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いけそうな気がする

「さあ、いよいよですよ! 楽しみですね、八郎さん」

「あの……。そもそもさ、なんで俺、ダンジョン配信をすることになってるの?」


 俺と茜さんは再びダンジョンを訪れていた。

 場所は俺が三千年過ごしたダンジョン──今では常迷の迷宮と呼ばれ、最難関の一つにまで成長したダンジョンだ。

 すでに少し、懐かしい。


 そんな俺たちの周りをラジコン、もといドローンが二機、飛んでいる。一機は初めて茜さんと会ったときにも飛んでいたドローン。そしてもう一つは、茜さんからの貰い物だ。

 ドローンというのは、自動飛行し、自己判断で撮影、編集、配信までするのだと茜さんが言っていた。

 手の平サイズのこの機械が、そこまで多機能なことは驚きだった。俺からするとパソコン何台分もの機能が、この小さな機体に詰め込まれているようにみえる。


 しかし相変わらずよくわからない。炎上とやらになったばかりの配信を、俺はなんでまた行わなければいけないのだろう。


 そんな俺の疑問に、なぜかテンション高めの茜さんが、ようやく答えてくれる。


「私は、八郎さんが現代のネット社会に適応するお手伝いをする、と頼まれました」

「そう、ですね……」

「今のネット界隈の最先端は、ダンジョン配信なんですよ。誰もがダンジョン配信を見てますし、有名配信者は、並みのアイドル以上のステータスなんです。最新機器だってバンバン、リリースされてますし、界隈のバズった話題がトレンドを独占することだって珍しくない。ですからダンジョン配信を通して、ネット社会に慣れていく。これが一番なんです!」


 早口で、そしてとても良い笑顔で言いきる茜さん。俺はあまりの勢いと、良くわからないフレーズがあって、まばたきしかできない。


「──えぇっと……。その、出来たらゆっくり、そう、当たり障りのないところから教えてくださるとうれしいのですけど……」


 それでも勇気を出して希望を伝えてみる。


「そんなことしてたら何時まで経っても適応できませんよ! ネット社会の変化の速度は八郎さんが思っているより、断然速いんです。爆速です。のんびりしてたらすぐに置いてかれちゃいますっ」

「そういうものなんですか……」

「そういうものなんです」


 自信満々の茜さん。確かに俺には今のことが、まったくわからない。たぶん茜さんのいう通りなのだろう。

 俺はため息を一つついて覚悟を決める。


 ちょうど目の前に回ってきたドローン。そっと手を出すと、ドローンが手の平の上に降りてくる。


「ダンジョン配信、やってみます。色々教えてください、茜先生」

「せ、先生! ご、ごほんっ。もちろんです! では早速、基本となる配信からやっていきましょう!」

「基本?」

「ダンジョン配信の基本、配信スキルの獲得ですっ」


 力強く言いきる茜さん。

 俺はその茜さんの最後のフレーズを聞いて、なんとなくいけるような気がした。

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