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更正王女様シリーズ

更正王女様7歳が参る!

作者: 秋月煉

お読み頂きまして、ありがとうございます!

昔むかし。ある国に、知恵の神様から加護を頂いた、大変賢い王女様がおりました。

その王女様は、問題児を更正させた事により、皆から、畏敬と尊敬を含めて、更正王女様と呼ばれておりました。

これは、両親と、年の離れた兄王子様たち、家族や周りに溺愛された、一人の立派な王女様の、初めて主催した、お茶会でのお話です。



◇◇◇◇◇



皆様、ごきげんよう。この国の姫、ティナリアと申します。今年、無事に7歳になりましたの!

王家では、姫が7歳になると、近い年頃のご令嬢を呼んで、お茶会を開催するのです。下は5歳、上は10歳までの子供たちが対象です。勿論、主催は私が行います。

会場は、王城の庭ですわ。美しいバラが咲き誇る、お母様自慢の南の区間ですわ。本当に綺麗なんですのよ? 今は季節の薔薇が綺麗ですの。

初めての主催者なので、お呼びするのは、伯爵家より上の方々のみです。しかし、実を言えば、私に近い年頃のご令嬢は、とても少ないのです。お兄様たちの頃が多かったようで、私の辺りでは少ないと、お母様が教えて下さいました。仕方ありませんわ、こればかりは。私、末っ子ですもの。上にはお兄様ばかり、7人もおりますのよ? 勿論、皆、仲良しですわ! お兄様の婚約者の皆様も、私、大好きですわ。優しい方達ばかりですもの。

さて、今回お呼びするのは、全員で8名ですの。公爵家からは2名、侯爵家からは3名、伯爵家からも3名ですの。残念ながら、皆様、私よりも年上の方ばかり。伯爵家の方と、侯爵家の方が私と同い年だそうです。確か、3番目のお兄様の頃は、ご令嬢だけで、50名くらい居たそうですから、本当に少ないのですね。

・・・・・。

そういえば、お兄様たちは、婚約者探しに大層苦労されたと、お話で伺いましたわ。皆様、大恋愛をした、らしいと聞きました。私にはまだ早いと教えて下さいませんの。失礼ですわ、もう7歳になりましたのに!


・・・・・ゴッホン。

さて、準備万端! 今日は朝から、ずっと楽しみでしたの♪ やっと、お友達が出来ますのよ! 次回からは、伯爵家以下の皆様を呼んでやるのが伝統ですから、私も楽しみですわ!

そうして始まったお茶会は、穏やかで、楽しいものになりましたわ! 皆様、年上の方ばかりですが、話題が豊富で楽しかったですし、同い年の伯爵令嬢の子が、本が好きだそうで、色々と教えて頂いて楽しかったですわ。皆様と仲良くなれそうです♪

お茶会は、お昼前に終わるのがしきたりです。名残惜しい、そう思っていた矢先。

・・・・・デジャブを感じましたわ。

廊下の辺りが騒がしいのです。今日はお茶会とあって、警備は普段よりも厳重なはずですわ。

何でしょう? 私、初めての場合、何か起きるのは、決定事項なのでしょうか・・・・・?

あの5歳のデビューの事が、妙に思い出されます。

まさか、ねぇ・・・・・?

そして、騒がしい原因が、一団となって近付いてきます。警備はどうなっているんでしょうか?? 今日の警備担当責任者に視線をやれば、明らかにお怒り顔でしたわ。うっかり見てしまったらしいご令嬢の一人が、顔を強張らせてしまいました。申し訳ない事をしましたわ。彼女、かなり気弱な方ですのに。

全く、今日は楽しいお茶会でしたのにっ! 一体、誰なんですの!?

イライラしながら、騒がしい方を見れば、やっぱり、デジャブを感じましたわ。数年前にも、ありませんでしたかしら・・・・?

一人のご令嬢に、複数人の御子息が、守るように付き従っているように見えます。向かっているのは・・・・・公爵令嬢の席。確か、10歳になるエリザベス様ですわ。公爵家の末っ子で、公爵様が溺愛されているそうです。でも、教育はしっかりされていますし、我が儘も言わない笑顔の素敵なご令嬢ですわ。彼女も、理由が分からないらしく、首を傾げています。はうっ! 可愛い過ぎますわ!

・・・・・危うく、変なものに目覚めかけましたが、私は王女です。場の責任者として、しっかりしなくては!


「あなたが・・・「エリザベスっ! 貴様っ、ここにいるハンナ嬢を苛めただろっ!?」た・・・」


私の言葉をぶったぎり、斜め上の会話を始めた御子息様。辺りは勿論、顔面蒼白ですわ。何故か、子息達と一緒にいるご令嬢は、涙目なのが、気になりましたわ。

・・・・・ところで私、王女ですわよね? 主催者、ですわよね・・・・・?




自国の王女の言葉を、ぶったぎるなんて、ウフフ・・・・・。どんな躾をしているのかしら・・・・・?




