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emergency

白く長い髪、うっすらと赤い瞳、年齢より少し幼く見られる可愛いい顔立ち。そんな少女が今日、冒険者協会にてニヶ月ぶりに会話をした。


スキル:影遠影我(えいえんえいが)


無条件で常に発動し、効果としては自ら声を出さない限り、姿を認識されされないというもの。


これが私、ソロモンが神に与えられたスキルだ。戦闘においては便利だが、日常生活でのデメリットが私の性格も相まってとても大きい。


事実、今日まで約二ヶ月ほど誰とも喋っていなかったのだ。たしか前に人と話した時はちょっと肩がぶつかってしまい、謝った時だった。


しかし、なんと、まさか、驚くべきことに、実は、今回はちゃんとした会話ができたのだった。




「・・・ということがあって、まさか私に気づいているなんて思ってなかったんです。本当にすいません...」


「いや、謝る必要はない。そんな事情があるなら仕方ないだろ。」


俺と違って気づかれもしないがゆえに誰とも話せないなんて辛すぎる。でも人と上手く話せない辛さなら俺でもよくわかるぞ・・・!


ソロモンのスキルの事情を聞いた燈哉は誰ともうまく話すことができない彼女の境遇に深く共感していた。そんな燈哉は募集依頼のことをすっかり忘れていた。


「あ、ありがとうございます。でも、なんであ、あなた?は私に気づけたのですか?」


「あ、自己紹介を忘れていた。名前は燈哉だ。ま、まぁ気づけた理由は、単純に戦闘経験の賜物ってやつだ・・・」


くそっ。何かしら解決策が欲しくて聞いていたに違いないのにこれじゃあ何のヒントも得られないじゃないか・・・!


燈哉は相手に深く共感するが故に申し訳なさで言葉が詰まった。


「え、ということはわざわざ私を認識するために何か魔法を使ってないということですか?」


「あぁそうだけど・・・」


申し訳なさそうな燈哉に対し、少女は燈哉に期待を寄せるような様子だった。


「い、今から隠れるので、15秒ほどでいいので目を閉じてもらえませんか?」


「あ、うん。わかった」


なんで急に隠れるんだ?もしかして俺と話すのが嫌だから俺が目をつぶっているうちに逃げようってことなのか!?


燈哉は申し訳なさ故に悪い想像をしつつも、少女の言う通り、その場で目を閉じた。



・・・12、13、14、15。


燈哉は数え終わるとゆっくりと目を開き、辺りを見渡した。

周囲をずらっーと眺めていくと燈哉から4mほど離れたところに位置する椅子の下に、その椅子の対角線上の二本の足を持って体育座りになっている少女の姿が見えた。


・・・え、どういうこと?そんな姿防災訓練でしか見たことないのだが・・・


「・・・?」


「・・・!」


燈哉が不思議そうに見る目と、自分を見つけてくれたことに気づき、驚いた少女の目が合った。


「気配消したなのに、なんでわかるの?」


「なんでって言われても、気配消しただけじゃ見えるものは見えるだろ」


燈哉はそう言うと少女のもとに近づき、その場でしゃがむと、手を差し伸べた。


「言っておくがお前が俺から隠れようなんぞ百年早い。どこへ隠れようと簡単に見つけてやるよ」


「・・・!」


ソロモンは何か希望に満ちた目で燈哉を見ると、静かに燈哉の手をとって椅子の下から出てきた。


「あ、ありがとう。自己紹介遅れちゃったけど、私の名前はソロモン。よろしく」


「お、おう。よろしく」


その後、燈哉と少女改めソロモンは互いに今までろくに話し相手がいなかったということもあり、口下手ながらも、話題が尽きなかったため、さまざまななことを話しているうちにあっという間にひがくれていたという。





「そ、そういえば、燈哉はパーティ所属してるの?」


「今日入ったばっかりだからしてない。そう言うお前こそしてるのか?正直ソロモンが誰かとパーティを組んでいるとは思えないのだが」


「そ、その通りです。どこかにパーティ組んでくれる人がいたら嬉しいな、って思ってるんだけどね・・・」


「俺も早く依頼受けたいかは誰かとパーティ組みたいんだけど、中々いい相手が見つからないなー」


二人はあまり目を合わせずに会話していた。二人はかれこれ2時間近く話しており、そしてやっと本題の話へと戻ってきていたのだ。


二人ともパーティが組めず困っていたため、すんなり二人でパーティと思っていたのだが、ここで問題発生。


俺とパーティ組んでくれなんて恥ずくて言えるか!元々実力でどこかのパーティに引き抜かれると思ってたから自ら行くなんて考えてもなかった!頼むから向こうから誘ってくれ!


