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アユミは南神殿の爆発炎上事件の後、スバルにつきそい中央神殿に勤務していた。そして28歳の時、病院派遣の実務を終えた回復師に運命の人だと告げられ、交際。結婚に至っている。まさしく適任者!
「あの時はねぇ!頭変なのがきたなって感じだったわ!だってさぁ私、8つも年上だったのよ?ハタチのガキンチョがなんだかワイワイ騒いでるーって感じでさぁ。」
大きなおなかを抱え、大笑いしながら当時をかたるアユミ先生。現在34歳。ユキヤはグイグイと質問する。
「やっぱり、変な人に見えましたか?言い寄られた時って、実は怖かった、とかありましたか?」
ユキヤの質問に対して、アユミが予想外の答えを出してきた。
「これが不思議と、怖くなかったの。なんでだろうね?本能的にね。この人は私に危害を加えないってわかったんだよね。私さ、小さい時、お父さんの暴力が酷くて男の人が苦手で。結婚なんてしないと思っていたの。」
初めて聞いたアユミの幼少期の生活に、ユキヤは驚きの声をあげた。
「虐待されてたんですか!?そんな、なんてことを!神殿に逃げ込まなかったの!?」
アユミはアハハハと笑った後、ユキヤに自身のことを教えた。
アユミは子供の時にかなりの発語障がいがあった。竜の子の特徴だった。うまく喋れない娘に父親はひどく苛立ち、そして叩くようになり、エスカレートして蹴るようにもなった。恐怖で委縮すると余計に喋れない。その繰り返しの生活だった。母も助けてくれず、結局は近所の人が見かねて神殿に連絡。家族の反対を押し切り保護されて、今にいたっている。
「それで途中からは西神殿で育ったの。本格的に魔法の訓練をうけて、結界を覚えたからさ。今なら結界張って自己防衛できちゃうよね~。まぁ大人になってからは、男性にも女性にも暴力なんて受けたことないけどさ。不思議なんだよね。夫の事は、変な奴とは思ったけど怖いとかは全くなかった。分からないなりに、何か感じる物があったのかなって思うの。」
アユミはユキヤを優しい眼差しでみつめて話した。
「ユキちゃん、思い切って会ってみなさいよ。スーちゃんはね、とても可愛い子だよ、それに優しいし。力が強すぎてなかなか親元に帰れないけど、それでもお母さんにお手紙書くんだ、って文字を綺麗に書く練習したりさ。すごく頑張り屋さんだよ。だから、とりあえずね。お友達になってみたらどうかな?それで、もしスーちゃんが本当にユキちゃんの運命だったなら、スーちゃんを大事にしてあげて。そばで支えてあげてほしいの。」
お友達。そうだ、別にいきなり結婚とかするわけではない。ゆっくりと知り合っていけばいいのだ。ユキヤはスバルに会ってみることにきめた。
それからのユキヤは行動が早かった。王都の商店街で人気の菓子屋にはいる。
「えーと、これと、このクッキーを買います。可愛らしく包装してもらえますか?リボンはピンクにしてください!」
代金を支払い、ユキヤは中央神殿へとむかった。




