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一緒に行くための日にちを決める。ユキヤは明日、明後日と現場補助の依頼が入っている。
「僕も仕事が入っていて、えーと、明々後日は?魔導士長は忙しいですか?」
「いや、大丈夫。では明々後日の朝、出発でいいかな?よろしく頼むよ。」
日時を決めてユキヤは魔導士長の執務室を後にした。スバルは8月になり本格的に学校の補修にとりくんでいる。神殿の事務室によって、スバルの返済金の手続き完了を確認した。ユキヤは思った。
「貯金しといてよかったぁ!!」
約束の日の朝。魔導士長は空を飛ぶのは初めてだ。何というか…
「長、僕を信じて下さい!落ちません、絶対に落としませんから!!」
魔導士長は冷や汗をかきながら、ふーふーと荒い息をしている。速度もかなり落として飛んでいるのだが、だめっぽいなこりゃ。オッサンに抱き着かれた状態で、ユキヤは北の森をめざいている。天龍に会うためにキャンプだ。と言ってもおそらく寝ているだけの2日間だろう。3日間かもしれないけど。
「はぁ、この年になって初体験がまだ残っとるとは思わんかった。」
体中かくかくしながらボヤく魔導士長を放置し、ユキヤはテントをはった。前回、スバルのために急遽購入したあのデカいテントだ。
「こんないいテントを持っていたのか。ユキヤもケンヤみたいにキャンプが趣味だったとはなぁ。」
残念だ。ユキヤはキャンプの趣味はない。しかしスバルのために購入した、と言うのもちょっと…恥ずかしいので、さらりと話題をかえる。
「とりあえず、食事と水分補給をしてから一緒に眠ってみましょう。長もあえるといいですけど、こればっかりはね。とにかくやってみましょう。」
食後二人でテントに入る。目をつぶってしばらくすると
「おいおい、今日はじいさん連れて来たのか。よう、フウマ。久しぶりだな。」
「天龍さん。お久しぶりです。すっかりじじいになりました。あなたは…ちっとも変わらない。」
やったぁ、大成功!うまく長を天龍の元につれてこれたぞ!
「ふぅ、今は何とか波長を合わせているが。お前とは長く話せない。とにかく聞きたい事だけ言え。」
魔導士長は天龍に質問をした。ワタリが残した書物について。今なら地龍を起こせるのではないか。魔導士長ヤマト。彼はなぜ魔導士史上最悪の愚者とされたのか。そして、ミキトを含むヤマト以前の魔導士長たちの結界修復や魔獣討伐の働きについて。
「教えてください天龍さん。あなたなら全てを知っておられるのでしょう?」
天龍が答えた。
「わかった。答えはユキヤに話す。お前とはここまでだ。うまく波動がかみ合わない。こればかりはどうにもできないのだ。許せ。」
魔導士長が頭を深々とさげると、天龍の空間からフウマがきえた。夢から醒めたのだろう。
「天龍?どうして話しができる人とできない人がいるの?魔導士はみんな天龍の子供たちの力を受け継いでいるはずでしょ?」
ユキヤの質問に、天龍がうーん…と考えながら答える。
「俺もわからん。こればかりは波長の相性だからな。おまえも波長の合う奴と合わない奴がいるだろ?そんな感じだ。スバルは…ありゃ特例だな。あれだけ鱗を引っ付けていたら、少しは波長があうわなぁ。」




