表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

16/54

初のダンジョン配信

「きゃっ! 速いっ! すごいっ!」


 茜さんの可愛らしい歓声が、俺の腕のなかから上がる。

 その様子を全世界に向けて絶賛配信中のラジ夫。


 俺は人生初のダンジョン配信で、茜さんをお姫様抱っこしてダンジョンの中を全力疾走していた。


 そして、コメント欄がすごいことになっている。


 'ボクの茜ちゃんが、あんな冴えない男の腕のなかに'

 '絶対56す56す56す56す56す56す56す56す──'

 'あんな化け物じみたやつ、どうやって56すのか、それはそれで興味深いな。深層のモンスターがゴミのようじゃないか'

 'おい、今、何はね飛ばした見たか! あれ、絶対上位種の竜だったろ'

 'ダハハハっ、なにこれ、めっちゃ草なんですけどwww'

 '武器、持ってないように見えるな'

 'あれじゃね。武器がすぐ壊れる的な'

 'それな。というか、全部体当たりで一撃とか'

 '体当たり最強説爆誕'

 '爆誕してないからwww'


 ──ああ。これって絶賛、炎上中ってやつだよね。モモちゃんから気をつけてと言われてた状況だよな。どう考えても。どうしてこうなったのー!?


 最初は順調だったのだ。

 準備万端で挑んだダンジョン配信。配信スキルも習得し、マネジメント側のモモちゃんの尽力で事前告知もしてもらった。

 そうして始まったダンジョン配信。茜さんの配信に映り込んで名前が売れていたらしいこともあり、開始時の同接人数は、初めての配信とは思えないぐらいの方に見てもらっていた。

 しかし、配信開始してすぐに同接人数が減り始める。


 ──緊張しすぎて、最初のトーク噛み噛みだったしな……これでこのままじゃダメだと茜さんも思ったんだろう。でも、まさかライブ配信であんなこと言うなんて……


 本当は最初の挨拶が終わったらカンストした俺のスキルをいくつか披露する予定だった。

 しかし、一流配信者としての茜さんの嗅覚では、あの時の流れだとそれじゃあダメだと判断したみたいだった。


 ラジ夫の前に姿を見せた茜さんが、視聴者にむけて突然、「今からリアルタイムアタックします~」と宣言したのだ。


「ゴールは、ダンジョン深層、木村さんがお休みトラップを踏んで三千年囚われていた地点ですっ」


 一気に盛り上がるコメント欄。

 俺は茜さんの、スター性っていうのはこういうものなのかと、そこで再認識してしまう。俺も盛り上がるコメント欄の熱に浮かされた感は否めない。


 そして何よりも今はライブ配信中。呆けてないで急がねばと、俺は茜さんを掬い上げるように抱き上げると、全力で走り始めたのだった。


 そして、今に至る。


 ダンジョンの中を茜さんを抱いて走り抜けること自体は、とても簡単だ。

 カンストさせたスキルで道もわかるし、飛び出して来るモンスターも大したことない。当たると汚れそうなのは避け、あとは撥ね飛ばすだけ。


 そうして駆け続けることしばらく。

 ついにゴールとなる因縁の地──お休みトラップが目の前へと近づいてきた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