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ノエルの村から追い出されました。

「この村にある空き瓶はこれで全部になります。でもこんなにいっぱい大丈夫なんですか?」

 マイラが持ってきた空き瓶は全部で300本くらいあった。


「村人の数は?」

「全部で200名弱かと思います。盗賊に襲われて亡くなってしまった人もいるので正確な人数はわかりませんが」


「それならこれだけあれば足りるね」

 僕は空き瓶に魔力を込めると瓶の中に回復薬が補充される。

 さすがに2500本近く一晩で作らさせられただけのことはあって300本くらいなら余裕だ。


「えっ……すごくないですか? 300本も一気に回復薬を作ってしまうなんて」

「そんなことないですよ。大量に作れるっていうのは下級も下級のものですので。ただ、少しは村の人の傷も治せると思います。ドラとリリ、悪いんだけど気を付けながら村の中へまわって救護院で回復薬を配るって伝えてきてくれ」


「パックわかったよ」


「よし、行ってこよう。あっ僕もこの回復薬1本もらってもいいか?」

「別にいいけど、飲みたいなら直接飲ませてやるぞ」


「いいんだよ。やっぱりあのバリバリっていう歯ごたえがないとな」


 ドラはそのまま1本持ちながら外へと向かっていった。


「マイラさんは自力で救護院まで来れない人に回復薬を配るの手伝ってもらってもいいですか?」

「わかりました。他にも手伝ってくれる人を探してきます」


 僕は回復薬を持って救護院の入口まで持って行く。

 そこに机を置いて後は配るだけだ。


 さて、これから忙しくなるぞー!


 なんて思っていたが、救護院の前には数人の人しかやってこなかった。

 しかも、見にくるだけで全然僕の方へやってこない。


「回復薬を配ってますよー」

 満面の笑みで愛想を振りまくが誰も近寄ってすらこない。

 そんなに悪人顔じゃないとおもうんだけどな。


 そんな中で虎族の男が1人僕の方へやってきた。

 彼の腕にも包帯が巻かれている。

 おっ初めての人だ。ここは愛想よくいかないとな。


「回復薬配ってますよ。1本いかがですか?」


「お前、誰の許可を得てこんなことをやっているんだ。クリフさんが怪我して動けないのをいいことに、お前みたいな、どこの馬の骨かもわからない奴に好き勝手やらせるわけにはいかんな。俺はあの人に恩があるんだ」


 虎人はいきなり回復薬を置いていた机を蹴飛ばす。

「何をするんだ。これは今から村人たちに配る回復薬だというのに」


「お前ら人族はそうやって俺たちから何もかも奪っていくのだろ。その回復薬だっていったいいくらで売りつけるつもりだ! いっそのことお前を殺して回復薬だけ奪ってやるぞ」


「ちょっと待て! この回復薬は無料で配るつもりだぞ。もちろん、救護院へのお布施なら受け取らないことはないけどな」


「はぁ? 嘘をつくな。救護院はこの亜人の村を潰すために救護院へと納めるお金を増やせと言ってきたんだぞ。それでクリフさんは無理して体調を崩されたんだ。その上、盗賊までこの村を襲ってきやがって。お前ら人族は俺たちを追い詰めるだけ追い詰める気なんだろう」


 救護院が亜人の村を排除するために、無理なことを言ったようだ。

 僕は救護院の中にいたのに全然知らなかった。


 虎人が回復薬を踏みつぶそうとしたところに、先ほどの狐族の子供が飛びだし両手を広げる。

「ピトラさん、どいてください。この人間族は俺たちの村をさらに苦しめようとしているんですよ。これはクリフさんのためなんです」


 どうやらこの虎人と子供は知り合いのようだ。

 ピトラは僕の前で腕を広げたままどこうとしない。


「コテオさん何をなさっているんですか!」

「マイラさん、それはこいつがクリフさんがいない間に救護院を乗っ取ろうとしているから守ろうと思って」


 僕の前にリリとドラが戻ってくる。

「パック、わざわざこんな奴らのために回復薬とか渡してやる必要はないよ。パックはお人よしだからそれでも助けようとするんだろうけど、こいつ等いきなり切りかかってきたんだよ。ドラも私も襲われたんだから」


 リリはもうすでに剣を抜き辺りを警戒している。


「リリもドラも怪我はない?」

「こんな怪我人たちに負けるほど弱くないわ」

「僕だってそれなりに強いよ」


 まぁ2人を倒そうと思ったら騎士団でも連れてこないと難しいだろう。

「わかったよ。僕たちはこの村をでて行こう。マイラさんこの回復薬はみんなで使ってください。お代はいりませんが、クリフの救護院に寄付をしたい場合には受け取ってあげてください」


「そんな!パックさん待ってください。話せばみんなわかってくれますので」


「いや、大丈夫ですよ。本当はクリフの回復を待ってからと思いましたが、無料で回復薬を配ると言っているのにこの扱いですからね。人族への恨みを僕たちに晴らされても困りますし、それに長居することで怪我人のクリフに迷惑をかけるわけにはいきませんので」


「パックさん本当に申し訳けありません」

 マイラは深々と僕たちへ頭を下げてくる。


「クリフは今日の夜か明日には目を覚ますと思うので。それと盗賊はこの近くを根城にしている感じですか? もし近くにいるようであれば近くの街で騎士団へ報告だけしておきますので」


「ありがとうございます。盗賊はこの村から北の森を進んだところの洞窟の中を今はねぐらにしているみたいです。詳しいことはわからないんですが、街の騎士団にも手におえないみたいで」


「それだけわかれば十分です。それではみなさんに幸せが訪れることを祈っています。それじゃ行こうか」

 僕はマイラとピトラに頭を下げる。

 ピトラが無言で足元に抱き着いてきたが、こればかりは仕方がない。


「ピトラダメよ。パックさんに迷惑をかけてしまうから」


「仕方がないな。ピトラちゃん僕の回復薬をあげるからパックの足から手を離してあげて」


 ドラが先ほど持って行った回復薬をピトラに渡している。

 そして優しくピトラの頭をなでると俺の頭の上に飛んできて、そのまま居座ってしまった。


 ドラが地味に重い。


 僕たちはそのまま村をでた。一応門番に声をかける。

「村の人からは手厳しい洗礼を受けたのでこの村を出て行きます。せっかく村に入れてくれたのにすみませんでした」


「いや俺はマイラさんに言われたからだからな、気にするな」


「下級ポーションではありますが、救護院に置いてきましたので後で飲んでください。それでは僕たちはこれで」


 僕たちはノエル村を後にする。

 村が見えなくなったところでリリが僕の前にでてきて振り返る。


「それでパック行くんでしょ?」

「あっもしかして気が付いてた?」

「もちろんだろ。パックがそんな簡単に引き下がるわけないからな」


「無理に付き合わなくてもいいよ」

「はぁ何回目? 私はパックの行くところならどこへでもついて行くわよ」

「僕は優秀な従魔だからね。できる従魔は気も使えるのさ」


 さて、お世話になったクリフに大怪我を負わせた彼らには、それ相当の報いを受けてもらうしかないだろう。

ドラ「大暴れしてやる」

リリ「私も本気でいくわ」

パック「盗賊がちょっと可哀想になってきた」


少しでも面白いと思いましたら下の☆を入力頂ければと思います。

いつも応援ありがとうございます。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
― 新着の感想 ―
[一言] 盗賊どもからついでに金目のものをかっぱらうか❗
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