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「このあと、もっとコメントが流れると思いますよ。でもこうやって血だらけの、みすぼらしい自分の姿を改めて見られるの、なんだか恥ずかしいですね」


 ホログラム上では俺が秋司さんの髪に触れるところだった。


「八郎さん、この時のって本当に初歩スキルの『手当て』、なんですよね」

「そうですよ。初歩スキルですけど、カンストさせてるので」

「カンストっ! 凄いですね。私、初歩スキルをカンストさせている方、初めて見ました」

「いやいやそんな。俺も時間だけはあって、かつ暇だっただけなので。あ、でも初歩スキルっていくつかあるかと思うんですけど、カンストさせるとどれも面白い追加効果があるんですよ」

「──そんなこと、はじめて聞きました」


 笑顔を浮かべていた秋司さんが一気に真顔になる。まさに壱級探索者の顔だ。

 俺は少しびびりながらも話を続ける。美人の真顔は、やっぱり迫力が違うなと思いながら。


「手当てはカンストすると、手当てから派生する治癒系スキルの回復力の一部が、加算されていくんです」

「それは、えっと、凄まじい回復力になるのでは?」

「まあ、それなりには。あと何より、コスパが良くて……」


 そうやって一緒になってホログラムをみていると、先ほどの比でない量のコメントが流れ始める。俺は思わず無言になって見いってしまう。

 こちらのコメントも到底読みきれないが、それでも俺に好意的なコメントではないことはわかる。


「これがえっと、炎上ですか?」

「これはまだ軽く燃えてるかも、程度ですね。同接が十万人ちょっとでこれぐらいなら許容範囲ですよ。どうしても色んな方がいますから」

「これで軽く……そうなんですね」


 言葉だけでは実感が沸かなかったのだが、実際に目の当たりにすると炎上というのがどういうものか実感できる。同接というのが見ている人の数なのだろう。


「配信ってこんなにたくさんの人に見られるんですね……」

「ふふ。これでも私、ソロダンジョンライバーとしては人気な方なんですよ?」


 そういってにっこりと微笑む秋司さん。

 また、例のちょっと子供っぽい笑い顔。それをみて思わずポロリと告げてしまう。


「秋司さんは可愛らしいですもんね」


 なぜか前を向いて無言で俯く秋司さん。横に座る俺からは顔が見えなくなる。そのまま、しばし流れる無言の間。

時間が経つにつれ、俺は何か間違えたかと少し焦ってくる。


「……八郎さん」

「は、はいっ」

「パーティーを組んだことですし、私のことも茜で良いですよ?」


下を向いたまま告げる秋司さん。


「え、あ──わかりました。茜さん?」

「はい」


 無言の間の圧力に思わず下の名前で読んでしまう。

 しかし顔をあげて、にっこりと笑って応えてくれた茜さんに俺は思わずほっとしてしまった。




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