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中央神殿所属や自宅が比較的近い魔導士達は帰宅し、宿泊する魔導士はユキヤ含め8名ほどだ。
久しぶりに幼馴染でもある西神殿のイズミ神官に会うことができた。2枚紋の結界師で、イズミは毎年討伐に参加している。今夜は宿泊すると言うがミサキにはユキヤがいるため、長く話はできなかった。相変わらずのアイドル顔。男の自分が見ても思う。なぜ、あんなに物事が覚えられないのだろうか。謎だ。
しかし西神殿の神官になれたとは。奇跡だ。おそらく補佐官が相当に優秀なんだろう。
「イズミ、君に神官の仕事を教えてくれた人は、きっとすごく優しくて根気のある人だったんだね。」
ミサキは思わずイズミに、余計な一言を言ってしまった。
神殿の職員から宿泊室に案内される時に渡された支給品。魔獣討伐の際、着用が義務付けられている防衛用の魔法服。通称、全身ラクダ。職員から必ず試着して、サイズが合わなければ申し出るよう念を押された。
ミサキは討伐初参加となるので、魔法服は今日初めて見たのだが、何と言うか、噂通りの代物だった。
長袖長ズボンで布地は比較的薄手。しかしこの布には防衛魔法が編み込まれている。戦闘中に受けた攻撃力を半分近く吸収し、非常に破れにくい。さらに暑さや寒さから着用者を守ってくれる。布の染料も特殊で、エルフ族が代々育てている植物が使われており、人間の体臭が消えるため魔獣に気づかれにくいという最強の戦闘服だ。唯一の欠点。非常にダサい。
サイズ確認のため、ユキヤと共に試着してみる。何と言うか本当に何とも言えないラクダ色。絶妙に身体にフィットしているので、魔法服だけだとぱっと見、全裸に見えなくもない。アラサー男の自分でも拒絶反応だ、女性方から文句ゴーゴーなのは当然か。しかし命と安全にはかえられない。ありがたく使わせていただこう。ユキヤは特注品の子供用魔法服を着てベットでくつろいでいる。見た目はひどい物だが、非常に軽くてラクチンな着心地だった。
試着を終えた頃、部屋に来客があった。
「失礼します、自分は防衛騎士団第1部隊リーダーの湯上沢 海と申します。東神殿の魔導士ミサキさんとユキヤ君で間違いありませんか?」
ミサキが答える。
「初めまして。僕がミサキ、この子がユキヤです。第1部隊のリーダーがなぜここに?テント村にいなくても大丈夫なんですか?」
不思議そうに質問するミサキに、ウミがこたえる。
「はい、第1部隊はすでに北部民族の避難を完全終了し、テント村にて生活を共にしています。テントでの生活には僕がいなくても支障はありませんので、一時的に帰省しました。その、僕のメイン仕事はエルフ族の長との交渉だったので。」
なんと!もうすでに北部民族の避難が終了していたとは。自分たちの知らないところで準備は着々と進んでいたのだ。
「そうだったのですか、エルフ族との交渉は大変だったでしょうに。それで、僕たちに何か?」
思い当たる節がないため、ミサキはウミに率直にきいてみる。
「ノアール国王が要請された、ユキヤ君の討伐同行の件についてです。先ほど申しました通り、エルフ族との交渉は終了しましたので、僕は次の任務に移ることになりました。ユキヤ君の護衛を担当いたします。」




