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夏が過ぎ、ユキヤが神殿で迎える4度目の秋。毎年、春と秋には魔導士が招集され、魔の森の魔獣討伐が行われる。増えすぎた魔物を狩るという大仕事だ。森や結界の状態を確認しながら行われるので、回数が増える年もあるが、春と秋の討伐は中止になったことはない。
最近、風がざわざわと騒いでいるのをユキヤは感じていた。なぜかはわからないが、すごく嫌な風。よくない感じ、どころか怖いくらいだ。何が怖いのかうまく説明が出来ないのだがとにかく怖い!木の枝から飛び降り、ユキヤはミサキの部屋へと走りこんだ。
「ミサキさん!」
「わっ!!ユキヤ、廊下は歩いて」
「ミサキさん、魔の森には行かないよね!?魔獣の討伐はいつもみたく、お留守番だよね?」
真っ青な顔で質問するユキヤ、いつもはのんびりニコニコな子が、ミサキはすぐにユキヤに駆け寄る。
「ユキヤ、大丈夫だよ。僕は1つしか紋がない防衛魔導士だ。申し込まない限り、狩りに招集されることはないよ。いったいどうした?風になにか聞いたのかい?」
ぷっと唇を突き出して下を向く。不安な時や困った時のユキヤの癖。初めてここに来た時を思い出す。両親に付き添われ神殿に訪れた、魔法が発動する前の、3歳直前の小さな男の子。抱き上げたあの日に見た表情だ。神殿にきて2日目に風の魔力が突然発動して暴走。ミサキの部屋が破壊され、長期間使えなくなった。
あれだけの魔力暴走でけが人なし、被害が一部屋だけですんだのは用心深いミサキの先手があったから。ユキヤを迎え入れたとき、念のためにと神殿すべての部屋に結界を張っておいたのだ。
防衛魔導士のほとんどは成人するとまず、大きな病院に研修という形で派遣される。魔法の強さや自身のクセを十分に理解した後、各地にある神殿に勤めるか、病院に残るかを決めることが多い。後輩魔導士の育成には防衛力と回復力が必要だからだ。
「僕はどんな時でもユキヤを信じる味方だよ。何かあったのなら相談してほしいな。」
ミサキの言葉にユキヤは小さな声で答えた。
「風がね…ざわざわしてて。森が大変なんだって。魔獣のね、偉い人が森の奥から出てきたって言ってた」
魔獣の偉い人?それはまさか!
「魔獣の偉い人って、まさか大型が産まれたのか?」
ユキヤはまだ、魔獣をよく知らない。これ以上聞いても答えは出ないだろう。魔獣討伐は来週にせまっているはず。時間がない。
「ユキヤ、風の知らせを教えてくれてありがとう。大切な情報だ。僕はこれから少し出かけないといけない。神殿で、お留守番してもらえるかな?」
ミサキはユキヤを他の神官に任せ、中央神殿に向かうことにした。ユキヤの言う偉い人。これが本当に大型の誕生をさしているのなら来週の討伐を止めなければならない。
「しっかり調べてもらわないと。もし本当に大型が産まれたのなら魔導士全員が食われるぞ!!」
ミサキは馬にのり、全ての神殿を統括している中央神殿へと急いだ。




