百の名を持つ暗殺者
俺たちは、とうとうケルベロス社長を捕まえた!
ガーネットとランそれぞれに、前足を掴まれている。
そんな中でも、ケルベロス社長は笑う。
「これが、本当の両手に花。というやつかな?」
妙に余裕があるな……。
俺がそう思った瞬間!
危ないっ!
ランへ向けて、銃弾が飛んできた!
俺は超すばやく移動した! それから、発射された銃弾を確保する。
ふう、俺がチートでなければランに当たっていた……。
ランは不思議そうに俺を見て、
「勇者様、どうされましたか?」
「ランめがけて銃弾が飛んできたんだ! ほら、これ!」
「ずいぶん、太くて……固そうですね」
「死の危機に陥っても、エロキャラを貫いたー!」
ケルベロス社長は舌打ちをする。
その時ーー。
ガーネットの真後ろから、銃弾が襲う!
俺は残像を残すほど、すばやく動く!
そして、ガーネットに迫る銃弾をキャッチ!
ガーネットは首をかしげながら、
「ロアスよ。何してるのだ?」
「のんきなっ! この銃弾が、首に当たるとこだったんだぞ!」
「そうか、ごくろうであった! 貸してみろ、不届きな銃弾は余が握りつぶす!」
「鉛の弾を握りつぶす!? まさか、魔王の力が戻ったのか!?」
「ふぬぬ……。つぶれないのだっ! 太くて……固いから」
「ヤバいっ! ガーネットが、ランのエロウイルスに感染した!」
なんて、驚いている場合じゃない!
どこだっ、敵はどこにいるんだ!?
その時、俺の背後から気配がした!
ふり返ると、
「お前はめざわりだ!」
真っ黒な人間がナイフを突き出していた!
だが、俺の敵ではない!
俺は真っ黒な人間の腕を掴もうとする!
しかし、実体がなかった!
ふう、とっさにバリアーを張った。あやうく、腹にナイフを突き刺されるところだった!
俺は真っ黒な人間をまじまじと見て、
「実体がない……。お前は一体?」
「ふふふ、我が名は影男! またの名をシャドーマン、シャドーピープル、影人間、過激な影男……」
「どんだけ仮の名があるんだっ!」
「またの名を服部半蔵、風魔小太郎、百地三太夫、猿飛佐助、霧隠才蔵……」
「名前増やすのが趣味かっ!」
「影☆男、ト影、影の主役、影なのに陽キャで通ってる男……」
「一体、なんて呼んでほしいんだっ!?」
「お陰様っ!」
「まじ図々しいぞ! 調子に乗るなっ!」
「お前こそ、チートだとか調子に乗るなっ!」
「なぜそれを……?」
「社長室のモニターで見てた。ゴーレム部長との戦いぶりを、ポップコーン食いながら!」
「社長室は、映画館かっ!」
「うるさい! たとえチートでも、我にお前の攻撃は効かない!」
「剣は効かない、かもな。だが、魔法ならどうだっ!」
俺は火の魔法を発生させようとした!
しかし、脳内に貿易船が現れた!
貿易船の操縦士が言う。
「MPが無くなりました! これから、東南アジアに取りに向かいます! お待ちください!」
何日かかるんだっ!
非常にまずいっ! 敵の攻撃は拳銃だっ!
「どうした? 魔法を使うんじゃないのか?」
影の男は、俺に拳銃を向けた!
そして、引き金を引く!
脂汗がしたたり落ちる。つばも1リットルくらい飲んだ……。
もう、応援も間に合わない! 覚悟を決めた……。
その時だった!
「勇者様っ、危ない!」
うおっ! 声から察するに、背後から恐らくランがくっついてきた!
その拍子に、俺は転倒する。
俺がふり返るとーー。
「やはりラン!」
「ふふふ、抱きついちゃいました! 勇者様、がんばって!」
横向きに寝転ぶ俺の下から、声が聞こえてきた。
「はうう……、ロアスよ。余を押し潰さないで、くれ。がんばって、早く立ち上がれ!」
「す、すまんガーネット!」
俺が立ち上がった瞬間、胸に銃弾が命中した!
影男の高笑いが聞こえる。
その最中俺は、
「ちょっとチクっとしたな。だが、効かん!」
慌てる影男に俺は右手を向けた!
「光の魔法を食らえっ!」
「影の主役なのに負けたぁぁっ! 主役を失なったこの世界は、もう終わりだぞ……」
影男は浄化されて消滅した。
ふう、強敵だったな。
さすがに影の主役を自称するだけある。
俺は、ガーネットとランを見つめて礼を言う。
「ありがとう、今回は命を救われた!」
ランは嬉しそうに、
「いえ。勇者様の大事な身体が……。太くて、固い弾に貫かれなくてよかったです!」
BLに聞こえるのは気のせいか!?
続いてガーネットが、
「ロアスよっ、貸しを作ったぞ! いずれ返すのだ!」
「わかった。年末に、タオルセット送っとく!」
「お歳暮かっ! ロアスはいつも余をからかう!」
俺は大いに笑う。
平和だな。早く、街にも平和を届けないとな。




