ラリッサの街までの護衛
ラリッサの街までは歩いて2日だった。
街道を歩いている途中で仲良くなった商人のライアンが護衛を引き受けてくれれば無料で馬車に乗せてくれるというので僕たちは護衛を引き受けることにした。
なんでも、この道には凄腕の盗賊がでるとのことで、既に護衛を雇ってはいたが、護衛が増えるにこしたことがないとのことだった。
かなり強い盗賊で大規模な討伐作戦も計画されているらしい。
しかも、その盗賊はラリッサの街でも盗みに入って、なんでも街の大切な物まで盗んでいったとかって話で街の警備が今厳重になっているとのことだった。
僕とリリは冒険者ギルドに登録をしていたのと、救護院にいたおかげか立ち振る舞いが盗賊とは全然違うという理由で馬車に乗せてもらえた。
リリの立ち振る舞いは盗賊よりも怖いからね。
僕がそう思いながらチラチラ見ているとリリは顔を赤くしていた。
僕の考えがバレて怒っているのか?
女性は目で感情を読むって聞いたことがあるけど、変なことは考えない方が身のためだと改めて思った。
馬車の旅は特に大きな異常もなく無事に終わった。
途中で魔物がでてきた時にリリが率先して魔物を狩りに行ったら、最初護衛についていた他の冒険者からずっと口説かれていたのに、魔物を倒してから一切口説かれなくなったくらいだ。
きっとリリの戦う姿があまりにカッコ良すぎて口説くのが怖くなってしまったんだと思う。
やっぱりドキドキすると話しかけにくいもんね。
特に、ホブゴブリンとの戦闘を一瞬で終わらせ、その返す刃で岩石キャットという防御に極振りの魔物を一撃で切り伏せたのは見ていた僕も驚きだった。
岩石キャットは硬くて有名な魔物だ。
駆け出し冒険者が倒せる魔物ではない。
リリはそれを切ってしまうのだから本当にすごい。
でも、それ以上に驚いたのが、ドラが岩石キャットを普通にかじって食べてたことだ。
岩石キャットはドラから言わせると、肉は硬いが美味しい方らしい。
ちなみに、ゴブリンには手も出さなかった。
こっちはどんな風にしても食べられなかったそうだ。
無事にラリッサの街までライアンさんを送り届けると、ライアンさんからは、もしまた何かありましたら指名依頼しますと社交辞令を言われてしまった。
冒険者になったばかりのEランクに指名依頼なんて普通ありえないが、そうやって言ってもらえると少しやる気がでてくる。強い冒険者になるにしても、こういう信頼関係を少しずつ積み重ねて行くのが非常に大事だからだ。
僕たちも冒険者としてスタートしたとちょっと嬉しくなる。
ラリッサの街はかなり厳重な警備がされていた。
持ち物の検査などもされ、ライアンさんの荷台の荷物なども調べられたが、僕のマジックボックスの中までは確認されなかった。
街に入って最初に宿屋を確認する。
本当は救護院にも行きたいし、墓地も見てみたいが、ここ数日簡易のテントや外の食事ばかりだったのでゆっくり休む場所と食事を確保したかったからだ。
ずっと救護院で生活をしていた僕がいきなり外の生活に慣れるのには時間がかかる。
リリはさすがに慣れているのかまったく弱音は吐かなかったけど。
この街には冒険者が多いおかげか、安宿から高級な宿まで色々選び放題だった。
「リリはどこがいい?」
「お金には余裕ができたから、寝るところはまたパックと同じ部屋でいいとして、ご飯は少し美味しいところがいいかな」
ということでご飯の美味しい宿を探す。
部屋は別にと言おうと思ったが、お金ができたのに一緒の部屋ってわざわざ言ってくるってことは無駄遣いせずに倹約をしろってことだろう。
そんなことはさすがの僕でもわかっている。
リリは幼馴染だからな。
リリの考えることなんてだいたいわかってしまうのだ。
宿や街へ行く途中で雑貨屋などで必要なものを買いながら店主に宿屋の情報を聞くと、どこの店主もご飯を選ぶなら月宮のウサギ亭が一番料理はおいしいと教えてくれた。
ただ、店主が料理は好きなんだけど部屋は汚いらしくご飯だけ食べに行った方がいいと言われてしまった。
とりあえずどんな感じか覗いてみよう。
僕たちが街の中で買い物をしていると、小さな女の子が大きな買い物袋を引きずって歩いていた。
「リリ、あの子大丈夫かな?」
「パックにはあの子はまだ若すぎるから手をだすなら私にしておきなさい。大変なことになるから」
リリは真面目な顔で俺に言ってくるが、口元がピクピク動いており笑いをこらえるのに必死なようだ。
「ねぇリリ、どういう意味の大丈夫だと思ったのかな? それちょっと冗談でも笑えないやつだよねぇ」
僕はリリの頭に軽く手を置き、左右にグシャグシャと髪の毛をぼさぼさにする。
「ごっごめん。ちょっと調子に乗りすぎた。やめてー髪の毛がー」
リリはあっさり引いてくれる。
「本当だぞ、リリ。お前はそういうところがあるからな」
ドラはどうやら強い方の味方のようだ。
今回は俺に味方をしてくれるらしい。
「パックが大丈夫かって聞いたのは、あの子の鞄に入っているリンゴが腐ってるからっていう意味だぞ」
ドラはドラでずれていたが、さも当たり前のような顔で見られても困る。
どれだけ食い意地がはってるんだ。
「ドラ、ここからじゃそんなのわからないからな」
またしても、えっ違うのみたいな顔をやめて欲しい。
そんなことを言っていると、女の子が引きずっていた鞄から果物がどんどんと落ちていく。
残念なことに女の子はそれに気が付いていなかった。
仕方がない。ちょっと助けてあげるか。
ドラ「腐ったリンゴの臭いわからないのか?」
パック「わかるわけないでしょ」
ドラ「だからパックは女心もわからないんだな」
パック「まさかのドラゴンに解かれる女心って」
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