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お題シリーズ3

頼りになる後輩

作者: リィズ・ブランディシュカ



 私はいま、中学三年生だ。


 だから、もういい年なんだけどね。


 びびり癖がなおらないんだ。


 友達から悪戯されたら、すぐ「わっ」って驚いちゃう。


 それにホラーとかも苦手。


 怖い話をされると、耳をふさいで「あー、あー、聞こえない聞こえない」ってやっちゃう。


 馬鹿にされたりする事もあるから、なんとかしたいんだけどな。


 で、そんな私なのに、うっかりをしてしまったみたい。


 実は忘れ物しちゃったの。

 それに気が付いたのはもう日没後。


 夜の学校に忘れ物をとりに行く事になるとは思わなかったよ。


 翌日提出する宿題だから、今日中にやっておかないといけないっていうべたな展開で、さぁ大変。


 幸いなのは、校舎に入らなくてもいいかもしれないって事かな。


 学校の敷地内。


 建物の裏手にある飼育小屋の前に置き忘れたんだと思うし。


 私、今日は飼育当番だったから。


 敷地を囲む壁を乗り越えたら、数歩歩いてすぐの場所にいるから、夜の校舎ほど怖くはないと思う。


 けど、やっぱり普段と違う学校って、想像するとちょっと「うっ」ってなる。


 はぁあ。


 憂鬱だな。


 だから、人についてきてもらう事にしたんだ。


「それで、後輩に泣きついてきたのかよ。たよりねー先輩だな」


 ちょっとセリフが辛口だけど、その子は頼りになる後輩。


 弟みたいに思っている子だよ。


 口をとがらせつつも、電話したら集合場所に来てくれたの。


「ごめんね。でもどうしても一人じゃ怖くて」

「しかたねーな」


 こうやって、一生懸命頼めばついてきてくれるからいい子なんだよね。


「あとで、飴ちゃんあげるね」

「子ども扱いすんなおばさん」


 だけど頭をなでなでしてそんな事いったら、そんな反応。


 一年生なんだけど、見た目より年下に見えるから、子ども扱いされると気にしちゃうみたい。


 おばさん扱いはちょっといらっと来たけど、こっちは頼み事している立場だから我慢我慢。


 年上は年下に寛容でいなくちゃだしね。


 それで、そんな後輩と共に夜の学校へ。


 あたりは日が暮れててまっくら。


 電灯も少ない場所だから、よく見えない場所も多い。


 だから、物陰からお化けが出てきたらどうしよう、なんてよく考えちゃう。


 がさがさっ。


「ひぃっ」


 今も近くの家の花壇がゆれてびっくり、後輩くんにだきついちゃった。


 けれど後輩くんは、冷静。「ただの猫だって」ってあきれ顔。


 本当だ。


 はぁ。


 本当に頼りになる。

 近くにいると、落ち着くなぁ。


 反対には私はすごく頼りないなぁ。

 先輩失格だよ。


 へっぴり腰のまま、目的地に到着。


 校舎を覆う壁を乗り越えて、飼育小屋の前に。


 あっ、やっぱり忘れ物があった。


 良かった。


 これで、宿題ができる。


 それを見た後輩君は「で?」と言って来た。


 私は「ん?」という顔をする。


「どうせ宿題が分からずに後で泣きついてくるんだろ? もう手間だから、そこら辺の喫茶店で問題の解き方教えてやるよ」

「えっ、いいの?」

「ついでになんかおごれよな」

「うんうん」


 やっぱり本当に頼りになるなぁ。


 私は後輩くんの面倒見の良さに感激してしまった。


「ありがと~大好きだよ」

「ちょっ、だから子ども扱いして抱き着いてくんなって」


 あれ、いつも冷静なのにちょっとうろたえてる。


 不意打ちだったからかな。


 うーんそれに、女の人に抱き着かれてるところ見られたら恥ずかしいのかも。


 近くを会社帰りのサラリーマンが通っていったし。


 なんだ、年相応な所もあるんだな。


 私はさっきまでの怖さを忘れて、ニヤニヤ顔で後輩君を見つめる。


「女に抱き着かれて照れてるわけじゃねーっての。お前だからだよ。ったく鈍いんだから」



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