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ドラゴンとの追いかけっこ。

「ドラゴンだって?」

 よく見てみると黒いドラゴンが檻の中に閉じ込められていた。

 ドラゴンはぐっすりと眠っているようだ。


「信じられない。ドラゴンを捕まえてくるなんて」

 ドラゴンは普通に捕まえられる魔物ではない。それが目の前にいることへ大きな衝撃を受けた。


 どうやらモリヤは本当にドラゴンを捕まえたらしい。


 冒険者ギルドの前でコンドルの槍のメンバーとモリヤが手を振っているのが見える。

 世紀の一瞬に立ち会っている気分になる。


 コンドルの槍のメンバーがモリヤにドラゴンの檻の鍵を仰々しく渡す。

 モリヤは聴衆に盛大に手を振りながら満面の笑みを浮かべていた。


「このドラゴンはコンドルの槍が救護院のために捕まえ寄贈してくださいました。今まで回復薬を私一人で作成するのには限界がありましたが、これで回復薬を多く作ることができます。これも神様の思し召しです」


「聖女様! 聖女様! 聖女様!」


 冒険者ギルド前で聖女様コールがあがる。

 その声に反応したかのように、ドラゴンがピクリと動く。


 どうやって捕まえたのかわからないが、なんだろう。

 すごく胸騒ぎがする。よく見ると、ドラゴンには怪我をしているところが一つもない。

 もしかして、スリープの矢とかで寝かしつけているだけなのか?


 スリープの矢は眠っている魔物に対して使われる矢で、睡眠状態をさらに深くさせることができる。通常であれば1日~2日くらいは寝たままにさせることができるが、ドラゴン相手ではどうなのか。


 元々眠っていた相手であればスリープの矢は効果が絶大だが、かなり問題がある。

 ドラゴンが起きた時に檻が耐えられるのかという問題と、怪我をしていないドラゴンを街の中に入れるリスクだ。


 寝て目が覚めたらいきなり、街の中にいるなんてことになったらドラゴンだって大暴れする。

 しかも、戦いに勝って服従させたわけではなく、眠らせて捕まえてきただけだったら、完全な状態で街の中に解き放つことになるのだ。


 ドラゴンが目覚めたら大変なことになる。

 彼らは非常に頭のいい魔物だ。


 個体によっては人の言葉を理解するものもいるという。

 不安が徐々に大きくなっていく。


 そして、モリヤが檻に近づき、ドラゴンの頭を杖で叩く。

「みなさん、ドラゴンは怖いものだと思っているかも知れませんが、このようにコンドルの槍は完全に眠らせてしまっています。どうか、コンドルの槍の方々にも盛大な拍手を送ってください」


「コンドル! コンドル! コンドル!」

 モリヤは満足そうにその喝采を見ていたが、その民衆の声の大きさによって、ドラゴンが目を覚ます。そして、一瞬のうちにドラゴンはその大きな口をあけて檻を噛みちぎった。


「うっわぁぁぁ! 話が違うじゃないの! コンドルの槍、私を助けなさい」

「聖女様ご安心ください。私たちコンドルのやにぎゃ……」


 コンドルの槍のリーダーの槍使いレオがふっ飛ばされ戦闘不能になる。

 

「にっ逃げろ―!」

 一瞬で広場は地獄とかした。


 ボールデンがモリヤの前にでて盾を構えるが、一瞬で薙ぎ払われる。

「ボールデンさん!!」


 まだかろうじて意識はあるようだが、このままでは街が滅んでしまう。


 ドラゴンは完全に檻からでると、僕たちの前で大声で唸った!

「ガオォォォォ―」


 その声を聞いて動けなくなる者が多い中で、コンドルの槍の弓使いがドラゴンに向かって弓を放つ!さすがS級パーティーだ。


 だが、その矢に気が付いたドラゴンは羽で風を巻き起こすと矢はあっけなく落とされた。

 ドラゴンが弓使いをにらみつける。弓使いは一目散で逃げ出した。

 

「みんな早く逃げろ!」

 住民がどんどん避難して行く中で聖女は未だにドラゴンの側で動けずにいる。

 他に動けそうな人はいない。僕が助けなきゃいけない。


 ドラゴンが大きな足を踏み出し、聖女を踏みつける。

 聖女がギリギリのところでかわすが、足を踏みつけられ、大きな声で叫び声をあげる。

 

 ダメだ、あれではもう走れない。

 なんとか僕の方に注意をひかなければ!


 今までだしたことのない大きな声でドラゴンの注意を自分の方へ向ける。

「ドラゴン! こっちだ! 僕が相手になってやる!」


 だが、無策で勝てる相手ではない。

 剣で切りかかるか?


