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3年前、魔の森に大型の魔獣が250年ぶりくらいに現れた。7歳だった僕は風の声を聴くために魔獣退治に参加した。そう、確かに参加したんだ!サクラちゃんのお兄さんでウミっていう騎士さんと一緒に魔の森に行ったまでは覚えている。でも、その後の記憶が全くない。次に覚えているのは国立病院の病室。防衛魔法師のお姉さんが僕を見て
「ユキヤ君?目が覚めたのね、良かった!ここは病院だよ、分かるかな?」
って話しかけてくれた。すごくいい人で、熱が高くて苦しい時に一生懸命看病してくれた。アユミさんって人だった。
たくさん怪我人が入院していて、ミサキさんの顔の傷もその時魔獣に襲われてついたものだ。元気いっぱいだったサクラちゃんも、あの後たくさんリハビリしたけど、左手にうまく力が入らない障害が残った。
回復師が使う回復魔法は万能ではない。その人の治癒力を高めて傷の治りを早くするだけで、麻痺した体をもとに戻したり、ちぎれた腕をくっつけたりはできない。サクラちゃんと一緒に怪我をしたサオリさんは、幸いリハビリで回復。元の生活を送っていたけど、つい最近結婚して、今は故郷のエルフ族の村で暮らしているらしい。双子のお姉さんのイオリさんは独身のまま、今もバリバリ仕事をこなしているそうだ。
僕に良くしてくれたアユミさんは今、南神殿で神官をしている。南地域は海に面した町や村がたくさんある港町。海の仕事は怪我人が良く出るため、マサトさんっていう回復師が神官をされていた。ただ、地形的に台風や水害が起こりやすく、腕のいい結界師を希望する声があがっていた。アユミさんは魔獣退治の時に結界師としての力が認められて、南神殿に移動となった。南神殿には神官が2人いて、安全な街になっている。
「3年間なんてあっという間ね。ユキヤ君の神殿ツアー、来月かぁ。絶対どこの神殿回っても、この神殿に帰ってくる、に1票!!」
ケーキを食べ終えたサクラちゃんが、僕を見ながら話す。ミサキさんもしゃべりだす。
「1票って…選挙じゃないんですよ?ユキヤが決めることに僕は何も言いません。静かにここに帰ってくるのを待ちます。」
水や風を使う僕達、中間魔法の使い手は、将来の自分がどこで暮らしたいのかを決めるために10歳になったら各神殿をめぐる巡礼を行うことになっている。もちろん神殿以外にもいろいろ見るよ。要するに、将来どこで暮らすかを決める、最初の国巡りだ。ちなみに、同じ風使いのサクラちゃんも巡礼を経験している。
「帰るも何も、今回は各神殿を見るだけの見学巡礼だよ?たったの1週間だし。ここに帰ってくるに決まってるじゃん。ここが僕の家なんだから。」
僕がそう話すと、二人とも嬉しそうに僕を見つめた。




