気にするなよぉ。俺たち雷使いだけど、ウルフが多くて苦戦してたし。飛ばしてくれて助かった。」
「これは事故、誰のせいでもないよ。重傷者とかいるわけじゃないし、いいんじゃない?」
雷使いの3人も結界師の2人もユキヤを励ましてくれる。涙がこぼれた。リナも声をかけてくれる。
「私は意識がもうろうとしてたから。君がいなかったら今頃生きてないし。感謝」
と笑いながら励まされた。サユリにも礼を言う。
「たった一人で、君は良く頑張ったよ。協力できなくてごめんね。ありがとう。」
みんなが携帯用の食料を食べ夜に備える。夜は視界が悪くなるので、結界があるとはいえ油断できない。ユキヤは落ち着いて風の声をきく。大型や中型の情報はない。
「風からの情報は小型魔獣の物だけです。」
全員がガッツポーズ。日が落ちると視界が一気に悪くなった。むやみに火をたくと魔獣が集まるのでみんな暗闇でじっとして体力を温存する。風がさわりと動いた。ユキヤが小さめの声で伝える。
「来ました。小型の魔獣、群れ。木の上…?」
「あぁ、サルか。ユキヤ、それはなキラーモンクの群れだ。来るとは思ってたけどやっぱりな。」
やがて、暗闇から真っ赤に光る眼がいくつも見えた。魔導士長が指示をだす。
「奴らなら結界を破ることはないだろう。結界の中から、近づいた奴だけを打つ。雷の者、頼む。」
小型魔獣と戦いながら夜明けを待つ。足元が見え始めたら出発だ。キラーモンクを炎使いが最後に焼き払い、全滅させてから18人の魔導士は道なき道を進んだ。




