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竜の子  作者: 前田ミク
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食事の後、一緒に商店街でお買い物。スバルが欲しかったという小説のシリーズをまとめて購入。いつも1個だけ買っているというジャムは端から端まで一個ずつ買ってみた。ひたすら遠慮するスバルに、僕の幸せを奪わないでと頼み込んだ。そして。

「あの、本当に大丈夫ですか?私、重たいかもしれないし…はずかしぃ…」

「ぜんぜん。すごく軽いですよ。ご飯、ちゃんと食べてますか?僕にしっかりつかまっててね。」

丘の上で、スバルの希望を叶える。スバルを抱きかかえ、ユキヤは風に乗る。ふわりと2人の体が空へ浮き上がり、あっという間に街が見渡せる高さに到達。

「スバルちゃん、怖くないですか?怖かったらすぐ教えてね。」

スバルに様子を聞きながら少しずつ風の流れに身をまかせる。

「いいえ、怖くなんてない。すごい、すごいですユキヤさん!私、空に浮いてる!街があんなに小さい、風がこんなに気持ちいいなんて知らなかった。」

感動で声を震わせながら、スバルは自分の気持ちをユキヤに伝える。

「じゃあこのまま、少し飛んでみましょうか。移動しますよ!」

スバルに気を配りながら、ユキヤはゆっくりと風の流れに乗ってみる。自分が暮らしている街を見下ろして、スバルは頬をピンク色に染め、目をキラキラとさせて眺めていた。一通り空の散歩を楽しみ、地上に降り立つ。感動冷めやらぬスバルにユキヤは微笑みかける。

「スバルちゃん、いや、僕の運命の人。君が望むならいつでもお連れします。今日は楽しい時間をありがとう。僕を受け入れてくれたことに心から感謝します。お誕生日、おめでとう。」

そう言ってユキヤはポケットから真珠の付いた可愛らしいデザインのイヤリングを取り出す。真珠はスバルの誕生石だ。

こうして二人きりの誕生日デートは終わりをむかえた。スバルを神殿まできちんと送り届けユキヤは帰路へつく。手をつないだだけ。キスも、もちろんそれ以上のことなど一切ない。12歳のスバルの心を思いやるユキヤの誠意だった。


夏を迎え、西から南の地域では海水浴の時期だ。ちなみにサクラの兄ウミが生まれたのがこの時期となる。ユキヤは少し仕事を休んで北に向かった。どうしてもゆっくりと話がしたかった。エルフの村を超え、魔の森の近くまで来た。さすが北の大地、夏とは思えないくらいに涼しい。シンプルな丸パンと飲み物だけしかもっていない。討伐の時に見つけた風通しの良いお気に入りの場所。腰を下ろし目を閉じた。

「いらっしゃい。オレになにか御用かな?」

話したかった相手、そう、天龍だ。

「お邪魔します。あなたとゆっくり話してみたくて、来ちゃいました。」

天龍はククッと笑いユキヤに問いかけた。

「何を聞きたい?俺の恋バナ、とかいうやつでも聞きたいのか?残念ながらお前が期待するような恋愛はしてないぞ。オレたち精霊には正式な性別はないからな。」

ユキヤは驚いて即質問する。

「そうなの!?妻がっていうから男女がいるんだと思ってた!天龍は男の子ではないのですか?」

うーむ、と考えて天龍が答える。

「そうだな…オレは作り出したことはあるが、自分で生み出したことはないから。お前たちの解釈では男でいいかもしれない。お前たちの世界では、生み出すのは女の仕事なんだろう?」

まぁ、確かに。男の人が赤ちゃんを産んだ、なんてことになったら大ニュースだ。

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