私とパーティ組んでくれる人なんてその人しかいない!でも断らたらもう二度とチャンスはないし、向こうからパーティに誘ってくれないかな・・・


燈哉、ソロモンの二人とも向こうから誘ってもらえるという甘い考えがあり、一向にパーティ結成への進展がなかったのだ。


「私のパーティはやっぱり前衛職がほしいんだよな〜。そうしないと私の得意なバフ魔法を活かせないし・・・」


「そうなのか。俺がパーティ組むんだったらやっぱサポーターかなぁ〜。近接戦闘が得意な俺にはめちゃくちゃありがたいんだよなー」


「そうなんだー。見つかるといいね〜」


「ソロモンこそ相当頑張らなきゃ見つからないぞ〜」


「「・・・」」


もし誰かがこの様子を見ていたら実に醜いと思うだろう。しかし、今はもう夕方の七時ということもあり、協会内にも数パーティしか残っていなかった。


そんな時、協会内をアナウンスが響き渡った。


「本部からの緊急指令です。ここから五十キロほど離れた場所に位置する植林場でモンスターの大量発生が確認されました。報酬ははずみますので、協会内にいる方たちは直ちに受付へお越しください」


緊急指令。数人では解決できないような事態が発生した時、冒険者協会の本部から現地に一番近い冒険者協会に指令をだし、パーティ単位で取り組む依頼。報酬は通常の依頼の倍となっており、いつもならすぐに対処されるのだが・・・


「悪いな嬢ちゃん。今日はもう二つ依頼を受けて俺たちヘトヘトなんだ。」


一人の男がそう言って四人組のパーティが協会から出て行った。


すると、他の協会内にいたパーティたちも、


「いまさら五十キロはちょっと・・・」


「これから飯だって時にやる気でねぇよ・・・」


「まぁ誰かが引き受けてくれるだろ」


と言いながら次々と出ていってしまった。


「ちょっと待ってください皆さん!これは緊急指令なので、一刻を争う事態なのですよ!?」


受付嬢はそう呼びかけるも、誰も振り向きもしなかった。


「なぁソロモン、緊急指令ってなんだ?」


「緊急指令っていうのは、えっと、緊急事態が発生した時に冒険者たちに緊急で出す依頼のことだよ。報酬は通常の依頼の倍あるし、いつもなら複数パーティが同時に受けているんだけど・・・」


パーティが次々と協会から出ていき、受付嬢がなんとか呼び止まようと頑張っている姿が二人の目に映る。


「ソロモン、ちょっとこい」


「えっ!何!?」


そう言うと燈哉は右手でソロモンの右手を掴み、ソロモンを連れて受付嬢の元へと歩いていった。


「おーい。依頼を受けたいのだが、受けられるか?」


燈哉はそう受付嬢に向かって叫ぶ。それに受付嬢は驚いた反応をした。


「あ、あなたは!確か今日登録したばかりの新人さん!?受けられますが、あなた一人では危ない目にあってしまう可能性が・・・」


「いや、一人じゃないぞ?よく見ろ」


そう言うと燈哉右手をぐっと横に持ってきた。それにより後ろで引っ張られる形になっていたソロモンが燈哉の横まで引っ張られる。


「ちょっと!何で何も言わずに手を引っ張るんですか!?」


ソロモンはそう燈哉に少し怒ると、声を出したことにより、受付嬢に気づかれた。


「え、あなたまだ協会にいたのですか!?」


「あ、え、えぇ。まぁ・・・」


受付嬢が再び驚く。そんな受付嬢からソロモンは必死に目線を逸らしていた。


「おい、こいつと二人なら依頼を受けられるかと聞いているんだが?」


「あ、はい!もちろん受けられます。ただ、あなたはビギナーで、さらに今回の依頼は通常ものですので、くれぐれも気をつけてください!」


「わかった。俺らに任せとけ」


そう言うと燈哉は受付嬢から青く光る石を受け取った。


この石は転送石というもので、一つあたり金貨三枚の値段がする魔法で作られた高価な石だ。この石にはどこへでもだけワープすることができるという効力があるのだが、一回使うと壊れてしまうため、現在のような緊急事態以外ではあまり使われることはないのだ。


「行くぞ、ソロモン」


燈哉は手を握ったままのソロモンにそう言うと左手に掴んだ転送石をぐっと握った。


「う、うん。燈哉がやろうとしてること、今わかった」


そうソロモンが言った瞬間、燈哉とソロモンは空気を切るような音をしてあっという間にその場から姿を消した。


その場にただ一人残された受付嬢は先ほどの出来事を振り返った。


「・・・なんで、私止めなかったんだろう」


ぽつりと呟いた。


普通、今日登録したばかりのビギナーにこんな緊急依頼をうけさせるなんて、ましてや本来数十人体制で望むものに二人で行かせるなんて私が認めるはずもない。


・・・でも、なぜか彼ならば易々と成し遂げてしまう。そんな気がした。


受付嬢はそう考えていると、今までに会った中で同じ雰囲気を放っていた人たちを思い返した。


「騎士団長、いや、冒険者協会のトップ、ギルドマスター。いや違う。もっと上だ。この国で最強の男、勇者・・・」


だが、そう考えながら、勇者のことを思い出しながらも、さきほどの燈哉ほどの頼もしさ、強者の雰囲気は敵わなった。


「・・・何者なの、彼は?」


東の国で勇者が辞めたというニュースは世界に広く知れ渡り、彼女も勿論知っていた。だが、その男が今、他国で冒険者をやっていることは誰にも知られていなかったのだ。

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