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despair

翌日。


まだ朝の七時で受付嬢以外誰もいないなか、燈哉は一人、協会内にいた。


昨日のご飯は楽しかったな・・・


今日も朝早くから協会内でソロモンのことを待つ燈哉は先日、ソロモンと一緒にファミレスに行ったことを思い返していた。


折角少しいいものをを奢ろうってあげようと思ってたのにまさか服装で金が無いと判断されてどの高級店も入れないなんてな。

まぁ、ソロモンもファミレスで喜んでくれてはいたし、何よりファミレスだからこそ3時間くらいずっと話してたのに怒られなかったしな。


に、しても今日もまた早く来すぎてソロモンとの待ち合わせ時間まであと一時間以上もある。さて、どうしたものか・・・


燈哉は初めてソロモンと出会った場所のソファに怠けた姿勢で座り、天を見上げる。


そんな時、一つのパーティが燈哉と同じように朝早くにも関わらず冒険者協会へと入ってきた。


ドアの開く音に燈哉は自然と協会の入り口のほうへ目線が吸い寄せられる。


そんな目線の先には一人の男と、二人の女がいた。


「こんな朝早くくにすまない。こちらのギルドにドラゴン討伐の依頼が入ってると聞いてきたのだが、その依頼はまだ残っているかい?」


そう喋ったのは三人の中で一番前に立っていた黒髪で優しそうな顔だちをしたごく一般市民と変わらない体型をした男だった。


だが、その言葉を聞いた受付嬢は慌てふためいた。


「な、何故貴方様ほどの方が!?も、もしかして何か事情が!?それなら上司を呼んできますよ・・・」


そんな受付嬢の言葉に男の左後ろ側に立っていた魔法使いらしい黒い三角帽子を桃色の長い髪の上から被り、男っぽい体型(つまりまな板の)いかにもツンツンしてそうな一人の女が一言冷たく言った。


「特に事情はないし、上司は必要ないわ。ただドラゴンの依頼があるかどうかだけ聞きたくてきただけ」


「あ、実はドラゴンの依頼は昨日まであったのですが、実は先日依頼を受けた方がいまして・・・」


「え、そうなの?下位種とはいえ、ドラゴンの群れって聞いたし、難易度は高いから残ってると思ったんだけどな・・・」


そんな残念そうに真ん中の男が言うのを、その右後ろにいた全身を頑丈な鎧で包んだ、声を聞くまで女とわからない人が慰めるように言った。


「最近はこの国も安全で、ドラゴン相手なんて久々だって意気込んでたけど、まぁ誰かが受けちゃったなら仕方ないよ。まぁせっかく久しぶりに協会に来たんだし、何か依頼受けてみよ!」


「それもそうだな・・・」


真ん中の男は落ち込むが、それ以上に折角きてもらったのに何もできないことにとても心苦しい受付嬢であった。


受付嬢はドラゴンの依頼を受けた本人がたまたま協会内にいたため、少し睨め付けるように燈哉のほうを見た。


いや、しかたねぇだろ・・・!あの依頼を受けちゃったダメなんてルールはどこにもなかっただろ!


暇で三人の方を見て、話を聞いていた燈哉は受付嬢の怖い視線に心の中で必死に言い訳をする。


に、してもあの三人、相当な手練れだな。まだ、数日しかこの国にはいないが、この国でいままであってきた奴の中では間違いなく一番強い。


・・・暇だしあいつらと模擬戦やってみてぇな。


燈哉はそんなことを考えながら、再びソファにのんびりと

座りながら三人の方を見た。


ちなみに模擬戦とは、協会がある異空間バトルフィールドで冒険者同士が戦うことのできるシステムである。ちなみに、このシステムは本来パーティ対抗戦というパーティ同士で行うランク戦に用いられていたのだが、ランク戦の制度は数年前に廃止されたため、現在は冒険者同士が自由に戦闘できるものとなっている。


ちなみに異空間バトルフィールド内では、怪我を負ってもフィールドを出れば完治し、致死量のダメージを受けると何事もなかったかのようにフィールド外へと戻されるという何とも戦闘に都合の良い場所なのだ。


「ねぇそこの君、何をしているんだい?」


先ほどまで落ち込んでいた男が急にぼっーとしていた燈哉のすぐ横に座る形で瞬間移動し、いきなり燈哉が顔を向けてない方向から腕を伸ばして肩を組むと、燈哉にそう話しかけてきた。


「別に。待ち合わせに早く来すぎて暇してるだけだ」


燈哉は驚きもせず、そう受け応える。


「へぇ、そうなんだ。にしても君だよね?ドラゴンの依頼受けた人」


「だったらどうするんだよ」


「いや、君強いからドラゴン依頼受けたんじゃないかなって思っただけだよ」


笑顔を見せながらそう言う男に燈哉は少しイラつきながら受け応える。


「ちょっとシュン、何やってるの!?」


「いや、ちょっと強い奴がいたからコンタクトしようと思っただけだよ」


桃色の髪の女に注意を受けるも、男は燈哉に絡むのを全くやめようとせず、燈哉に話しかけ続ける。


「ねぇ、うちパーティ人員募集してるんだけど、三日くらいお試しで俺たちについて来ない?君みたいな強者は大歓迎なんだけど」


「無理だ。俺にはもうすでにパーティを組んでいる"仲間"がいるからな!」


燈哉は仲間という言葉を少し強調して言った。


仲間がいるって言えた。ちょっと嬉しい。


今まで仲間というワードを言えなかった燈哉は仲間というワードを言えたことに少し喜びを感じた。


「まぁそっか。君ほど強い奴が仲間いないわけないよね」


「・・・まぁそうだな」


お前数日前までの俺ならブチ切れてたぞ?

