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東神殿には夜の早めの時間に帰宅できた。子供達を抱え、サクラとミサキが玄関先で迎えてくれた。空から地上へ降り立つと、6歳のハナが飛びついてきた。
「にぃにお帰り!みんなでね待ってたよ!お母さんがケーキを焼いたの、少し焦げた」
「ハナ!黙りなさい!」
サクラが慌ててハナに口止めをしている。
「ユキヤ、怪我はないか。無事に帰ってきたならそれだけでもう…」
ミサキが言葉を詰まらせた。みんな、たくさん心配してくれたんだ。ありがとう。僕は本当に幸せです。家族そろって夕飯を食べる。サクラお手製のケーキ。スポンジがホットケーキに近い丈夫さだ、でも、世界で一番おいしいと思った。夕飯をしっかり食べて、お風呂にゆっくり入った。ミサキが声をかけた。
「ユキヤ、今夜はゆっくり休んでね。おやすみ。明日は話しをしっかりと聞かせてもらうからな!」
明日は尋問らしい。中型をみつけて、昔の事を思い出して…そうだ、表彰してもらうことも報告しなきゃ。ユキヤは眠りについた。
翌朝、ミサキとサクラに旅の様子を細かく尋問される。中型をみつけ、倒すのに少し苦労したと話したところでサクラは気絶しそうな顔色だった。
「やはり大変だったようだね。怪我人が出なかったのは、運が良かったとしか言いようがないかな。」
ミサキがため息交じりに話した。今回の活躍で報奨金をもらえること、11年前の記憶を取り戻し、一緒に大結界に入った片足の教員の事を二人に話した。
「あぁ、ユキヤさんの事ね。私が腕のリハビリしてた時、彼も歩く練習していたわ。懐かしいな。まだ先生を続けていたのね。元気だった?」
サクラの質問に笑顔で答える。
「うん、とても元気そうだった。あの時は走馬灯が見えて、仲間も死ぬほど吐いたけど生き残ったってさ」
ミサキが語りだした。
「思い出してほしくなかったけど、仕方ない。もう、ひどい物だった。今でも夢に見るよ。魔獣に襲われる若手の騎士を助けることもできず、目の前でどんどん食われて血だらけだった。魔導士は攻撃も防衛も間に合ってなかったな。サクラとサオリさんは重傷で、魔導士長がイオリさんを連れてドラゴンを攻撃させたんだけど、ドラゴンが暴れて。イオリさんは動けない程の疲労で、魔導士長に自分をおいて逃げろって。仲間がそんな状態で、それでも誰も助けに行けなくって。もう、みんながどう動けばいいかわからなくて。」
少しづつ、ユキヤも思い出す。その戦いのさなかにミサキはウルフに飛び掛かられたのだ。
「俺は近くに義兄のモミジ君がいて、助けてくれた。でもそのせいでモミジ君は肩を負傷して、障害が残ってしまった。」
サクラは4人兄弟の末っ子で、上に3人の兄がいる。次男ウミと三男マツリは騎士をしているが、長男モミジは騎士の指導員をしている。肩をこわしたからだ。
「クロワシに連れ去られた騎士達が…腹を食われながら、殺してくれと叫んでいて。今も俺の耳に残っている。もう絶対に大型を生み出すわけにはいかない。中型から大型に変わった途端、全てが段違いに強くなる。ユキヤ、頑張ってくれたな、ありがとう。」
二人の笑顔をみて、頑張ってよかったと思った。僕は、次もきっと参加する。




