森の中でサバイバル生活?
「リリこれからどうしようか? ドラゴン連れて戻るわけにはいかないよね?」
「そうだね。実際に怪我させてしまったわけだし、しかも元はドラゴンの血を求めて捕まえてきたわけだから、戻ったらパックに命じてずっとドラゴンから血を抜く作業をさせられそうだよね」
「僕血抜かれるのとか嫌だよ。痛いのイヤ! 暗いのもイヤ」
ドラゴンは駄々っ子のように足をバタバタさせている。
「大丈夫。戻ったりしないから。そうすると……新しい街に行くしかないね」
「宿に荷物置いてきたのは諦めるしかないね」
宿には元々たいした荷物は置いていないので諦めるしかない。
「ねぇそれよりも、僕に名前つけてくれない?」
「名前?」
「そうだよ。君は僕と契約を結んだからね」
「じゃあ、タマ?」
タマは昔買ってた犬の名前だ。
3日くらいで魔物に食べられ亡くなってしまったけど、可愛い奴だった。
もちろん、3日でドラゴンから解放されるようにとか願ってはいない。
「えっ? よく聞こえなかったんだけど?」
どうやらタマは気に入らなかったらしい。
どうしようか?黒いドラゴン。ブラックドラゴン。
ゴンドラ……ポンコツドラゴン……ポンドラ……いや、変な感じになるな。
ドラ……うん、シンプルなのが一番だな。
「よし! ドラならどうだ?」
「いいね! ドラ気に入った! 僕の名前はドラだ」
「それでこれからどこへ行こうか? まずはここ深闇の森からでなきゃだね」
「そうだね。この森は入るのは簡単でも、でるのが大変だからね」
深闇の森は人が迷子になって帰らずの森なんて呼ばれている。
しかも、魔物もそれなりに強くでるのが大変だ。
「ここの近くだと……亜人の村ノエルがあるわね」
「亜人の村か。そこならドラを連れて行っても大丈夫かな?」
「パック安心して。ドラゴンを連れて行って大丈夫な村も、街もないから。もし驚かれないとしたら魔王の領土くらいかもね」
確かにそうだ。普通にドラゴンを連れて行って大丈夫な街や村なんてありはしない。
「えぇー僕街に入れないの?」
「うーん。その大きさだとかなり難しいかもしれないね」
「わかった。じゃあ小さくなるね」
「えっ?」
「はぁ?」
ドラゴンの足元に魔法陣が浮かびあがると、ドラゴンが手のひらサイズまで小さくなる。
「これでいいだろ?」」
「すごいな。こんなに小さくなれるなんて。これなら街の中にも入れるな。じゃあ後はこの森をでるだけだな」
「ぐぎゅるるるー」
ドラのお腹から盛大な音が聞こえてくる。
「パック腹減ったからまずはご飯にしないか?」
「悪い、食料とかは全部宿に置いてきてしまったんだよ。だから今は回復薬しかない。魔物でも狩ってこれればいいんだけど」
「よし、ならちょっと待ってろ。近くに手頃な魔物がいるから僕が狩ってきてあげる」
「そうか。ならお願いしようかな」
僕とリリは一緒に寝る準備と食事の準備をする。
テントなども全部置いてきてしまったので新調するしかない。
ドラが魔物を狩りに行っている間に、僕は魔法『生糸』で簡易のテントを作成する。
生糸の魔法は怪我した人の傷を抜いあわせる時に使う魔法だ。
主に回復を使えない術師が覚える。
傷はすぐには回復できないが、縫い合わせると出血が遅くなり人が助かる可能性があげることができる。
生糸は魔力消費が少なく使い勝手がいいので、回復魔法を覚えても色々使っている。
僕はこの生糸で何かできないかと思って、時間がある時にずっと生糸で遊んでいた。
それから、次第に1本の細い糸でだすのではなく、イメージをした形で作ることができるようになった。
生糸で作った生地は汚れが付きにくく、風なども通さない。
「いつみてもパックの魔法はすごいな」
「そんなことないよ。これくらい魔法使える人なら誰でもできるよ。でもリリが褒めてくれると僕頑張れるよ」
リリと目があう。
「パック私もね……パックといると……」
「戻ったぞ! ちょうどいいデーモンカウがいたから捕まえてきたぞ」
ドラは片手で軽々とデーモンカウを持っている。
デーモンカウは非常に美味しい牛だという話だったたが捕まえたこともなければ、もちろん食べたこともない。
「よくこんなの捕まえられたな」
「僕にかかれば朝飯前だよ」
「くっ…いい雰囲気だったのに邪魔をして……」
リリが小声で何かを言っていたがよく聞き取れなかった。
「リリ大丈夫?」
「大丈夫よ。早速解体しちゃいましょ。ドラちょっと持っててくれるかしら」
ドラがデーモンカウを片手で持っているところをリリが切りながら解体していく。
「ほう。なかなかの剣の使い手だったんだね」
「ドラに褒められるのはパックに褒められるくらいうれしいわ」
2人が仲良くしているのは僕も嬉しい。
僕は解体をしている2人を横目に肉を焼く準備をしていく。
うーん。このままだと調味料がない。
ちょっと探してくるか。
「2人とも、僕森の中に山菜と薬味を取りに行ってくるから2人で解体しといて」
「パック1人で大丈夫? 私ももうすぐ終わるから一緒に行くよ?
「それなら、食器を作っておいてくれると助かるよ。全部宿に置いてきちゃったから」
「わかったわ」
手分けして作業をするとあっという間に準備ができた。
器はリリが木から一から作ってくれた。
器の裏にはリリと作者の銘まで入っている。
森の中では意外といい調味料がとれた。
なかでも、街の近くではほとんど見られないトンボにんにくを見つけられたのは良かった。
トンボにんにくは高級食材で肉の臭みを消してくれる上に、その香りには食欲を増進させる効果があり疲れをとる作用もある。
僕たちは、森の中で1泊したあと村を目指すことにした。
目指すは亜人の村だ!
ドラ「暗闇怖い。一人でくるんじゃなかった」
デーモンカウ「ウッシシシシシ!」
ドラ「笑ってんなよ」
こうしてデーモンカウは狩られてしまった。
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