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リリの熱い言葉

「さぁ今日は飲むわよ! 私のおごりだから安心して飲みなさい!」

 リリはそう言いながらジョッキのエールを僕に2つ渡してくる。


「わかったよ」

 僕はエールを2つともキンキンに冷やして1つをリリへ返した。

 これは回復魔法の応用で、小さな頃に覚えた魔法だった。

 回復術師は上位になると、取れた腕でもくっつけることができる。


 でも、そのためには、腕を冷やしておいた方がくっつく可能性があがるというのが、回復術師協会で発見されたのだ。


 誰が最初に冷やすことを思いついたのかは知らないが、これは大発見だった。

 その為、回復術師はこのアイスの魔法を覚えている人が多い。


 もちろん、世界に数人しかいないと言われている最高クラスの回復術師は、なくなった腕でも生やすことができると言われている。


 実際には僕も見たことはないので噂でしかないけど。


 僕も立派な回復術師になるためにアイスの魔法を覚えたが、今はリリのエールを冷やすためにしか使われていない。


「それじゃあ! かんぱーい!」

 リリはグビグビと一気に飲み干す。


「おばちゃん!もう2杯お願い追加で! いやーやっぱりパックのアイス魔法はすごいよ! 普通こんなに早く冷えないもの。みんなゆっくりか温いままだからね」


 僕はまだ飲み終わっていないが、リリはいつも僕の分も頼んでくれる。


 そして、必ず僕の魔法を褒めてくれるがアイスの魔法なんて誰でも使える。 

 一度街に賢者と呼ばれる人が来ていた時なんて、酒場の樽全部に一瞬でアイスをかけていた。


 僕には到底あんなマネできない。


「パック大丈夫か? なんか今日はいつも以上に落ち込んでいるようだけど」

「ごめんね。いつも気を使わせてしまって。ちょっと仕事でミスをしてしまってね。救護院でやっていく自信がなくなっているんだ」


「そうなのか。詳しく話してみな。私でできることがあるなら協力するし」


 僕は具体的な本数などは伝えずに、失敗してしまった内容をリリに伝える。

 そして、結果的に雑用も失敗してしまったことも。


 リリはずっと黙って僕の話を聞き、時に頷き、時に共感して、上手く話を聞きだしてくれた。


「そうか。パックはいつも頑張り屋だし、努力しているのも私は知ってるよ。だけど、そんなに辛いなら逃げてもいいよ。いつも一生懸命で、自分の力以上に頑張ってしまうけど、別に失敗してもいいんだよ。失敗から学べることは沢山あるし、ジャンプするのには一度かがまなければいけないように、高く飛ぶためには休んだり、悩んだり、失敗することも必要なんだから」


「でも……」

 僕が話そうとするのを止めて、さらにリリは話を続ける。


「でもじゃない。私はパックに一度命を救われているの。その時に私はあなたについて行くって決めたのよ。だから、あなたはどこにいても一人じゃないの。もっと自分をさらけ出していいし、辛い時には今日みたいに話してくれていい。ゆっくりでいいんだよ。一度きりの人生なんだから、途中で諦めてもいいし、今まで頑張って来たんだから。それに、もしダメなら一緒に冒険者になりましょ。私かなり強くなったのよ」


 リリは僕のことを優しく抱きしめる。

「大丈夫。あなたには私がついている。どんなことがあっても私はあなたの味方だし、あなたの行く先がどんなに険しい道でもついて行くわ。だって私は誰よりも強くて、そして剣に愛されているんだから。パックを守るくらいなんでもないわ」


 だんだんリリの声が小さくなっていく。


「私……守れるくらい強くなれたよ。それはあなたがいたからだよ。あなたの素晴らしさは私が一番わかってる。そんなに辛いなら辞めて一緒に冒険者でもやろうよ。私実はね……あなたのためにね」


 リリは身体を少し離し、リリの額を僕の額にぶつけてくる。

 顔が赤い。言葉も繰り返しが増えてきている。


「ぎもぢ悪い」


 そしてリリの頬が一瞬膨らむ。


 今日はだいぶ早いみたいだな。

 僕はリリに解毒の魔法キュアをかける。

 リリはお酒をハイペースでいつも飲んでしまうのだが、その分酔うのも早い。


 酔うと色々熱い話をしてくれるのだが、だいたい、すぐに吐きそうになるので、僕が酔い止めのキュアをかける。


 それにしても、冒険者か。回復術師を自分から辞めるつもりはないけど、それでもリリが一緒にいてくれるなら、それもいいかもと思ってしまう自分がいる。


 このまま迷惑をかけ続けるくらいならいない方がいいのでは?

 リリがもう一度エールを頼もうとしていたので、いったんストップしておく。


 お酒はほどほどが一番だ。

 それに、僕はお酒に酔うことができない。


 正確には毒が効かない体質になった。

 僕が回復術師を目指した理由の一つに、村で毒蛇や毒草を誤って食べてしまう人が多かったのがある。僕はできるだけ村人を毒から守りたかった。


 毒を回復させるにはキュアの魔法がある。

 でも、どんな毒でも回復させることができるわけではなかった。


 ポイズンドラゴンの毒などにはキュアをかけても毒の進行速度が早く死んでしまう場合が多い。

 キュアの回復速度をみんな考えていないが、実は毒を回復させるためには速度と、あと魔力の持続力が必要になる。


 そこで僕はまずは、自分の身体を毒に強くするために色々な実験をすることにした。

 最初は身近にある毒草を少し身体に貼ってみて、かぶれた皮膚をキュアで治すところから始めた。


 そして治せたら少し食べて見てキュアをかける。

 それを繰り返していき、次の段階では毎食毒草をサラダに入れて食べるようにした。

 毒草の苦みも慣れてくるといいスパイスに感じるようになった。


 そして最後は毒蛇、ポイズンドラゴンの毒、毒海竜……ありとあらゆる毒を少量ずつ摂取してみた。途中何度か全身が痺れ、呼吸も苦しくなったりして、生死の境をさまよったものもあったけど、何とか毒を制することができるようになった。


 今では僕の身体は常時キュアを発動することができるようになり毒系統はほとんど効かない。

 そのため、リリとお酒を飲んでもあっという間に分解されて酔えなくなってしまった。


 まぁ酔って毎回吐きそうになるリリがいるから、どのみち深酒はできなかったけど。

 その分他の人にキュアをかけて毒を治すのは得意になったからいいんだけど。

 

 それからしばらくして、リリが眠いといいだしたので背負って寮まで送り届けた。


 僕は眠っているリリに声をかける

「いつもありがとうね。リリがいるから僕は頑張れるよ」

 リリはムニャムニャ言っているが本当に可愛いな。

リリ「もっと飲むにょ」

パック「ほどほにね」

リリ「私の酒が飲めないなら下の☆をいれないさい」


応援ありがとうございます。

もし、少しでも面白いと思いましたら★を入れて頂けると嬉しいです。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
[一言] 毒ドラゴンではなくポイズンドラゴンの方がいい
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