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9 魔王様の受難は続く

「本当に良いのか?! 私を、選んでくれるのか?!」

「はい。その代わり……その、昨日が初めてで、あまり夜の事には慣れていないので、お手柔らかにして頂けると……」


 恥ずかしくなって、語尾が消え入りそうな程小さくなってしまった。でもそこだけは主張しておかないといけない。


 せめて次の日、普通に歩けるぐらいには手加減してもらわねば。ずっとベッドで寝てばかりじゃ何も出来ないから。


「其方があまりにも可愛すぎて、昨晩はやりすぎてしまった。勿論、これからはアリアのペースで、もっと優しくすると誓おう」

「はい、よろしくお願いします」

「ああ、本当に夢のようだ。アリア……」


 ベルフェゴール様がこちらに伸ばしてきた手を、傍で見守っていたヴェルディさんが容赦なくはたき落とした。


「そこまでです、陛下」

「ヴェルディ! 何故邪魔をする?!」

「公務がたまっております。執務室に戻られて下さい」

「少しくらい良いではないか。折角アリアが心を開いてくれたというのに……」

「ルシファー様より直々に、見張り役を承っておりますので、そのお願いは聞けません。アリア様の許可無く勝手に触れる事は却下致します」


 私を庇うように、ヴェルディさんは間に割り入った。


「な、なんだと?! 私と其方の仲ではないか。ヴェル、親友として今は少しくらい見逃してくれても……」

「腐れ縁なんですから、よくご存知でしょう? ルシファー様の言うことは絶対です。そしてベル、私は親友であろうと手加減しない主義だということを」

「この父上至上主義者め!」

「偉大な功績を残して下さった先王様を尊敬するのは至極当然のこと。それにアリア様も身体の調子が万全ではありません。また無理をさせたいのですか?」

「そ、そういうつもりではない」

「ああそれと、さっきついでに顔も治しておきましたんでその見苦しい包帯、いい加減取って下さい」

「何故勝手なことを?! これは自制するためにしておるのだぞ?!」

「手を出そうとした今、もはや無意味なものでしょう。その視線、少しは隠しなさい。さっきからはだけたアリア様の足下ばかり見ているではありませんか」


 そう言いながらヴェルディさんは、ベルフェゴール様の視線を遮るように、自身の着ていた上着を裾の短くなった私の足下にかけてくれた。


「すみません。ありがとうございます」

「この馬鹿を引き下がらせ、すぐにマリエッタをお呼びしますので、不便でしょうが少しお待ち下さいね」


 ベルフェゴール様を馬鹿呼ばわり。ルシファー様、ヴェルディさんに一体何を吹き込んだんだろう。


「さ、寒いだろうと思って、少し抱き寄せようとしただけだ。それくらい……」

「それくらいではすまないから、ここで止めているのです」

「ぬぅ……」


 ベルフェゴール様が、完璧に言い負かされている。そんな二人を眺めていたら、不意にこちらに話を振られた。


「アリア様」

「はい、何でしょうか?」

「包帯を巻いている馬鹿と巻いていない馬鹿、どちらがお好きですか?」


 ヴェルディさん、それは爽やかな笑顔で聞いてくる質問ではない気がします。


「それは……怪我をされていると心配なので、されていない方が良いです」


 言葉を選んで慎重に答えた。


「聞きましたか、ベル。貴方がそうやって包帯を巻いていれば、アリア様は心を痛めるのですよ。心労がたたって病に伏せられたらどうするのですか?」

「悪かった、アリア。今すぐこんなもの取り払おう。私はもうどこも怪我などしていない。だから心配する必要などないぞ」

「は、はい……」


 ベルフェゴール様が、ヴェルディさんの手のひらの上で転がされている。


「それではアリア様、駄犬はきちんとつないでおきますので、心おきなく休まれて下さい」

「誰が駄犬だ! こら、ヴェル! 引っ張るな!」


 馬鹿って言われても怒らないのに、駄犬って言われたら怒るんだ。いまいちベルフェゴール様の怒り所が分からない。


「そうですね、同意無く盛る馬鹿は駄犬以下でした。一緒にしては駄犬に失礼ですね」

「うっ……それを言われてしまえば、返す言葉も無い」

「それではアリア様、失礼します」


 優雅に一礼したヴェルディさんは、包帯を紐代わりにしてそのままベルフェゴール様を強制的に連れて行かれた。

 魔王と臣下って言うより、やんちゃな犬と飼い主に見えたのは何故だろう。親友だって言ってたし、プライベートではフランクな関係なのかもしれない。


 嵐が去った後の静けさの中で、今度は入れ替わりでマリエッタが入ってきた。


「アリア様、すぐにお着替えを! あぁ、血が……すぐに湯浴みの準備をします!」


 私の姿を見るやいなや、短い悲鳴をあげて慌ただしく準備をし始める。そういえば両手が血まみれだった事を、そこでようやく思い出した。


 こうして別の意味で食べられた私は、魔王様の花嫁となったのだった。





おしまい!

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