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竜の子  作者: 前田ミク
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サオリが立ち止まる。ドラゴンの視線に入らないよう、後方へと移動してきた。ここまでが限界だ。サオリが目で合図すると、サクラは両手に小さなつむじ風を作り出した。

「お願い、私たちを助けて」

そう呟くと小さかったつむじ風がぐんと大きくなりドラゴンの右前足に巻きつくように直撃した。重量級の生物はバランスを崩すと弱いもの。ドラゴンは左へと体制を崩した。右前足を風に巻きつかれたことで、わき腹が丸見えだ。誰も指示などしていない。だが攻撃魔法師が思ったことはただ1つ。チャンス!一斉に腹部を攻撃する。アイスブレスを吐き出しドラゴンも抵抗するが、結界師と温泉水が踏ん張る!サクラがサオリの手を取る。

「うまくいった、サオリちゃん逃げよう」

その時ドラゴンの尻尾が2人をめがけて叩きつけられた。サオリの結界がパリンと割れたと同時に、サオリの意識が遠のく。反射的にサオリを支えた瞬間、再度近づくドラゴンの尻尾が見え、サクラは目を閉じた。誰かが自分を抱きしめてくれた感覚。同時に凄まじい衝撃を全身に受けて、サクラはそのまま意識を失った。


騎士の待機所でユキヤは背中を引っ張られた気がした。振り向くと真っ暗な空間に1匹の白龍がいる。

誰?どうしたの?龍がユキヤに話しかける。

「息子よどうか森に行ってくれ、妻の暴走を止めてほしいのだ」

ふわりと強い風が吹きユキヤは一瞬目を閉じた。次に目を開くと龍の姿はなく騎士がいる待機所だった。急に立ち上がったユキヤに騎士たちが驚く。

「どうしたの?ユキヤ君!何か聞こえたか?」

ウミが話しかけるとユキヤがはっきりとした口調で告げる。

「森に行く!急いで、間に合わなくなるよ!」

ユキヤの気迫におされ、騎士達が一斉に外に走り、馬にまたがった。


ミサキの位置から見えた光景は、一瞬。本当に一瞬の事だった。サクラの父カズマは御年58歳と思えない筋骨隆々、背丈は190cmのゴツイ男だ。ドラゴンの尻尾に当たり、サクラやサオリと共におもちゃのように吹っ飛んだ。周りの魔導士は攻撃手を守るため動けない、他の騎士が三人の元に走る。


サクラが!

「リーダーさん、行きないや。私がどがぞ頑張るけぇ!」

西の港町特有のなまり。1つ紋の結界師アユミだった。アユミは続けてしゃべる。

「ちょっとマサト君、確か回復が得意だったよなぁ?どがぞ中に入れんかえ?はや助けなみんな死んでしまうで!」

マサトも了解とうなずく。確かに結界の大きな裂け目は修復できた。あとは小さな傷をなおすだけだ。決断の時か!ミサキは言った。

「アユミさんありがとう。マサト君一緒に入ろう!僕が結界をはるから、君はけが人の回復を!道中の護衛って頼めますか!?」

ミサキはとっさにシンジ魔導士に声をかける。

「もちろんだ!魔獣がでたら俺たちが打つ。行くぞ。」

シンジが新人魔導士2人とともに結界に近づく。

「ポーション、水、食料に治療セット完備。荷物持ちとして僕も行きましょう」

父と妹の緊急事態にモミジも荷物を背負った。ミサキ達は即席のチームで大結界の中に入る。襲ってくる小型の魔獣を打ちながら真っ直ぐにサクラたちの方へ走る。残された結界師のアユミはみるみるうちに息が上がり始めた。4人でやる仕事を1人でこなしているのだ。騎士が体力回復のポーションを差し出す。

「助かるわぁ、飲ましてごしなる?世話かけますなぁ」

アユミの隣にシズルが立った。ポーションで体力を回復してきたのだ。二人は目で合図して修復を進めた。

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