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盗賊退治

 ノエル村の北側の森の中を進んでいくと、盗賊たちが大人数でノエルの村を襲ったようでしっかりと足跡が残っている。


「それでどうするの? 一気に切る? それともゆっくり切る? あっそれとも斬撃で切る?」


「リリ、全部それ切ってるだけだからね。盗賊は基本生け捕りだからね」


「フフフ。リリはおっちょこちょいだな。パックがそんなことするわけないだろ。焼くか、圧縮するか、踏みつけだろ?」


「うん。ドラ話聞いてた? それ全部殺すのが前提になってるね。ドラの攻撃普通に死んじゃうやつだから」


 2人ともなぜかキョトンとした顔で俺の方を見てくる。

 純粋すぎる目線がある意味怖い。


「そんなことするわけないだろ。ちゃんと捕まえて兵士に引き渡すよ。マイラさんが言ってただろ、街の騎士団でも手に負えないって。つまりボーナスステージってことだよ」


「パックどういうこと?」


「騎士団に手に負えない盗賊とかには高額の賞金がかかっていることが多いんだ。しかも、あの村を襲うだけの人数がいるってことは、かなり大きな盗賊だろうから、頭以外でもいい値段になるはずだよ。しかも、生きて捕まえれば全員犯罪奴隷になること間違いなし。縛って村の前に放置しておけば復興資金になるからね」


「なぁリリ、意外とパックって金のことになるとしっかりしてるんだな」

「ドラも気が付いた? 回復薬とか自分で売るのは苦手なのに、昔から盗賊退治にはやけに燃えるのよね。まぁ楽しいからいいんだけど」


 なぜか呆れた顔でドラとリリに見られたが気にしたら負けだ。

「それでパック今回もあの作戦でいくの?」

「ほぉそれはどんな血沸き、肉躍る作戦なんだ? もちろん僕の活躍する場所もあるんだろうね?」


 ドラが異様にやる気をだしている。


「もちろんだ。今回の作戦はドラが要と言っても過言ではない。作戦は……」

 僕たちは念入りに打合せをして洞窟へとやってきた。


 まだ、昼間だというのに盗賊たちは洞窟の入口で酒を浴びるように飲み、宴会をしている。

 数はかなりのものだが、すでに何人も酔いつぶれているようで幸先がいいようだ。


「それじゃあ僕が先頭切って行くから2人は打合せ通り頼むよ。もしかしたら、連絡係で外にでていることも考えられるから逃がさないようにね」


 盗賊は見えるだけでも50人以上が酒を飲んで騒いでいる。

 これだけ酔っていると非常にやりやすい。


 まずは遠くからスリープの魔法をじっくりかけていく。

 これで眠り魔法の耐性がない人は深い眠りへと誘われていく。


 普通の盗賊だとだいたいこれで8割以上は大人しくなってくれる。

 あとはリリの出番だ。


 リリは剣士でありながら盗賊のスキル『忍び足』を習得している。

 ドラに気がつかれずに背後にまわったのはこのスキルだ。


 スリープは耐性がある人でも、注意力を少し散漫させる効果があるので、あとはリリが全部、峰打ちで沈めていく。


 何度か同じように盗賊を狩ったことはあるが、さすがに50人規模はかなり大きい方だ。


 広場の盗賊は全部夢の世界へ行ってもらい、手、足、口、身体を生糸で縛り上げる。

 生糸は1本でもそれなりの強度があるがまとまることでさらに強くなる。

 そう簡単に切られることはない。


 さすがに50人もいると、一度に大きな街まで運ぶのは大変なので縛り上げた盗賊は全部ドラにノエル村へ運んでもらう。普通だと何往復もしなければいけないが、ドラがいることでかなり楽になりそうだ。


「さて、どんどん行こうか」

 

 広場にいた盗賊たちはきっとなんで捕まったのかもわかっていないだろう。早速ドラには大きなドラゴンの姿に戻って盗賊たちをノエルの村へ運んでもらう。

 できるだけ騒ぎにならないように注意してもらおう。


 次に僕たちは洞窟の中を探索する。

 洞窟の中にはランプの魔道具が設置されている。


 慎重に足音を立てないように進んで行く。

 最初の角のところで様子を見ようと顔を少しだしたところを、いきなり切り付けられる。


「あぶなっ!」


 今回の盗賊はなかなかやるようだ。

 普通仲間が外でやられていたら、驚いて飛び出してくるのが多いが、だいぶ冷静に判断している。


 ずっとこの洞窟の中で息をひそめて様子を伺っていたに違いない。


「チッ! 今ので仕留めるはずだったのによ」

「はいマッシュの負け、あとで罰金頂戴ね」

「あぁわかったよ」


 そこには外にいた連中とはあきらかに空気が違う男女5人が立っていた。

 賭け事でもしていたのだろう。盗賊の女性がマッシュと呼びかけた男に手をだしている。


「あんな雑魚何人捕まえられてもいいんだけどさー。仕事するのにやっぱり頭数って必要なのよ。だからそんなに捕まえられるのは困るのよね」


「安心していいよ。ここにいる人全員捕まえるつもりだから」


「随分余裕だね」


「おい無駄話はいいからさっさとこいつ等やるぞ。さっさと終わらせて、こいつらを八つ裂きにしながら宴会の続きをやらないといけないからな」


 マッシュと呼ばれた男が剣を構える。

 僕も剣をしっかりと握り直す。徐々に緊張感が増す。


「おい、お前らいくぞ……」

 先頭にいたマッシュという男が後ろの仲間に声をかけるが反応がない。


「後ろ確認したほうがいいよ。もちろん攻撃とかしないから」


「はぁ?」

 マッシュを除く4人はすでにリリの攻撃で全員床の上に伸びている。

 リリは優しい笑顔でマッシュに手を振っている。


 マッシュは恐怖に怯えた顔をしていた。

「えっと? なんだって言ってたんだっけ? 言っておくけど、私よりもそこにいるパックはもっと強いからね。下手に歯向かわない方がいいわよ」


 リリ脅かし過ぎだって。

 僕よりリリの方が確実に強い。

 

 マッシュはリリの方に盛大に身体をひねりながら飛びあがるとそのまま、膝から着地し頭を地面にこすりつける。


「姉御、大変失礼しました。申し訳ありません。どうか、兵士につきだすだけで勘弁してください。これからはまっとうに生きていきます。命だけはご勘弁ください」


 変わり身が早すぎる。


「だから、私じゃないって。まぁ残念だけど、あなたちがこの先のノエル村を襲った時点で運が尽きたのよ。あそこはパックの大切な人がいたのに殺そうとしちゃったからね。ただ殺されるような優しいことになればいいけどね?」


 僕は目をこすりながら今の状況を確認する。

 これどっちが悪役だ?


 どう考えても盗賊の方が悪いはずなのにリリの方が悪く見えてしまう。

「リリそのあたりで」

「はいよっ! パック」


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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
[一言] 兄貴!これから心入れ替えて働くので犯罪奴隷はご容赦を!くひっ!溜め込んだ財宝は貰うわ
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