「イネス、本日の警備が手緩いのではなくて?」


私の言葉に、責任者たるイネス副騎士団長は、ピシッと敬礼をしました。声がしたからか、彼らはようやくこの場がどういうものか、気付いたらしいですが、遅いですわよ? 逃がしませんわ! ご令嬢は、真っ青で必死に頭を下げています。が、逃がしませんわよ?


「申し訳ございません、第1王女殿下、この責は如何様にも」


「そう、貴方には怒ってなくてよ、でも次はなくてよ?」


暗に、今回は見逃すと言えば、僅かに驚いていました。恐らく、高位の御子息だったために、止めきれなかったのでしょうが、今回は悪手でしたわ。その辺り、お兄様に相談しておきましょうか。


「さて、皆様? 私は、皆様を呼んでおりませんが? 一体、誰の許しを得て、ここに居るのです?」


私に気付いた何人かは、顔色を変えています。恐らく、私が何と呼ばれているか、気付いた人達でしょうね。ま、逃がしませんけれど。


「も、申し訳ございません! 我々は、こちらにいるエリザベスに用がありまして・・・」


あら、この方。自分よりも高位のご令嬢に対して、敬称を使いませんでしたわ! 一体、どういうご教育を受けたのでしょうか? 通常は、どこそこ家の誰々嬢というのですけれど・・・。

年頃は、末のお兄様くらいかしら? エリザベス様よりも、少し年上みたいですが、確かこの方は、侯爵家のようやく生まれた御嫡男でしたわよね? 貴族名鑑の最新刊に記載がありましたわ。次の次にあるお茶会で、男性諸君も呼ぶ予定でしたが、彼は呼ばない方が良さそうですわね。確か、私の年に近い方々しか呼ばないとか言ってましたし。


「イネス、彼らのご両親を全員、緊急で呼んできてちょうだい、話になりませんわ」


結局、お茶会はお開きになりましたわ。この楽しい時間を潰したんですもの。しっかりと、八つ当たりはさせて頂きますわ!



◇◇◇◇◇



場を移し、別室へと移動します。ここには、御嫡男達おバカとハンナ嬢、エリザベス様、更には各家の御当主様方、御夫人方が来ております。まさか、30分程で全員が来るとは思いませんでしたが。イネス副騎士団長は、一体どうやって集めたのかしら・・・?


「姫様、火急のお呼びだしと伺いました!」


私のところへ跪かんばかりの勢いで、公爵様は来ました。あら? 事情は説明してませんの? 確認するために、イネスに視線を向ければ、サッとそらされました。つまりは、集める事にだけ、集中したと?

・・・・・後で騎士団の事を、お父様に相談すべきですわね。

仕方ありません、巻き込まれた以上は、きちんと説明しましょう。話が進みませんもの。


「皆様に来ていただいたのは、他でもありません、私主催のお茶会を、彼らに邪魔をされたのですわ、エリザベス様に何やらおかしな事を言っていましたし」


それには、男性側の両親諸君が、ぎょっとして我が子を見ています。えぇ、我が子が非常識だと知ってしまったのですから、当然でしょう。これには、同情致しますわ。ご両親は社交界でも評判の、しっかりした方々ですもの。ご夫人に至っては、目眩がしたのか、倒れてしまった方もいますし。


「ーーーーーエリザベスに、何を言っていたのでしょうか?」


穏やかに、けれども、明らかに目が笑っていない、そんな笑顔のエリザベス様のお父様である公爵様。えぇ、私も分かりますわ。全く理解不能ですもの。


「ご説明下さいませ? 私も意味が分かりませんのよ? そちらのご令嬢を苛めた、でしたかしら? 糾弾するのは勝手ですが、私主催のお茶会を邪魔したんですもの・・・・・立派な理由がおありなんでしょう?」


そう、不愉快であると顔に出して告げれば、乱入した青年達は、顔色が悪いですが、そんなのは私が知った事ではありません。


「・・・あ、あの、こちらに居るハンナ嬢より、エリザベス様に苛められたと、相談を受けたのです」


何とか、侯爵子息が言いましたが、明らかにおかしいですわね?


「失礼ですが、ハンナ嬢? 貴方は何処の家の方かしら?」


そう、私、彼女を知らないのです。次に呼ぶ方々は、子爵令嬢と男爵令嬢です。歳は今回と同じ条件ですから、人数は15名程。何せ、派閥関係なく呼ぶとはいえ、私は末っ子なため、どう頑張ってもこれ以上は増えませんわ。


「・・・わ、わたくしは、男爵家の娘で、ハンナ・ロックデンと申します、男爵家の長女ですわ」


真っ青になりつつも、きちんと礼儀に乗っ取ったカーテシーをした彼女ですが、確かロックデンには娘は彼女だけでしたわね。末っ子で甘やかされているとは聞きましたが、こうして見ると、礼儀は弁えていますわ。余計に、彼等との接点が分からないのですが。


「そう、男爵家の・・・ところで貴方は、彼の子息に、公爵令嬢に苛められたと訴えたとあるけれど?」


「申し訳ありません! 全部、誤解なのですっ!」


あら・・・?? 彼女、一気に涙目になりましたわ。こう、苦労が顔に出ておりますの。どういう事でしょう?


