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7 魔王様の想い

「マリエッタ、聞きたいことがあるのですが」

「はい、何でしょう?」

「一人前の悪魔になるには、どうしたら良いのでしょうか?」


 アドバイスをもらおうと、マリエッタに尋ねてみた。


「そうですね。人が悪魔になるための一番の近道は、伴侶となった方にたくさん愛を注いでもらう事です。体液をもらえばもらうだけ、その速度は早まりますから」

「その、他に方法は?」

「一度転化が始まってしまえば、それ以外に方法はありません。なのでアリア様、くれぐれも体液をベルフェゴール様以外の方に頂いたら駄目ですよ? 転化の途中で他の方の魔力が混じれば、拒絶反応を起こして大変な事になりますから」

「大変なこととは?」

「自我を失い本能のまま彷徨う悪魔と化し、最悪死に至る事も……」


 どうやら魔王様から体液をもらうしか、悪魔への転化を終わらせる術はないらしい。


「で、では……どれくらい体液をもらえば転化が終わるのでしょうか?」

「そうですね。大体濃密な夜を一月ぐらい共に過ごせば終わるかと」

「よ、夜を一月もですか?!」


 あの激しい夜を一月も共に……想像して思わず卒倒しそうになった所をマリエッタに支えられた。


「アリア様、無理をしてはなりません。転化の始まりは身体が疲れやすいのです。一旦部屋へ戻りましょう」

「わ、分かりました」


 部屋に戻ってきて、再び横になった。あれだけの距離しか移動していないにも関わらず、身体がだるい。マリエッタが言っていたように、かなり疲れていたようで瞼を閉じるなり眠りに落ちた。



 目覚めると、左目以外の顔全体を包帯で覆ったミイラ男がベッド横に立っていた。


「ひぃ……っ!」


 思わず声にならない悲鳴をあげて布団を握りしめた。


「落ち着いてくれ、アリア。私だ、ベルフェゴールだ」


 その声は確かに昨日聞いた声だけど、左目以外の顔全体が包帯で巻かれているため顔は確認できない。こんなに包帯で覆うほどの怪我をなさっているなんて。


「あの……大丈夫ですか?」

「なに、怪我は大したことは無い。ただ少し父上と揉めてな。見苦しいかと思って巻いているだけだ。気にする必要はないぞ」


 ルシファー様の仕業だった! やはりあの後……


「それよりアリア、昨晩はすまなかった。その……私の勘違いで其方をこのような姿に変えてしまい、誠に申し訳ないと思っている」

「ベルフェゴール様、どうか顔を上げて下さい。よく話を聞かなかった私も悪いんです。だから……」

「本来なら、こちらへ贈られて来た花嫁には同意をとってから事を進めねばならぬのだ。それを私は、其方へ恋い焦がれるあまりに、自分の都合の良いように解釈し……」


 恋い焦がれる?!


 そんな好意を向けられたことなど、この十八年間生きてきて一度も無い。それに恋い焦がれられるような事をした覚えも無い。昔どこかで一度会っているらしいけど、全くそれが思い出せないのだ。


「あの……以前お会いしたことがあるのでしょうか? ルシファー様にも言われたのですが、どうしても思い出せなくて」


 失礼を承知で聞いてみると、ベルフェゴール様は優しく言葉を返してくれた。


「変装していたから、分からなくても無理はない。以前、父上にサンドイッチを作ってきてくれた事があったのは覚えているか?」

「はい、たまにルシファー様に差し入れを持って行ってましたので。手軽に食べれるだろうとサンドイッチはよく作ってました」

「その時、一度だけ部下だと言って紹介された男が居たと思うのだが……覚えていないか?」


 記憶を辿って、ある青年を思い出す。


「もしかして……ベルゴさんですか?」

「覚えていてくれたのか」

「確かあの時、私の作ったサンドイッチをとても美味しそうに食べて下さって。あんなに幸せそうな顔をして食べてくれる人、今まで居なかったのでよく覚えています」


 ルシファー様は食べてはくれるけどいつも仏頂面で、感想を聞いても『普通にサンドイッチだな』としか言ってくれなかった。いつか美味しいって言わせたくて、試行錯誤して作って持って行ってたな。懐かしい思い出だ。


 そんな中、ベルゴと紹介されたルシファー様の部下の憲兵の青年は、本当に美味しそうに食べてくれたんだっけ。


『こんな美味しいもの、初めて食べました!』


 ペロリと平らげてしまったベルゴさんの姿を見て、ルシファー様が『大袈裟な奴だな』と言ったら、『貴方はもっと、この幸せを喜ぶべきだ!』と彼が抗議してくれたんだ。


 それ以降、ベルゴさんの分もと思って少し多めに作って持って行ったりしたけど、結局会うことは出来なくて残念だったのを覚えている。


 パンから手作りでサンドイッチを作るうちに、その奥深さに興味を持って将来はパン屋さんで働きたいと思ったんだ。


 私の作ったパンを美味しいと笑顔で食べてもらえたら幸せな気持ちになる。その原点は、あのベルゴさんの笑顔だったんだと改めて思い出した。


「あれは本当に美味かった。あの味が忘れられなくて、其方の笑顔が頭から離れなくて、ずっと其方のことばかり考えていた。其方が花嫁に選ばれたと知った日は嬉しくて、天にも昇る気持ちだった」


 包帯のせいでどんな顔をされているのかは分からないけど、ベルフェゴール様はそう言って苦しそうに胸を押さえた。 


「アリア。私は其方を愛している。生涯の妃にするなら、其方しか居らぬと思っている。だが、順序が逆になってしまった。このような状態で求婚されたとしても、理不尽にしか感じられぬだろう。だから、転化を先に終わらせようと思ってここへ来た」


 そう言って懐からナイフを取り出したベルフェゴール様は、それを何のためらいもなく自身の腕に突き刺して抜いた。


「私の血を飲めば、すぐにでも転化を終えることが出来るはずだ。その後で、どうか返事を聞かせて欲しい。もし其方がこの婚姻を断ったとしても、魔神国の一員として受け入れると約束しよう」

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