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みんなと同じく、ユキヤも昨夜より早く眠りについた。そしてまた、彼が現れた。ユキヤが話しかける。
「討伐に行ってきたよ!ねぇ、本当にあの中に奥さんの地龍が住んでいるの?地龍は戦えるの?魔獣がすごいたくさんいたんだけど、大丈夫かな?襲われない?」
天龍が答えてくれた。
「襲われる心配はない。魔獣では妻を見つけることはできない。地龍の心が癒され、目覚める時を俺はずっと待っているんだ」
「地龍は悲しいことがあってあの場所にいる。だから天龍もここにいるんだよね?番の傍にいたいから?」
天龍が頷いた。やはり愛おしい相手のそばにいたいと思うのは、精霊も一緒なんだな。
「早く会える時がくるといいね。僕もね、運命の人がいるから、天龍の気持ちが少しだけわかるな。」
表情は変わらないのに、天龍が笑ったのがわかった。
「俺の息子もなかなかに情熱的らしい。いいか、恋しい者が悲しむ時は、何があっても必ずそばにいてやるんだ。オレと同じ失敗はしないでくれよ。」
「わかった!絶対にそばにいるよ。それに、スバルちゃんに悲しい思いなんてさせないから。天龍、また会いに来てもいい?あなたのことをもっとたくさん知りたいんだ。」
「好きにすればいい。オレはこれからもここで暮らす。この結界を守りながら…」
ありがとう。そう返す前にユキヤは目が覚めた。
今日も魔導士長の馬車に同席した。片足の教員から聞いたこと、天龍に出会ったことを伝える。
「当事者が話したこと。それが11年前の全てだ。わかったか?あの時はみんな必死だった。君が、到着した時な、僕はイオリを連れてドラゴンに接近していた。あれを倒すにはイオリの力が必要だった。自分が一番強い結界を張れるのに、ヤツを倒すためにみんなから離れたんだ。若くて死した騎士には申し訳ないと思う。僕が、見捨てたようなものさ…どうすることもできなかったしな。君が、責任を感じる必要なんてないんだよ。むしろ救世主さ。」
はい、と答えてユキヤは前を向く。過ぎたことを考えても仕方がない。これからの事を考えないと。
「あの魔導士長、スバルちゃんは6月が誕生日でしょ?その…デートとかって、してもいいですか?一緒に買いたいものがあって。」
真っ赤になりながらもごもご喋るユキヤを見て魔導士長は笑った。
中央神殿に到着し、神殿前の広場で馬車から降りると、ユキヤが聞きたかった声。神殿の玄関をみると、スバルが手を振りながら駆け寄ってきた。
「お帰りなさい!無事でよかった、怪我は?」
「平気です。スバルちゃん、会いたかったー!」
お互いに抱きしめあって喜びを噛みしめる。ユキヤはすぐに約束を取り付ける。
「スバルちゃん、今年の誕生日は二人でお祝いしてもいいんだって!魔導士長から許可をもらった。だから来月は、二人でお祝いのランチを食べましょう。」
周りの大人たちは優しく見守る。少年、いきなり来月の約束って…早すぎないか!?負けじとスバルも答える。
「行く、行きたいです!友達とお出かけするのは初めてなの。嬉しい!」
よかった!と喜ぶユキヤ。少年よ!友達でよいのか!?ツッコミたい気持ちを押さえ、若いカップルを見つめる。将来、二人が幸せに過ごせますように。つがいを持つ者たちは願った。




