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ノエル村に到着

 翌日、僕はまだ暗いうちに起きた。

 日は昇っている時間だが、森の中までは日の光が届かず少しジメジメしいる。


 手早く朝食の準備をしておく。

 食事に火を通しているうちに軽く身体を動かしておく。


 もちろん、リリを起こさないようにだ。

 リリを起こして真剣での訓練を毎日なんて身体が持たない。


 それでなくても今日はノエル村に行かなければいけないのだから、体調は万全にしておかなくちゃいけない。

 

 軽い準備運動から、剣術、体術の動きを確認しておく。

 うん。だいぶ調子がいい。


 僕の運動が終わりをむかえた頃、ドラが起きてきた。


「おはようパック。ずいぶん早起きなんだね」

「そうでもないよ。森の中だから暗いけど、森の外ではだいぶ明るくなってるはずだよ」

「そうなのか。いつも太陽が一番上に昇るころ起きてたからね」


 ドラの朝はずいぶんゆっくりだったみたいだ。


「じゃあ僕と運動しようか。やっぱり軽く運動してから食べた方が、ご飯は美味しいからね」

「はぁ?」


 ドラが高速で飛んでくる。

 ちょっと待て! ドラゴンと戦うなんて聞いてない。

 これならリリと模擬戦をやった方が全然ましだ。


 ドラは小型からいきなり大型のドラゴンに戻ると、翼で僕のことを薙ぎ払う。

 図体がでかい割に、動きが俊敏だ。


 翼での攻撃を飛びあがり、避けるとドラは読んでいたかのように風魔法を放ってくる。

 空中では避けられない。

 ドラゴンの風魔法とか死ぬ……!?

 

 一瞬頭の中に死のイメージが広がり身体が硬直する。

 

 ドラはだいぶ加減をしてくれているのか、ちょっと押されただけだったが、硬直した身体ではすぐに反応ができず、体勢を崩し背中から地面に叩きつけられた。

「パック、まだまだだね。もっと精進した方が……ん?」

  

 痛めた背中を回復させながら起き上がり、ドラの方を見るとドラの首筋にリリが剣を突きつけている。


「朝っぱらからいったいパックに何してるの? パックを殺すつもりなら私は命にかえても戦うわよ」


「リリはすごいね。剣を突きつけられるまで気配をまったく感じなかった。とりあえず、その殺気をしまってもらえるかな?」


「リリ、剣をおさめて。ドラと一緒に訓練してただけだから」

 僕のところまで感じる殺気をリリがゆっくりと沈めていく


「もう、2人だけで遊んでいるなんてずるいぞ! 次私を入れてくれなかったら本気で怒っちゃうんだからね」


 リリは満面の笑みで僕たちに言ってきたが、その笑みを見たドラが2、3歩後ろに下がった。

 ドラゴンを退けるリリの笑みはある意味最強なのかもしれない。


「そっそれじゃあ朝食にしようか?」

「おっおう。いやー運動の後のご飯はオイシソウダナー」

 ドラの声がどこが棒読みのようになっていた。


 ドラは暗がりが怖かったり、意外と弱点がある。


「そうね。明日からは3人で訓練しましょうね。もちろん、抜け駆けはやめてね」

 もう、朝練からは逃げられないようだ。

 僕とドラはコクコクと頷くだけだった。

 

 それから僕たちは朝食を食べ、森からの脱出をすることにした。

 幸いにもドラが踏み倒した草などが目印になり森からは無事に抜け出すことができた。


 街道にでてノエルの村を目指す。

 ノエルの村はここから歩きで半日ほどだ。このまま道を真っすぐ進んで行けば迷うことはない。


「これから行くのは亜人の村ということだけど、人間への差別とか大丈夫なのか?」

「大丈夫だよ。救護院の分院があったはずだし、あそこには僕が入った時にお世話になった兄弟子がいるから。すごく優しくていい人なんだよ」


「美味しいご飯はあるのか?」

「ご飯はわからないけど、昨日ドラが狩ってくれたカウもあるからね」


 それからしばらくのんびりとした街道を歩いて村を目指し歩いていると、目の前に母親と10歳くらいの子連れの親子が見える。この方角だとどうやらノエルの村へ向かっているようだ。


 ただ、まだ若いのに母親らしい女性の歩き方がおかしい。

 杖をつきながら右の腰をかばっているような歩き方だ。

 僕は駆け寄って声をかける。


「お姉さん、大丈夫ですか?」

「こんにちは。ご心配ありがとうございます。ちょっと腰が時々痛んでしまって。休めば大丈夫ですから」


「そうですか。どこかぶつけたりした覚えはありますか?」

「はい、ちょっと前にイノブリコっていう猪の魔物に追いかけられてしまって。その時にひねってしまったんです」


「なるほど、それならこれ飲むといいですよ。下級回復薬ではありますが腰痛も少しは楽になりますので」

「ご親切にありがとうございます。でもそんな高価なものタダで頂くわけにはいきませんので、お気持ちだけで」


「あっ、そしたらノエルの村って知っていますか?」

「えぇもちろんです。私たちが住んでいる村ですから」


「ならちょうど良かったです。自分たちはノエル村へ行こうと思っていたんですが道に迷ってまして、ノエルの村まで案内して頂ければタダでお渡ししますよ。あっでも案内するのに腰痛では歩くの大変ですね。では報酬は先払いということでいかがでしょうか?」


「えっ……村はこのまま真っすぐに行けば大丈夫ですよ」

「あっそうなんですね。では道を教えてもらったお礼ということで受け取ってください」


 僕は半ば強制的に回復薬を渡してしまう。

「それじゃあ僕たちは先を急ぎますので」

「えっあっありがとうございます」


 僕たちは2人を追い越して先を急ぐ。


 しばらくしてドラが声をかけてくる。

「パックって演技下手クソなのな」

「本当に。声とか裏声になってたし」

「うるさい。上手くやる方法なかったから仕方がないの」


 少し顔が赤くなり火照ってしまう。

「フハハハ! 村は真っすぐですよって言いながら、あの人かなり戸惑ってたよ」

「本当に、もう少しすんなりあげればいいのに」

「ほぉ、そこまで言うなら次に何かあったら今度は2人にやってもらうからね」 


「僕にできないことなんてないよ」

「私だって、パックよりは上手くやるわよ」


「その言葉忘れるなよ」


 そして僕たちはノエルの村に到達した。

 でも、さっそく問題が発生してしまった。


「悪いが、今村人以外を村に入れるわけにはいかないんだ。帰ってくれ」

「えっ何かあったんですか?」


「悪いな。理由は言えないが、とにかくダメなんだ」

 まさかの村の門番から拒否をされてしまった。


「仕方がない。僕が交渉してやろう」

「ここは私に任せて! 交渉は得意なの」


 リリとドラが交渉をやると言い出した。

 なんだろう。不安しかない。

ドラ「リリよりは僕の方が交渉得意だね」

リリ「ドラよりは交渉得意よ」

パック(本当に大丈夫だろうか)


この2人に交渉させるの心配という方は下の☆をいれて頂けますと励みになります。

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同作者の書籍化作品です。ネット版とはまた違った展開になっています。 本を読んで楽しく自粛を乗り越えましょう。 テイマー養成学校 最弱だった俺の従魔が最強の相棒だった件
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