ゴーレムさんの最後
最初に訪れたのは、静寂だった。
音速を軽く超越した速度で繰り出した俺の拳。
それを突きだして、静止した状態になってから、様々なことがいっぺんに生じ始める。
拳が音速を越えたことによるソニックブーム。その轟音が室内に響き渡り、生まれた衝撃波が、前方に鎮座したゴーレムたちへと襲いかかる。
幸いなことに、俺の幸運強化系のラストスキル──豪運がカンスト状態で発動させていたので、室内を含むこの建物内の、人的な被害は発生しなかった。
ただ、俺の拳によって生じた風が吹き荒れ、アケビちゃんに直撃する。
可愛らしいその顔が、風でひどく歪んで、申し訳ないのだけれど、ちょっと面白くなっている。
──いや、ちょっとじゃないな。だいぶ変顔……本物のアケビみたい……
俺はそんな感想を押し殺すと、必死に真顔を維持する。
その間に、白衣さんの白衣も風で捲れあがって、顔に巻き付いてしまっている。
見学に来ていた面々からはそこかしこで悲鳴があがっていた。
そんななか、一足早く気を取り直したアケビちゃんが、衝撃で倒れてしまったゴーレムたちへと走り寄っていく。
「ご、ゴーレムさん一号! 二号! ヒビが……あ、あ、オーバーフロー、しちゃうっ! え……」
アケビちゃんがゴーレムにかけ寄り、屈んで何かゴーレムをゴソゴソと触っているちょうどその時だった。
入り始めていたゴーレムのボディのヒビから、何かが溢れ始める。
──あ、これはまずいやつじゃないか?
俺は一足飛びにアケビちゃんに近づくと、その襟首を掴んで、俺の背後へとぐるんと移動させる。
「ぷぎゃっ!」
勢いがよくて、アケビちゃんの口から変な声が漏れ出る。
それでも、それが最大限、手加減した速度だった。もうあとほんの少しでも遅かったら、間に合わなかっただろう。
ひび割れた部分から溢れ出すものが一定レベルを越えたのだろう。アケビちゃんがゴーレムさん一号と呼んでいたものが、爆発する。
「スキル「ランパート」」
防御力強化のラストスキル──「城壁」。
その派生のアクティブスキル「ランパート」を発動する。
俺を覆っていた防御スキルがまるで城壁のように俺の背後へと広がる。
爆発からアケビちゃんと白衣さん、それに見学の人々を包み込む「ランパート」。
「──ふぅ」
爆発の余波が落ち着いたところで、俺は「ランパート」を解除するとゆっくりと振り返る。
「あー。皆さん大丈夫──じゃないか」
襟首を掴まれて白目を向いて面白い顔をしながらプランプランとゆれるアケビちゃん。
相変わらず捲れ上がった白衣に顔が包まれて、必死にもがいている白衣さん。
ただ、見学の人たちは元気そうだった。わっと近づいてくる。今起きたことに興味津々とばかりにゴーレムさんの残骸にとりつく人や、アケビちゃんを俺から受け取って何か検査を始める人もいる。
そんなカオスな状況のなか、ちんっという軽やかな到着の音とともに、エレベータのドアが開いた。




