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「ねぇミサキさん、試着した?ラクダ服!もう最悪~、あれを着るなんて憂鬱だわぁ」
いきなり出た!魔法服の苦情。あのダサい服は年若い女性にとって、厳しい、いや、試練だろう。
「昨日イオリちゃんとサオリちゃんに、あれを本当に着るのかきいてみたのね!そしたら討伐には毎回着なきゃダメだって言って、イオリちゃんめちゃくちゃテンション低かったよ。二人とは私、年が近いから子供の頃一緒に魔法練習をした幼馴染なの。サオリちゃんは昔から無口でわかりにくいけど、あの顔は相当イヤなんだと思う!!」
天才双子姉妹の幼馴染は風使いか。もはや奇跡的な確率。ミサキの幼馴染は西神殿、あれ?クビになってないよね!?まぁとにかく、同じ結界師のイズミくらいだ。イズミは魔導士の中ではアイドル張りのイケメンなんだ!ただどうにも…少し頭の中が残念で。いいヤツなんだけどなー。
魔導士になってから、ミサキだっていろいろなビックリに遭遇し、それなりに慣れてきた。凄腕の美人姉妹と風使いが幼馴染ね。これくらいは想定内!いける!と謎の自信。サクラが続ける。
「あの二人、エルフ族だから討伐の時に家族に会う予定なんだって!久しぶりの家族水入らずがテント村かぁ。少し気の毒かな。」
「へぇぇ!?あの双子さんはエルフなんですか?マジ~~!!」
言われてみれば確かに、あの双子姉妹の顔立ちや髪の色って、エルフ族だ!!エルフで双子で魔導士で天才って、もはや記録じゃないのか!?すごい星のもとに産まれたな!その幼馴染が風使いか!魔導士の歴史で初じゃないのか!?
驚くミサキに気づかないまま、お昼ご飯をパクパク食べるサクラ。そしてまたしゃべりだす。
「昨日ママにパパの今回の仕事を話をしたの。ママ、知ってたのよ。騎士の家族が仕事内容を聞いたくらいでいちいち騒ぎません!って怒られちゃった。そうだよねー。騎士って危ないところにわざわざ突っ込んでいく職業なんだから。ママはこれまで何回も危険な仕事に行くパパを見送ってきたんだなって。」
湯上沢家。ノアール王国建国から続いている騎士の家系で、これまでに団長職につく優秀な騎士を何人も輩出している。その功績をたたえて貴族の身分を賜っている。そんな家の騎士に嫁ぐとは、サクラの母は相当な覚悟で結婚したのだろう。
「お母様は、強い方なのですね。そして、夫である団長をとても信頼しておられる。騎士の職とは、家族の理解と覚悟があって成り立つものだと。大変、勉強になりました。」
そう。みんなに大切な人がいて、守りたいものがある。この討伐、絶対に失敗できない。ミサキの覚悟が固まった瞬間だった。