 いや、そんなのは時間稼ぎにもならない。

 S級槍使いのレオが吹っ飛び、ドワーフで盾使いのボールデンさんも一発だった。


 ただ、さっきの弓矢は刺さらなかったけれど、注意をひくことはできていた。

 僕も何かを投げれば……。


 あたりを見回すも手ごろな武器になりそうなものはない。

 剣は……最後まで戦うことを考えたら今は投げられない。


 なにか投げられるものは……そう考えたとき、手元にあったのは回復薬だった。

 僕の回復薬くらいでは、ドラゴンの回復もたいしたことはない。

 なら思いっきり投げつけて注意を引くだけ引こう!


 助走で勢いをつけ、ドラゴンの顔めがけて回復薬を投げつける。

 回復薬は高速で回転しながらドラゴンの顔面へ近づく。


「当たれー!」

 だが、顔に当たると思われた回復薬はそのまま、ドラゴンが大きな口をあけたことにより飲み込まれてしまった。


「ん? 意外と美味いな……あと引く味だ、もっとよこせ」

 

 ドラゴンがしゃべった!?

 ドラゴンが僕の方へ向かって走ってくる。


 よくわからないけど結果オーライだ。

 僕は自分の足に回復魔法をかける。

 回復魔法で体力の消耗を抑え、限界以上に走ることができる。


「ドラゴンついてこい!」


 街の外へでる途中でリリが僕を見つける。

 一瞬驚いた顔をしたが、すぐに並走してくる。


「パック、ずいぶん楽しそうな追いかけっこしてるじゃない。私も混ぜてよ」

「リリ! ふざけてる場合じゃない! 僕から離れるんだ! 僕はできるだけこの街からドラゴンを遠ざけるから」


「はぁ……パック、私を舐めないでよね。ドラゴンごときに追いかけられたからってパックを諦めるわけがないでしょ!」


 リリは走りながら、真空刃をドラゴンに向けて放ち挑発する!

「やーい! 短足トカゲ! できるもんなら追い付いてみな」


「リリ! なんてことするんだ! そんなことしたら君まで狙われてしまうじゃないか!」

「パック、いい加減諦めたら? 私は死ぬまであなたと一緒にいるって決めたの。私が諦めが悪いの知ってるでしょ?」


「あぁ! もうわかったよ。一生一緒だ」

「えっ……パック、それってプロポーズ? ねぇちょっと!」


 僕はリリの質問には答えずに、思いっきり走る。

 なんとかリリを連れて逃げなきゃ。 

 

 リリは体力があるけど、念のために回復魔法をかける。

 範囲魔法のラングヒールだ。


 ラングヒールは自分を中心にパーティーメンバーを回復させることができる。

 ただ、効果範囲はかなり狭く、一度に数人しか回復できないという欠点はあるけど、それでも回復し続けられるのはかなりのメリットと言える。


「ありがとうパック。これでかなり速く走れるわ」


 実際に足が速くなったり、体力を上げたりするわけではない。

 だけど、疲れないというだけで、常に短距離を走るように全力を走れるようになるのだ。


 僕たちは街の門を抜け、草原を抜け、山の中に入った。

 ドラゴンはゆっくりと俺たちの後をついてくる。


 飛んで襲えるはずなのに、なかなか襲ってこないのはきっと、僕たちをいつでもなぶり殺しにできるという余裕なのだろう。


 僕たちはできるだけ、街を離れ、他に迷惑をかけないところまで走り続ける。

 それから、約半日。


 あたりはすっかり夜になっていた。

 いまだにドラゴンは僕たちを追いかけてくる。


「リリ、この辺りってどこだかわかる?」

「ごめん、パック。多分、深闇の森まで来ちゃったんだと思う」


 深闇の森は昼間でも暗く、入った人は迷ってでてくることができないと言われている。


「そうか、じゃあそろそろいいかな」

「そうね、ここから街に戻るなんてことはしないと思うわ。それにしても、ドラゴンもわざわざここまで付き合ってくれるなんて律儀ね」


 僕たちは走るのを辞めてドラゴンへ向き合い剣を構える。


「変な話だけど、ここまで襲わずについて来てくれてありがとう。ただ僕たちも何もせずにやられるわけにはいかないからな」

「私たちあなたを倒して幸せな未来を手にいれるわ。だから、例えどんな手を使おうとも生き残るわ」


 一定の距離をあけドラゴンが僕たちに話しかける。

「暗い森怖い……」

 黒い大きなドラゴンは両手を前で交差させ、自分を抱きしめるように震えていた。

 

ドラゴン「森が暗くて怖いよー火つけていい?」

パック(なんて答えるのが正解なんだ)

ドラゴン「火をつけて欲しくない人は下の☆をいれてくれ」


少しでも面白かったら下の☆の入力をお願いします。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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