101
食後、近くを散歩してみる。少し歩けば眼下に海が広がっていた。
「西地域、いい所ですね。海も穏やかだしお魚も新鮮でおいしい。将来の候補地にしちゃおうかな…」
スバルが呟く。たしかに内陸ではなかなか食べられないお刺身がこんなに簡単に食べられる。最高だ。
「俺も西はいい所だと思うよ。リンさんが住み着いたのもわかる気がする。東の良さはよくわかっているし、来年の旅行先は北かな。」
旅館に帰ると布団が敷いてある。
「は!布団が…うぅ~」
スバルが赤くなる。布団が2組、ぴったりとくっつけて敷かれていた。ユキヤは大笑い。
「スバルちゃん大丈夫。あなたが成人する日まで僕は待ちますよ。さぁ、早めに休みましょうか。」
灯りを消し、ユキヤは眠ることにした。
ユキヤが布団で横になると、スバルもすごすごと布団に入る。少ししてスバルの声がした。
「あの、あの私、あの~。ユキヤ君なら成人前でもその、その…気持ちは決まっています!!」
彼女からの誘いに思わずユキヤのユキヤがピクリと反応。理性と感情が激しく戦う。男のナニは一度反応するとなかなか大変だ。若いととくに。
「そ、そうですか、とても嬉しいけどその…旅行中はやめた方が良いかと。あの、僕は嬉しいのですが、初めての女性は結構本気で痛いらしいですよ。」
ユキヤは聖人ではない。もちろんその手の本も読むし、男同士の現場仕事となれば下ネタ満載だ。ホントかウソかわからないような話しだって飛び出す。それでも彼女の体をネタにはしたくない。そして、せっかくの旅行でイヤな思い出は残したくない。ここは強く強く理性を呼び起こす。
「明日もガンガン移動して楽しみたいのに、痛みが残ったりしたらつらいと思うので…こ、このお話は、その、帰ってからに持ち込んでもいいですか!?」
消え入りそうな小さな声でハイ、と聞こえた。彼女の承諾!とったーーーー!!!!!
もはや驚きと喜びで眠気は遥か遠くに吹っ飛んだ。初めて会った日、手をつないだ日、キスをした日、抱きしめあった日。少しずつお互いの気持ちを育んできた。運命だから、だけではない。お互いの気持ちをしっかりと確かめ合ってきたと思う。むしろ、運命というのはきっかけであると言えるくらいに、沢山話し合ってきた。スバルが自分を認めて受け入れようとしてくれている。その気持ちが嬉しかった。ユキヤにとって忘れられない夜となる。
翌朝、ぐっすり眠って絶好調のスバルと、眠れないまま朝を迎えたユキヤが朝食のため食堂を訪れた。朝ごはんもお魚定植を選んだ。焼き魚に貝のお吸い物。地元野菜の小鉢がついている。卵焼きも色が濃い。自由に放し飼いにされたニワトリが産んだ玉子で、ここより少し内陸にある養鶏場から直売してもらっているそうだ。魚も気に入った物しか仕入れないとか。
「すごい、食材にもこだわってる…おいしいです、マジで。」
ユキヤの感想に板さんが嬉しそうに言う。
「ご縁あって来てくれたお客さんに、まずいもんは絶対に出せない。いい食材はね、俺が少しお手伝いするだけでご馳走に化けるんだ。不思議だよね!」
料理が好きで極めたのだろう。この人も目がキラキラとしていた。




