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浴衣のお値段をみて、スバルがためらう。そしてユキヤはため息をつく。だーかーらー!
「お嬢様、この布は大変丈夫で色あせしにくく、通気性もとても良いんです。買うときは高価に感じるかもしれませんが、とても長持ちします。安いものを使い捨てるよりずっと経済的なんですよ。」
店員が浴衣の布の良さを説明する。浴衣は普段の洋服よりも使う布の量が多い。昔ながらの知恵なのだろうか。大きな布を使っているので、仕立て直しをして、子供用にお直ししたり、さらに古くなれば雑巾や巾着袋などに、布を最後までとことん使い切っていたようだ。
ユキヤもスバルにアドバイス。
「良いものを長く使う、これも美徳というものですよ。毎日買うんじゃないんだから。毎年着られるおしゃれ着だと思えば安いものです。背丈や体型が変わったとしても浴衣は調整できますしね。1年で使い切り、という服ではないんだから。」
目先にとらわれず長い目でみる、一つ勉強したスバル。満面の笑みで店を出た。ユキヤが風をまとい中央神殿を目指す。楽しい旅行だった。スバルの気持ちを確かめることもできた。
「西はいい所でしたね。来年の夏は北に行ってみましょう。将来の住まいを見つけなきゃ!」
ユキヤが誘うとスバルが笑った。
「来年の話しをすると鬼が笑うって聞いたことがある~。」
空から街を見下ろしながら、二人で移動する。これから先も、お互い、顔にしわが沢山できるまで。どうかこの幸せが続きますように。
旅行を終えるとまた仕事の日々となる。夏は屋外の仕事依頼が殺到する。さすがに断ってばかりはいられない。久しぶりに大工さんの手伝いをうけることにした。材料を運んだり人を補助したり。一度は若手の見習いさんが命綱をかけそこねて大事故になりかけた。ユキヤがとっさに大工の腰道具を掴んで支え、大きな事故にはならなかったが、見習いは親方から大目玉をくらっていた。
「ユキヤさん、本当にすみません。俺の指導不足です。危うくかわいい弟子を失うところでした。」
親方から謝罪とお礼を伝えられた。
「いえ、大きな怪我がなくて良かった。僕も偶然助けられただけですから。安全第一で作業をしていきましょう。」
誰でも失敗する。ユキヤだって失敗して先輩に世話になった。誰もが通る道。その後は順調に進み、予定通りに仕事を終えることができた。明日はまた違う現場の依頼を受けている。大忙しだ。
そんな中、8月に入り魔導士長に呼ばれた。そう、北の森でキャンプの時期がきたのだ。
「ユキヤ、天龍にはいつ会いに行く?実は私も聞きたいことがある。僕を天龍のもとまで連れていってもらえないか?スバルは天龍に会うことができたのだろう?」
そう、スバルはユキヤについて天龍に会うことができた。同じことが長にもできるのではないだろうか?
「ちなみにききます。フウマさんが天龍に最後にあったのはいつ頃でしたか?」
フウマが考え、そして答えた。
「魔導士長になる前には確実にあえた。なってからは…さて、どうだったか。君のように毎回あえたわけでもないしな。天龍の力をひいてないと難しいのだろうか?」
こればかりはやってみないと分からない。実際に魔導士は全員が天龍の子供の力を引き継いでいる。なぜ会える人と会えない人がいるのだろう。分からない。今度ついでに聞いてみよう。