「聞いて頂いても、宜しいでしょうか・・・?」


彼女のどんよりした姿が気になりましたわ。何だか、誤解があるのですわよね? 私が頷くと、彼女は話し始めました。


「私、あの日、小さな段差に躓いて、その場を侯爵子息様に助けて頂いたのです、それには感謝しております、しかしっ!」


んんっ? 何でしょう? 一気に迫力が増したような・・・??


「それからと言うもの、彼の方は、私を見つける度に話しかけてくるようになりまして・・・、最初は気遣って下さっていると思えましたが、知らぬ間に名前で私を呼び始めますし、何度も婚約者様に誤解されますよ! と、遠回しに言っても通じませんし、婚約者たる公爵令嬢様と話している時に、見当違いな言い掛かりを公爵令嬢様につけますし! 私、ちゃんと婚約者がおりますのに、彼には誤解されますし・・・! 私、男爵家なのです、家には迷惑をかけたくないし、でも逆らえないのですよ!? 相手は侯爵子息様ですもの! いい加減にしろっ! と、何度言いたくなったか!」


・・・・・。

ハンナ嬢、余程、溜め込んでいたのでしょう。話し終わる頃には、淑女にあるまじき、肩で息をしてましたわね。大丈夫かしら? そして、男爵家当主様、頷いてますが、日より見な方だと聞いてますわよ? まぁ、ご子息の皆様は、驚愕してますし、ご家族に至っては、頭を抱えていらっしゃいます。ご令嬢から、ストーカーまがいの話をされているわけですからね。


「エリザベス様は、知っていらっしゃいますの?」


確認の為に、エリザベス様に聞いてみたら、知っていたらしく、頷かれました。


「えぇ、彼女から、相談を受けておりましたわ、でも、話そうとする度に邪魔をされまして、まったく話せませんでしたが」


これ、悪いのは、侯爵子息達ですわよね・・・・・?? 明らかに、人の話を聞いてませんわよね? そういえば、私のお茶会の時も、周りに気付いてませんでしたし。

あ、ご両親が残念なものを見る目で、ご子息を見てますわ・・・。


「これは、非はご子息方にありますわね? ご令嬢はかなり、弱い立場にいますし、何よりも、遠回しにでも、注意はされてるみたいですし」


本来ならば、きちんと調べてからなのですが、私のお茶会が失敗したなんて、噂でも流れるのは許せません! それに、エリザベス様とハンナ嬢、明らかに敵対心なんてありませんもの。あるのは、同士? とかの連帯感かしら? 決して、恋敵の感じではありませんわ。


「・・・・・さて、お話し合いと参りましょうか?」


ニッコリ、素敵な笑顔をご子息の皆様に向けたら、何故か、ビクッとされました。罰を与えたら、家単位の処罰になってしまいますもの。当主の皆様が可哀想ですわ。ですから、私からの説教といきましょうか。これならば、問題ございませんでしょう?

しばらくの間、社交界で笑い者になるだけ、ですわ。前にお説教した方々は、噂を払拭すべく、真面目に頑張っていらっしゃるそうです。この前、親御さん方から、大変感謝されましたわ。因みにですが、先のご令嬢一人は、修道院にいるそうです。真面目に、修道院でお勤めを受けていらっしゃるそうですわ。もう一人は、城の下女として、頑張っているらしいですわ。


「親御さん方が見守って下さいますもの、ちゃんと受けられますでしょう?」


そう言ってやれば、彼らはビクッとした後、親御さんを見て、顔を青ざめさせていきます。ウフフ、親御さんに見守られて、お説教を受けるのです。年下の私に!(笑)

・・・・・親御さんの腹筋は大丈夫かしら?

まぁ、これにて、一件落着かしら?



◇◇◇◇◇



この後の話をしましょう。姫君にお説教されたご子息方は、案の定、しばらくの間、社交界で笑い者にされてしまい、心を入れ替えて、真面目に過ごしたと後の歴史書には記載されていますが、侯爵子息の夫人の名前がエリザベスであったことから、二人の婚約は続いたと見られています。ただ、公爵家には頭が上がらなかったらしく、定期的なワインの贈り物の記載が残されています。なお、ハンナ嬢含むお茶会に出席したご令嬢方は、大変仲良くなったようで、晩年までの手紙が今も残されています。

因みに、ハンナ嬢は周りの協力を得て、無事に大好きな婚約者と結婚できたと、男爵家に残された日記には記載されているそうです。

こうして、更正王女様の波乱のお茶会は幕を閉じたのでした。因みに、次のお茶会は大成功し、その次も成功したことから、王女様は大変喜ばれたと、歴史書には記載されています。

読了お疲れ様でした!

久しぶりの短編小説です。嬉しい事に、降りてきてくれました!

此方には、他のシリーズもあるので、楽しんで頂けたら幸いです♪

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[良い点] 次は王女さまの卒業パーティーでやらかしたヤツらの更正でしょうか。 結婚式でも出てきそうな気がします。
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