6
魔導士長が部屋を出た後、すぐに中央神殿に勤める神官補佐官がやってきた。今夜はこの神殿に泊まるようにと魔導士長に言われたため、二人はそれぞれ宿泊用の部屋へ通された。。窓を見れば、夕日はすでに沈みかけている。ミサキは疲れもたまっていたことから、ありがたく宿泊させてもらうことにした。
夕食後、ミサキは用意された部屋でのんびりしていた。何ともあわただしい日だった、不安を口にしていたユキヤのこともとても気になる。明日は朝一番に帰路につこう。
突然、ドンドンとドアを乱暴にノックされる。返事をする間もなく魔導士長が訪ねてきた。
「えぇ!?魔導士長?一体どうされたのです?」
驚いてミサキが尋ねると、早口だがしっかりとした声で魔導士長がかえした。
「明日、王城で緊急会議が開かれる。風の知らせを受けた2人にも参加を要請する。国王参加の会議になるようだ。よろしく頼む。急ぐのでこれで失礼する。」
あまりにも急な話。そして反論の余地も無し。国王も参加の会議って…
「はぁぁ~~!??」
ミサキの叫びと同時にドアがまた、勢いよく開いた。そこにいたのはサクラだ。
「ねぇ!私はお城の会議とか出たくないんだけど!ってか、私は出られないわ!悪いんだけどあなた、一人で行ってくれないかしら!?」
オイオイ!なんちゅー勝手な、そんなこと僕も一緒だし!
「そんなこと言われたって、僕だって出たくないですよ!押し付けないでください。しかも僕は直接風の知らせを聞いたわけじゃないんですから。サクラさんはもう絶対参加ですよ。」
サクラの元気がどんどんなくなっていく。
「え~、そんなぁ。緊急会議の原因が私だってばれたら絶対パパ不機嫌だし…会議室で説教とか?絶対にやだなぁ~」
…ん?パパ?会議室で説教?
「サクラさんのパパギミは、魔導士さん?それともお城の??」
「うーん…えっとねぇ、私のフルネームは湯上沢 桜。父がね、城の防衛騎士団の団長してるの。会議に来ちゃう」
そうだった、子供の頃、確かに聞いたことがある。貴族の家に竜の子が産まれたと。つまりは、だ。
「君、貴族のお嬢様だったの??え?本当に!?」
「こんなところで嘘ついてどうするんですか!?本当に本当です。だから嫌なのよ、会議参加。」
空から降ってきたこの人が、実は貴族のお嬢さん…
この時ミサキは学んだ。貴族の娘は必ずしも淑女ではないのだ、ということを。