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竜の子  作者: 前田ミク
35/236

35・イオリの物語

子供の頃から私の嗅覚は敏感だ。大人になって少し鈍くなったかな。それでも匂う、焦げ臭い!!燃えてる!?部屋の外に出た。ここは中央神殿の3階。この結界だらけの神殿で火事なんて絶対に起こらないはず!階段を降りていくと魔導士長が小さな子供を抱えている。焦げ臭い!火元はあの子か。


私と同じ火炎使いか。火元がわかったので部屋に戻る。結構魔力が強そうな子だった。私が育った部屋で生活することになるだろう。魔力暴走が起きやすいのは5歳まで。私は念のためにと6歳まであの部屋にいた。森の民エルフとして生まれたのに、室内暮らしの私ってどうなの?

私の両親は私とサオリの力を知っても怖がらずに接してくれた。サオリは防衛魔法だったから、両親のもとに返されたが、私は魔力が完全にコントロールできるようになるまでここで育った。6歳で森に帰ったけど、やはり生活に慣れなくて。ここに帰ってきてしまった。お父さんとお母さんは私が暮らしやすい所で暮らせばいいよ、と神殿に帰らせてくれた。

そのままここに居座っている。私も24歳。魔獣討伐以外の仕事もやってみたい気はするが、

「私って、他にどんな仕事ならできるんだろう?」

世の中のお仕事に、あまり詳しくない。資格が必要な仕事は無理か。明日、本屋にでも行ってみるかな。

「職業ってこんなにあるの!?ほぇ~!!」

本屋の求人情報誌を見てみる。いろんな仕事の募集が書かれていた。求人誌をもらい、近くのカフェでジュースを頼む。読み進めていくと、おっと思う仕事があった。

「防衛騎士団の指導員補佐募集…仕事内容は、あ、できそうだ。」

神殿に帰り事務官に相談すると、すんなり就職できた。なんだ、就職って簡単じゃん!!頑張ってみよう!


仕事内容は騎士が訓練で使う武器や防具の準備やお手入れ。基本は騎士本人がするんだけど、破損したりお手入れの道具が足りない時に倉庫から持ってくるだけ。あとは休憩中の飲み物を準備したり怪我した人の応急処置するくらいで、その他は騎士諸君の訓練を見学する。指導教員はきちんとついてるし、魔獣討伐を考えたらなんて楽なお仕事かしら、思わず笑顔になっちゃいます。


仕事に慣れてきた頃に事件は起きるものだ。指導員が少し席を外したと同時に騎士の訓練生がふざけて遊びだしたのだ。私は手元のメガホンを使って大声で注意した。…あれ?聞こえないのかな??

「そこの人!訓練を続けてください!!」

さっきより大きな声でもう一度注意したけど、無視ですか…そのうち他の訓練生が注意に入ったが、あろうことか、おふざけ小僧が真面目君に食って掛かる。ケンカが始まった!止めようとする人と押さえようとする人と、もはやこれは止められない、えぇ~!マジか!最初に注意に入った子が殴られた!けが人だわぁ!!仕方ない、実力行使で止めよう!

「てめぇら!いいかげんにしろ!!」

叫びながら訓練生に向けて火炎を放った。もちろん、手加減したわ。魔獣に向けるよりグッと弱くした。

「遊ぶ暇があったら練習しやがれ!その程度の腕じゃあ森の魔獣に一瞬で食い殺されるよ!弱いんだから訓練ぐらい真面目にしやがれ――!」

指導員が帰ってきて腰を抜かした。そこにはイオリに土下座するヤケドをした生徒達の姿があったのだ。


さてさて、今日も良い天気。みんなには訓練に集中してもらわないと!

「あらみんな~、お茶の用意は私がするから、今日も訓練、頑張ってくださいねー」

私を見て、訓練生が一斉に頭を下げて訓練に入る。あの1件から、どの子も素直な良い子になった。きっとあれね、雨降って地固まるってヤツ。みんな、強い騎士になってね。サクラのお父さんみたいに。でも、生き残るんだよ。みんなの大切な人のために。


2年後、イオリは騎士と結婚することをきめます。相手はあの「殴られた子」だった男性騎士。

練習熱心で真面目なこの青年は、イオリを超えることを目標に結婚後も邁進し続け、やがて副団長にまで昇進します。でもこれは、まだまだ先の未来のお話し。

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