表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

3/57

幼馴染の牽制リリ

 戻って回復薬の作成を始める。

 瓶はとりあえず、あとで探そう。


 瓶に魔力を込めると頭痛と目の前が回転しだす。

 魔力欠乏症の症状だ。


 あれ? どこだ?

 僕は急いで魔力回復用のキコの実を口の中にいれる。

 キコの実は大量の魔力を帯びた木で、その実は回復に使われ、木は杖や木剣に使われる。

 魔力との親和性が強く、魔法を補助してくれる。


 木剣でも、魔法使いが魔法を込めると、実際に切ることができる。


 ただ、僕のような普通の庶民にはキコの杖や剣を買うことなどはできない。

 非常に高価な品なのだ。


 キコの実も非常に高価だが、魔力欠乏症で倒れたら終わってしまうので、前に買っておいたものだ。実際、僕の給料の半分以上はキコの実でなくなっている。


 前に一度、回復薬を作るのにキコの実が欲しいと伝えたら、下っ端は自分で買う物だと怒られた。まずは雑用以外に仕事をしてからだとも。


 僕の回復薬作成は聖女様から秘密だと言われている。

 だから、救護院の普通の雑用もこなさなきゃいけないし、魔力欠乏で倒れるわけにもいかない。


 なので、他の人でも聖女様に目をかけられていると、やっかむ人もいる。


 前に、なぜ秘密なのかを聞いてみたことがあった。

 そしたら、

「あなたのような無能が作った回復薬だなんて知ったらみんなはどう思う? 私はあなたに仕方がなく手伝わせているの。それが嫌なら辞めなさい」


 僕はそれ以上何も言うことはできなかった。

 僕のような人間が回復薬作りを手伝わせてもらっているだけで、感謝しないといけない。


 なんとか、夜明けまでに2450本を作成することができた。

 だけど、あと50本が足りない。


 そのまま瓶を探しにいこうと椅子から立ち上がった時、急に身体の力が抜け、そのまま意識を失ってしまった。

 早く作らないと……。



◇◇◇


 

「起きなさい! いつまで寝ているのよ!」

 僕は聖女様のイライラした声で起きた。


「あっすみません。いつの間にか寝てしまいました」

 どれだけ気を失っていたのかはわからない。気持ち寝る前よりはスッキリしたが、身体はまだ鉛のように重い。


「寝てるなんていい身分ね! ちゃんと終わったんでしょうね?」

「えっと……」

「はっきりしなさい! 腹に力を入れてハキハキ話す!」

 

 寝起きでまだぼんやりとしている頭を一生懸命働かせようとしたところ、頭の上に僕が作った回復薬をかけられる。


「寝起きで頭が回っていないようだから、起こしてあげたの。私って優しい。それでできたんでしょうね?」


「もっ申し訳ありません。2450本まではできたんですけど、容器が足りなくて、雑貨屋さんとかにも買いに行ったんですが……」


「はぁ? 夜中に住民の方をもしかして起こしたの? あなたどれだけ迷惑かければすむのよ。それに、瓶が足りないとか在庫の管理をしていなかったあなたのミスでしょ。よくそれでお給料もらおうと思えるわね。私だったら、給料もらえないわ。しかも、住民の方に迷惑までかけて2449本しか作れないなんて、本当に無能。あんた才能ないわ」


「あっえっと今聖女様が1本使ってしま……」


「黙りなさい。あなたのために使ってあげたのに、それを文句を言うなんて恥を知りなさい。本当に不愉快だわ。さっさと雑用へ行きなさい」


「はい」


 僕は自分の失敗を責めた。

 ちゃんと在庫管理をしていればこんなことにはならなかったし、夜中にドルドさんを頼ったりしたのも迷惑をかけてしまった。

 本当に僕は迷惑ばかりかけてしまう。


 その日の雑用は、寝不足で魔力切れだったこともあり、ずっと怒られていた。

 もう限界かもしれない。


 翌日はちゃんと寝たことにより、だいぶ回復していた。

 

 仕事が終わってからドルドさんとトロンさんに謝罪しにいくと、気にするなと言われてしまった。いつでも対応するからと。


 2人は僕が作った下級ポーションをお金とは別でお礼に渡しておいた。

「パックの回復薬は、他のどんな回復薬よりも効くからな。助かるよ」


 なんてお世辞を言ってもらったが、僕の回復薬なんてたいしたことはない。

 回復薬は大量に作るよりも1つに魔力を集中させた方が効果が高いのは誰でも知っている。


 量を多く作れる回復術師というのは、それだけで効果が薄いと相場が決まっているのだ。

 

 2人にお礼をいい、僕は寮に戻るために歩いていると、幼馴染のリリに出会った。

「パック! こんなところで会うなんて偶然だな。どうした? 顔色がだいぶ悪いぞ」

「あぁ、ちょっと昨日回復薬を作ってたからね」


「なんだまた無理したのか? パックの回復薬はよく効くからな。どうだこれから飲みに行かないか?」


 幼馴染のリリは僕と同じ田舎からでてきて、同じ救護院で働いている。

 彼女は金色の髪にクリクリした可愛い目をしていて、誰もが振り返る程の美人だが、小さい時に怪我をした彼女に回復薬をあげて以来、僕を何かと気にかけて救護院までついてきてくれた。


 リリは僕の夢を近くで見たいといい、救護院に一緒に就職した。

 僕はよくわかっていなかったが、リリには『牽制』とかっていうスキルがあるらしい。

 きっと、挑発してヘイトを稼ぐ一種なんだと思っている。


 小さい時に説明を受けたが今さら恥ずかしすぎて聞くに聞けない。


 その牽制のおかげで、今では救護院の防衛を任された1000人長という役職についている。

 リリは本当に才能豊かでうらやましい。


 僕はそのまま、有無を言わさず飲み屋へと半ば強引に連れて行かれた。

 今日はもう少しゆっくりしたかったんだけどなー。

リリ「偶然よ。偶然。いい、飛び出すタイミングが大事だからね」

呼吸を整え家のかどでパックが来るのを2時間程待っていた。


面白かったら下の☆とブックマークよろしくお願いします。

★★★★★

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