まぁ今の俺には"仲間"がいるから全然問題ないけど!


燈哉は心の中でそんなことを考えつつ、相手のことを少し睨むように見た。


「じゃあさ、僕と戦ってみない?今日暇だし、君も今暇なんだったらいいでしょ?」


「・・・」


は?なんでそうなるんだよ!?


燈哉は心の中でそう思いつつも、実際今暇であるというのは事実であり、先ほど少しこの男たちと戦ってみたいと思ったことも事実なので、とっさに断ることができなかった。


こう言う時はまず理由を聞こう。そして俺にメリットがあるのかを。


そう考えたら燈哉は数秒の沈黙の後に言われたことに受け応えた。


「俺と何が目的だ?あと俺はお前と戦っても何一ついいことがないのだが」


「別に。ただ暇だからだよ。もしメリットが欲しいっていうなら僕に勝ったらお金くらいならあげるよ」


「金か。いっておくが安い金額じゃ・・・」


「金貨50枚ってところでどう?」


「いいだろう」


のった!この国で金貨五十枚ってことは金貨四十枚ってことか。


燈哉は心の中でそう悪い顔でニヤつきながらソファから立つ。


ちなみに先ほど燈哉が五十枚を四十枚だと言ったのは、この国では何故か第八進数が公用となっているからである。


「受付嬢さん、バトルフィールド使ってもいい?」


男はそう受付嬢にむかって大きな声で言う。


「え、はい!大丈夫ですけど・・・」


え、もしかしてあの人が対人戦をするつもり!?


受付嬢はそうはっきりと受け応えるも、男の言っていることのヤバさに青ざめた。


「シュン!?あなた暇だからって一般の冒険者をいじめるなんて・・・」


「ほんとですよシュンさん!目当ての依頼が受けられなかったってだけでそんな暴挙、許されませんよ!」


二人の女も男に対し、そう言うが男は聞く耳をもつどころか変な提案までし始めた。


「なんなら二人も一緒に来なよ。久々に満足のいく戦いができると思うよ」


「ちょっと何言ってるの!?私たちまでそんな暴挙をさせるつもり?相手のあんたもちょっと考え直しなさいよ!」


は?何言ってる。せっかくの大金を貰えるチャンスを俺が棒に振るわけないだろ。


「別に俺はお前ら二人程度ならまとめて相手してやっても全然いいぞ?」


なぜか燈哉は女二人を煽るようにそう言った。


そしてその言葉はただでさえ男に少しキレていた桃色の髪の女を完全にキレさせた。


「お前ら二人程度ですって!?生意気いうような奴は実践でわからせてあげるわ!」


「ちょっと怒りすぎですよっ!」


どこからともなく杖を取り出し、今にも燈哉にとびかかひそうな桃色の髪の女を全身鎧を身に纏った女が必死に抑える。


「君、俺が冗談で言ったことを本気にさせるなんて相当実力があるみたいだね!じゃあ先にフィールドで待ってるよ!」


男はそう言うと燈哉の目の前から女二人の元に瞬間移動すると、鎧を身につけたほうの肩に軽く触れ、再び瞬間移動をしてその場から消えた。


流石に煽りすぎたか?まぁ、戦闘時は怒ってると判断は鈍るし、別に問題はないか。


そんな呑気な燈哉に途中から青ざめて無言で様子を見続けていた受付嬢が、燈哉に対して一言だけ放った。


「あなた、あの人たちがこの国の"勇者"パーティだって知ってたのよね?」


それを聞いた瞬間、暑くないのにも関わらず、燈哉の額から汗がで始めた。


「勇者って・・・」


燈哉はソロモンと昨日の会話の一部を思い返す。



「そういえば燈哉は勇者にあったことある?」


「ゆ、勇者!?な、ないけど!」


ソロモンの"勇者"というワードに燈哉は少しビビった。


「そ、そうなんだ。燈哉ほどの実力者なら会ったことあるんじゃないかなって思ったんだけどな・・・」


「そ、そうか。それよりこの国の勇者ってどんなやつなんだ?」


「えっと、名前は忘れちゃったけど見た目は普通の人だし、優しそうな人なんだよ。私もあんまり詳しくないからあんまり何とも言えないけど、一つだけ言えるのは・・・」



「"この国で最強"って言われるやつか・・・?」


燈哉はそう受付嬢に言うと無言でうなづいた。


「そ、そうか」


どうやら俺は煽る相手を間違えたらしい。


燈哉はそう言うとゆっくり覚悟を決めてフィールドへと向かうのであった。

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