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「魔導士長、二人とも目を覚ましましたが動かせないです!火炎使いの人は頭痛を訴えてて、もう一人はまだ喋れない感じで!どうしよう!?」
魔導士長の指示を受けて、ユキヤは二人に崖から滑落したこと、今、ケンヤとリンが助けにくる準備をしていることを話した。ユキヤは同じく滑落した5人に向かって声をかけた。
「そちらは大丈夫ですか?不明の魔導士は発見しましたが、怪我で動けない感じです。僕はこっちで待機します!」
向こうからも返事があった。
「ユキヤ君だね。僕は骨折していたナツキ。不明の二人は発見したんだね。了解!お互いに頑張ろう。」
はい!と返事は返したが、ユキヤも無傷ではない。左足首の痛みがひどくなり、体力の消耗も激しい。上を見上げる。かなりの高さから滑落したようだ。全員が助かったのは、ラクダ服のおかげだろう。
ふと、ユキヤは自分のウェストポーチに気が付いた。もしかして!ポーチを開けると、タオルにくるまれたポーションが割れずに残っていた。女性二人も気になるが、今もし、魔獣に遭遇したらユキヤしか戦えない。ユキヤは迷わずポーションを飲んだ。消耗しきっていた体力が回復する。
「サクラちゃん、ありがとう、ありがとう。」
ユキヤは静かに涙を流した。泣き声を聞かれたら、二人が不安になってしまう。胸元を触るとスバルが作ってくれたお守りが手に触れる。みんな、ありがとう。僕たちは絶対に生き残るから!
今のユキヤに、この二人をつれて浮き上がるのは非常に難しい。頭を打っているようだし、おそらくユキヤにしがみつくのは無理だろう。一人ずつなら上に連れていけるが、かなりの高さまで運ばなければならない。その間にもし、魔獣の襲撃があったら助けられない。助けが来るまで待つしかなかった。
ガサガサと音がして、助けより先に来た連中がいた。ワーウルフの群れだ。この足場の悪い中を、どうやら無理やりのぼって来たようだ。五人が待機している場所から雷の爆音が聞こえた。向こうも戦っているらあしい。ユキヤも戦うために構える。
「ねぇあなた、風使いでしょ?このままじゃこいつらに食い殺されるわ。こっちの子をつれて、上に避難して。私は自分で、何とかするから。」
火炎使いの女性が、ユキヤに声をかける。よく見れば、結界師はまだ若い女性だった。炎使いの女性は40代頭かな?何度も討伐に参加していて、魔獣の危険性を理解しているのだろう。でも。
「できません。このままここで戦います。お二人は助けがくるまで安静にしてて下さい。」
きっぱりと言い切った。このウルフは、結構大きな群れのようだ。とことんついてない。
「逃げな!君たちはまだ若いだろ!親が泣くようなことするんじゃないよ!」
炎使いが力ない、しかし強い口調で指示を出す。しかしユキヤも引けない時がある。
「親を泣かせたりしません!ウルフは僕が倒します!」
ウルフの群れに向けて、かまいたちを放った。近づいていたウルフ達の頭がごろりと落ちる。遠目に見ていたウルフが近づく足を止めて警戒する。向こうの五人もかなり苦戦しているようだった。




