モンセラットの留置所
領主の家を後にしてから僕たちはそのまま一端街をでることにした。
「パック、ロイドさんが言っていたマッシュってこないだの盗賊だよね?」
「そうだね。彼に聞けばどうしてこうなったのかもわかるはずだよね」
「ノエル村に置いて来た盗賊たちだよな? もう殺されているんじゃないのか?」
「わからないけどね。ドラ悪いけど乗せてくれるか?」
「フッ……ついに俺の有能さを認めるようになったんだな」
「あぁ。頼むよ」
僕たちは、街から少し離れたところまでやってくると。ドラに元の姿に戻ってもらう。
ドラの姿は何度見ても大きくて、カッコイイ。
本当は恐怖の対象でしかなかったんだけどね。
僕はドラに優しく触れる。
「ドラ?」
「なんだパック?」
「カッコイイね!」
「バッ……バカ! 恥ずかしいことを言うな……でもありがとう」
「ちょっと! 2人だけで何盛り上がってるのよ! 私だって……私はパックの方がカッコイイと思うよ!」
「リリ……」
僕はリリの可愛い目を見つめる。
リリは一瞬目を合わせたがすぐにそらしてしまった。
「口に青のりがついてるよ」
リリはそのまま溜めなしの無動作で僕の肩に拳を放ってきた。
避けられず、思わず身体をクの字に曲げる。
「もうパックなんて知らなーい」
「相変わらずパックは……」
ひどすぎる。今から街に行くから教えてあげただけなのに。
それともあれか? 領主に会う前に言ってあげなかったからこんなに怒っているのか?
僕は回復薬を取り出し一気に流し込む。
本当に、リリのツッコミは危ないんだからな。
「それじゃあ気を取り直して行こうか」
「それでどこへ行くんだ?」
「ノエル村に置いて来た盗賊は距離的にモンセラットへ連れて行かれたはずだから、モンセラットだね。できるだけ長居はしたくないから用事を済ませてさっさと戻ってこよう」
「前に騒ぎを起こしたからちょっと離れたところに降りようね」
「よし! それじゃあ背中に乗るんだ」
僕たちはドラの背中に飛び乗る。
ドラは僕たちがしっかりと捕まるのを確認すると空高くへ飛びあがる。
あっという間に地面が遠くなり、空に浮かぶ雲が近づいてくる。
「すごいねパック!」
「本当だね。リリあれを見て!」
「わぁーすごい!」
地上には緑色の絨毯がどこまでも広がり、遠くには綺麗な青い海が見える。
遠くにある山脈でさえ、小さな丘のように思えてしまう。
そして空には色とりどりの鳥や魔物が飛んでいた。
「空から見る地上ってこんなに綺麗なんだね」
「本当に。こんな景色を見られるなんて思ってなかった」
「パックとリリが見たいなら、いつでも連れてきてやるぞ」
「ありがとう。ドラ」
僕はドラの鱗を優しくなでる。
ドラは首をくすぐったそうに動かしている。
僕たちは空の散歩を楽しんでいるとあっという間にモンセラットが見えてくる。
「ドラ、そろそろ下に降りようか」
「あぁ。わかった。近くに他の人間がいないか一応気をつけて見ててくれ」
「はいよ」
ドラは街道から少し外れた森の中にゆっくりと着地をしてくれた。
僕たちが降りるとドラはまた小さなドラゴンへと姿を変え、俺の頭の上にやってきた。
「ちょっと休憩するから。あとはパック頼んだぞ」
「あぁありがとう。本当に助かったよ」
そこはモンセラットから歩いて30分くらいのところだった。
「よし、それじゃあ行こうか」
「うん」
僕たちは急いでモンセラットへ向かい、そこから街の犯罪奴隷が収容されている収容所へ向かった。収容所は中に入って城壁のすぐ側にある。堅牢な石で作られた施設でかなり大きい。
それだけこの街や近くでは犯罪者があとをたたない証拠でもある。
僕たちはまず、受付に行きマッシュがここに収監されているかを確認する。
受付には簡易の武装をした兵士の人がいた。
「すみません。ちょっとお聞きしたいんですがここにマッシュって盗賊は収監されていますか?」
「ちょっと待て。まずは身分証明書とあとマッシュとの関係について教えてくれるか?」
僕たちは冒険者ギルドの証明書を見せる。
マッシュとの関係……なんて答えるのが正解か。
盗賊を捕まえたのが僕たちなんていうのもおかしいだろうし。
少し考えていると、リリがかわりに答えてくれた。
「ラリッサの街で盗難がありまして、それにこの盗賊のマッシュが関わっている可能性があるということで調査にきました」
「そうか。何か証明書のようなものはあるか?」
「いえ、特にそういったものはないんですが、必要なんでしょうか?」
「なくても問題はない。そのかわり兵士が立ち会うことになるが大丈夫か?」
「もちろんです」
僕たちは収容所の奥の監獄へ案内される。
「嬢ちゃん! 助けてくれよ」
「へへへっ……」
「俺は無実なんだよ」
「早くここから出せって言ってるんだよ!」
牢屋の中からは様々な野次が飛んでくる。
僕はリリが男たちから捕まれたりしないようにそっと腰を抱き寄せる。
リリの身体が少しこわばるのがわかる。
さすがのリリもこれだけの数の犯罪者の中では緊張してしまっているようだ。
「ここだ。俺もここで立ち会わせてもらうからな」
「もちろんです」
兵士を俺たちが会話をしているとマッシュがこちらの顔を確認する。
マッシュの顔は青ざめ、股間が見るみるうちに色が変わっていった。
どうやら、相当トラウマになっているようだ。
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